見出し画像

【書籍】40代から始めるニッチで稼ぐコンサルタントー林田佳代氏著

 林田佳代著『ニッチで稼ぐコンサルの教科書 40代から始める一生モノの仕事』(青春出版社、2024年)を拝読しました。

 本書は、特に40代以上のビジネスパーソンを対象に、自分の経験や強みを活かしてコンサルタントとして成功するための具体的な方法を示した一冊です。著者の林田佳代氏は、長年の企業経験を持つビジネスパーソンが、個人として独立し、ニッチな分野でコンサルタントとして活動することが、今後のキャリアにおいて非常に有望であるとしています。

 本書は、年齢や学歴にとらわれず、自分の強みを活かして、効率的に稼ぐ方法やコンサルタントとしてのキャリアの築き方について、実践的なアドバイスを豊富に含んでいます。

 私も人事起業支援を実施する1人として、また、企業人事の立場としても大変考えさせられる内容でした。内容を考察してみます。

40代以降の働き方としてのコンサルタント職

 著者の林田佳代氏は、まずコンサルタントという仕事が、年齢を重ねたビジネスパーソンにとって非常に魅力的なキャリアであることを強調しています。特に40代やそれ以上の世代にとって、企業での経験や知識を最大限に活かし、独立してニッチな分野でコンサルタントとして活動することが、キャリアの新たなステージとして有力であると述べています。
 従来、コンサルタントという職業は、大手のコンサルティングファームに勤務する一部の人々に限定されたものとされてきましたが、近年では、個人事業主や副業としてコンサルタント活動を行う人々が増加しており、より広範な層にチャンスが開かれているのです。

 コンサルタントの仕事は、単に稼ぐ手段としてだけでなく、仕事とプライベートの両立が可能な働き方としても注目されています。特に、ニッチな分野で稼ぐことに焦点を当てたコンサルティングは、労働時間を無理に増やすことなく、自分の強みを活かし、効率的にクライアントに価値を提供することができるため、非常に有望なキャリアとなり得ます。
 ここでいう「ニッチな分野」とは、特定の小さな市場や活動領域を指し、個人の強みを活かした市場開拓が可能な分野です。たとえば、ある特定の業界に精通している人であれば、その業界に特化したコンサルティングサービスを提供することができます。このように、ニッチ市場をターゲットにすることで、競争を避け、安定した収益を得ることが可能です。

自分の強みを見つけることがコンサルタント成功の鍵

 コンサルタントとして成功するためには、まず自分自身の強みを正確に把握し、それをクライアントにどのように提供できるかを明確にすることが非常に重要です。多くの人は、自分自身の強みに気づいていないことが多く、著者もその点を指摘しています。
 特に、自分が当たり前だと思っているスキルや経験が、他の人にとっては非常に価値のあるものであることを理解することが成功の第一歩です。この本では、具体的な事例を通して、どのようにして自分の強みを見つけ出し、それを体系化して提供するかについて詳しく説明されています。
 
 例えば、著者はあるコンサルタント志望者の事例を紹介しています。この人物は、非常に優れた営業力を持っていたにもかかわらず、自身ではそのスキルの価値に気づかず、全く別の分野でコンサルタントになろうとしていました。
 しかし、著者のアドバイスを受け、その営業力を活かしたコンサルティングサービスを提供し始めたところ、瞬く間に多くのクライアントから依頼を受けるようになりました。この事例は、自分の強みを見つけ、それをどのようにクライアントに提供するかがコンサルタントとして成功する鍵であることを強く示しています。

 また、自分の強みを発見するためには、自己分析を行い、これまでのキャリアを振り返ることが重要です。本書では、具体的な自己棚卸しの方法も紹介されており、自分の得意分野をどのように体系化し、クライアントに提供するかをステップバイステップで解説しています。コンサルタントとして成功するためには、単に自分のスキルを見つけるだけでなく、それをクライアントのニーズに合わせて提供する能力が求められます。

