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退職時の最終給与の支払いーRBAの観点から考える
RBA(Responsible Business Alliance)の基準に基づく退職時の金品返還義務を考察してみます。
労働基準法上の規定
労働基準法第23条(金品の返還)では、使用者は労働者の死亡または退職時において、権利者の請求があった場合には7日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金などの労働者の権利に属する金品を返還しなければならないことが明記されています。
さらに、前項に基づく賃金や金品に関して争いがある場合には、使用者は異議のない部分について、同じ7日以内に支払いまたは返還することが求められます。このような規定があることで、労働者が安心して職場を離れることができ、労働条件の整備が図られる仕組みが確立されています。
労働基準法第23条(金品の返還)
使用者は、労働者の死亡又は退職の場合において、権利者の請求があつた場合においては、七日以内に賃金を支払い、積立金、保証金、貯蓄金その他名称の如何を問わず、労働者の権利に属する金品を返還しなければならない。②前項の賃金又は金品に関して争がある場合においては、使用者は、異議のない部分を、同項の期間中に支払い、又は返還しなければならない。
RBAの基準はどうなっているのか?
一方、RBA(Responsible Business Alliance)における規定では、離職者に対する賃金支払いに関して、最終勤務日から1か月以内に全額支払う必要があるとされています。これは、労働者の求めに関係なく、使用者側が適切な対応を取るべきことを示しています。これがしっかりできていないとすると、RBA上は指摘事項になる可能性があるでしょう。
A4 賃金および福利厚生
規範8.0:
労働者に支払われる報酬は、最低賃金、時間外労働、および法令で義務付けられている福利厚生に関連する法律を含め、適用される賃金に関するすべての法律を遵守していなければならない。すべての労働者は、同一労働・同一資格に対して同一賃金を受け取るものとする。労働者は時間外労働に関して、通常の時給より高い賃率で支払いを受けるものとする。懲戒処分としての賃金からの控除は認められない。各給与計算期間について、実施した労働に対する正確な報酬を確認するのに十分な情報が記載された適時かつ理解しやすい賃金明細書を労働者に提供するものとする。臨時、派遣および外部委託の労働者の使用はすべて現地法の制限内とする。
RBA 規範の遵守を証明する要素:
1. 方針:以下の要素を含む、詳細で包括的な文書化された賃金および福利厚生に関する方針を有すること:
a. 企業が要求する活動(例:仕事、トレーニング)には「労働時間に相当する給与」が適用される。
b. 「同一労働・同一資格に対する同一賃金」が差別を禁止するために適用される。
c. すべての時間について、合意された賃金または法定賃金のいずれか高い方以上の賃金をすべての労働者に支払うものとする。
d. 時間外労働やその他の報酬、福利厚生は、通常の労働時間に対する合意された賃金に上乗せされ、現地法または標準賃金の125%のいずれか厳しい方の率で支払われる。
e. 懲戒処分および会社の資産、工具、個人用保護具、その他の物品のための費用を含め、不正な控除を禁止する。
f. 賃金支払スケジュールは定期的で、文書化されている。
g. 離職者(退職した労働者)に対し、法律に従い、最終勤務日から1か月以内に全額を支払う。
(英語版)
g. Full payment made to leavers (resigned workers) in compliance with the law and not later than one month after the final day on the job.
具体的事例
例えば、15日締め、25日払いの企業とします。
ここで、ある従業員が、7月17日に退職したとします。この際、7月16日と17日分の賃金は、翌月である8月25日に支払われることが多いでしょう。退職した従業員の求めがあれば、労基法の規定に従い、7月24日までに支払わなければならないわけですが、実際に求めがあるということは少ないように思います。なお労基法は、労働者の保護を図る趣旨ですので、7日以内に払わなくとも良い、という趣旨ではないことは付け加えます。本来は、早く払った方が良いともいえます。
一方、RBAではどうなっているのか。「離職者(退職した労働者)に対し、法律に従い、最終勤務日から1か月以内に全額を支払う。」となっています。すなわち、従業員の求めの有無とは関係なく、8月17日まで(1ヶ月以内)に払わなければならないということになります。
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