コンサルタントデビューの準備とステップ
 コンサルタントとして活動を始めるためには、いくつかの重要なステップを踏む必要があります。まず、最初に取り組むべきことは、自分のプロフィールや名刺、チラシといった「ツール」を整えることです。これらのツールは、コンサルタントとして自分をクライアントに紹介するための重要な手段であり、特に自分がどのようなサービスを提供できるのか、何をアピールポイントとするのかを明確にすることが重要です。
 
 また、コンサルタントとしてのデビューに向けてもう一つ重要なのが「自己棚卸し」です。これまでの職業経験やスキルを整理し、それをどのようにクライアントに役立てることができるかを考えることが必要です。自己棚卸しを通じて、自分の得意分野や強みを明確にし、それをコンサルティングサービスとして提供できる形にまとめることが、コンサルタントとしての第一歩となります。

 このプロセスでは、失敗を恐れずに挑戦することも重要です。著者は、最初から完璧を求めるのではなく、まずは小さな一歩を踏み出し、実際の経験を通じてサービスを改善していく姿勢が必要であると述べています。また、クライアントからのフィードバックを大切にし、自分のサービスを常に見直すことで、より価値のあるコンサルティングを提供できるようになると強調しています。

年齢や学歴を問わず成功できるコンサルタント

 著者は、コンサルタントという職業が、年齢や学歴に関係なく成功できる職業であるとしています。特に、自分の得意分野を活かして活動できるため、年齢に縛られることなく、どんな年齢でもコンサルタントとして活躍できる可能性があることを示しています。実際に、70代や80代でも現役で活躍しているコンサルタントがいることが紹介されており、年齢を重ねてもスキルを活かして働き続けることができる魅力的な職業であると述べられています。

 また、コンサルタントとして成功するためには、「ナンバーワンニッチ」という考え方が重要であると著者は述べています。「ナンバーワンニッチ」とは、特定の小さな市場や分野で一番になることを意味し、例えば「経営コンサルタント」といった広い分野ではなく、「男性エステサロン向けの経営コンサルタント」といった具合に、ターゲットを絞り込むことで競争を避け、独自の強みを発揮できるとしています。
 具体的な事例として、あるコンサルタントがコミュニケーションスキルの向上を専門にしていましたが、ネイルサロンに特化したサービスを提供することで、その業界で高い評価を得るようになり、現在では広くビューティー業界全体から依頼を受けるようになった事例が紹介されています。このように、自分の強みを明確にし、それを特定のニッチな市場で活かすことで、コンサルタントとしての成功に繋がるのです。

コンサルタントとしてのキャリアを一生続けるために

 コンサルタントという仕事は、年齢を重ねても続けられる魅力的な職業であり、特に自分のスキルを活かしてクライアントに価値を提供することで、やりがいを感じながら長く働き続けることができます。著者は、コンサルタントとして成功するためには、常に学び続ける姿勢が重要であると強調しています。特に、新しい技術やツールを積極的に学び、それを業務に活かすことで、長期的に成功することが可能です。

 また、コンサルタントとしてのキャリアを築く上で、法人化するかどうかを検討する時期も来るかもしれません。本書では、法人化のメリットや、どのような法人形態が自分に適しているかを検討するための具体的なアドバイスも含まれています。法人化することで、信頼性の向上やビジネスの拡大が期待できる一方で、コストや責任も増えるため、適切な判断が求められます。

まとめ

 コンサルタントとしてのキャリアをスタートさせ、一生モノの仕事として続けていくための実践的なノウハウを提供しており、特に40代以上のビジネスパーソンにとって、これまでの経験を活かして独立するための強力なガイドとなっています。また、豊富な事例を通じて、コンサルタントとしての成功への道筋が具体的に描かれており、実際にコンサルタントを目指す人々にとって非常に参考になる内容となっています。

企業人事の視点から考えること

 今度は、本書を企業人事の視点でどう活かすか、ということを検討してみます。

1. キャリアの棚卸しと強みの発見

 人事の視点では、従業員一人ひとりのキャリアをどのように支援するかが重要です。著書では、コンサルタントとして成功するためには、自分の強みを把握し、それを活かしてクライアントに提供することが必要だと強調しています。これを人事に置き換えると、社員が自分自身のスキルや経験を体系的に振り返り、何を強みとして活用できるかを明確にする「キャリアの棚卸し」が重要な施策となります。

2. ニッチなスキルの発見と育成

 この本では、コンサルタントとして成功するためには「ナンバーワンニッチ」という概念、つまり特定の分野で一番になることが鍵であると説明されています。これを人事の視点で考えると、社員が持つニッチなスキルを見出し、それを育成することが重要です。

 組織全体で必要とされる共通のスキルはもちろんですが、個々の社員が持つ専門的な知識や経験を見つけ出し、それを育成していくことが、会社の強みを最大化する戦略になるでしょう。たとえば、特定の業界に関する深い知識や、他の社員が持っていない特定の技術があれば、それを強化し、専門性を高める研修やプロジェクトを提供することで、個々の社員が「ナンバーワンニッチ」を築ける環境を作ることができます。

3. 柔軟なキャリア形成と多様な働き方の支援

 コンサルタントは、時間や場所に縛られず、自分のペースで働けることが大きな魅力の一つです。これを企業内の人材管理に置き換えると、柔軟な働き方やキャリアの選択肢を広げることが社員のモチベーション向上につながります。特に、社内で副業やフリーランス的な働き方を容認することは、社員が自身のスキルをさらに磨く機会を提供し、企業に対する貢献度を高める可能性があります。

 また、年齢や学歴に関係なくキャリアを続けられる点も、人事が考慮すべき点です。長期的な視点で、キャリアを積み上げたい社員に対して、年齢に関係なく成長できる仕組みや学び直しの機会を提供することが重要です。

4. 個々のキャリアと組織の戦略的調和

 人事としては、社員の個々のキャリアと組織の目標が一致するような施策を推進する必要があります。この本で強調されているように、コンサルタントは自分のスキルや経験を最大限に活用してクライアントに貢献します。これを人事の視点で捉えると、社員が自らのスキルや経験を組織内でどのように活かし、組織の成長に貢献できるかを明確にすることが重要です。

 人事部門は、社員のキャリア開発と組織のビジョンや戦略との連携を図り、相乗効果を生み出すようにサポートします。これにより、社員が自分のキャリアに対して主体的になり、同時に企業の目標達成に貢献することができる環境を整えることができます。

5. リスキリングとラーニングカルチャーの促進

 本書では、コンサルタントが常に学び続ける姿勢が重要であると強調されています。人事においても、組織全体でリスキリング(学び直し)を推進し、社員が新しいスキルを習得できる環境を提供することが求められます。特に、技術革新が急速に進む現代において、企業が生き残り、成長し続けるためには、社員が最新の知識や技術を習得し、業務に活かせることが重要です。

 eラーニングやオンライントレーニングなどを積極的に導入し、社員が自分のペースで学習できる環境を整えることも一つの方法です。また、学びを促進するだけでなく、その学びを実践の場で活用できるプロジェクトや業務のアサインも併せて行うことで、社員の成長を支援することができるでしょう。

人事の視点:まとめ

 本書で紹介されている「ニッチで稼ぐコンサルタント」という考え方は、組織内での人材育成やキャリア支援に多くの示唆を与えてくれます。個々の強みを活かし、年齢や学歴にとらわれない柔軟なキャリア形成を支援することが、組織の成長にもつながります。また、リスキリングや学び直しの機会を提供し、社員が自己成長を実感できるような環境を整えることが、長期的な人材活用にとって不可欠な要素となるでしょう。

40代のコンサルタントが自信を持ってデスクで仕事をしている様子が描かれています。背景にはビジネス書が並ぶ本棚や、チャートが表示されたパソコンがあり、プロフェッショナルな環境を示しています。窓の外には街並みが広がり、独立や新たなチャンスを象徴しています。全体的に温かい色調と柔らかい照明が用いられ、落ち着きながらもやる気を引き出すような雰囲気が伝わってきます。


いいなと思ったら応援しよう!