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創造性阻害の罠ー報酬と評価のアンダーマイニング効果

 創造性と内発的動機づけの関係は、実際に深く多面的です。企業や組織における人事制度は、従業員の創造性を促進または阻害する重要な役割を果たします。評価や報酬が創造性に与える影響に関する考察は、人事担当者にとって重要なテーマの一つです。

評価や報酬のアンダーマイニング効果

 評価や報酬が内発的動機づけを低下させ、創造性を阻害する主な理由は、外発的動機づけが優位になること、リスク回避の傾向が強まること、そして自己評価の低下にあります。これらの要素は、創造的なプロセスを促進するために必要な自由度、自信、そして失敗を恐れない心理的安全感を損ないます。外発的報酬に焦点を当てることで、個人が内部から湧き上がる好奇心や情熱を見失い、創造的なリスクを取る意欲が減少します。

 従業員が報酬やインセンティブに執着するあまり、本来の目的や内なる喜びを見失ってしまう危険性があります。また、過度な評価やプレッシャーは、従業員の自信を損ね、新しいアイデアや試行を避けさせてしまいます。

創造性を高める人事制度の設計

 創造性を促進するためには、人事制度が内発的動機づけを支援し、個人の自主性と成長を促進する環境を提供することが不可欠です。この点で、以下の要素が特に重要となります。

  • 自律性の促進
     従業員が自分の仕事の進め方や方法を選択できる自由を与え、その選択を尊重する文化を育むことが重要です。自律性は内発的動機づけを高め、創造的な思考を促進します。上司や組織から一方的に指示を受けるのではなく、従業員自身が主体的に意思決定に関わり、自分の強みを最大限に発揮できる機会を与えることが重要です。

  • 適切な挑戦の提供
     従業員に対して適度に挑戦的で、かつ達成可能な目標を設定することで、成長の機会を提供し、内発的な動機づけを刺激します。目標が高すぎると圧迫感や挫折感を与え、低すぎると退屈や無関心を招きがちです。適切な挑戦は、従業員の能力を伸ばし、やる気を高める上で欠かせません。

  • 建設的なフィードバック
     評価よりも学習と成長に焦点を当てたフィードバックを提供し、個々の努力と進歩を認識することが、自己効力感と創造性を促進します。批判的なフィードバックではなく、建設的で前向きなフィードバックを通じて、従業員が自分の強みと弱みを理解し、改善の機会を見出せるようサポートすることが重要です。

  • 公平性と透明性
     すべての従業員が公平かつ平等に扱われること、そして評価や報酬の基準が透明であることが、信頼と安心感を生み出し、創造的なリスクを取る勇気を与えます。不当な評価や不透明な基準は、従業員の動機づけを低下させ、創造性を阻害する要因となります。

  • 承認と感謝
     従業員の貢献と達成を認め、適切な形で感謝を示すことで、内発的動機づけを強化し、創造性を促進します。単なる金銭的報酬ではなく、言葉による承認や適切な報酬体系を通じて、従業員の努力を正当に評価することが重要です。

創造性を高めるための具体的なアプローチ

 人事制度の枠組みの中で、創造性を高めるためには、個人の探究心を刺激し、新しい経験や失敗から学ぶ機会を提供することが重要です。これには、多様性と包括性を重視したチーム作り、リラックスできる職場環境の提供、そして失敗を許容し、それを学習の機会として捉える文化の醸成などが考えられます。

 多様なバックグラウンドを持つメンバーからなるチームを編成することで、さまざまな視点やアイデアが生まれ、創造性が高まります。また、オフィスのレイアウトや雰囲気作りなどを通じて、従業員がリラックスして創造的に考えられる環境を提供することも重要です。さらに、失敗を罰するのではなく、それを学びの機会と捉え、従業員が新しいことに挑戦し続けられるよう後押しすることが不可欠です。

 創造性は、単に個人の才能やスキルに依存するものではなく、組織全体の文化、価値観、そして人事制度によって大きく形成されます。したがって、創造性を高めるためには、従業員一人ひとりの内発的動機づけを促進し、彼らが自分の可能性を最大限に発揮できるような環境を構築することが、人事担当者にとっての重要な使命となります。

 評価や報酬制度を適切に設計し、従業員の自律性を尊重し、適切な挑戦と成長の機会を提供し、建設的なフィードバックと承認を行い、公平性と透明性を確保することで、従業員の創造性が大きく促進されるでしょう。また、多様性の尊重、リラックスできる職場環境の醸成、そして失敗を許容する文化の構築も、創造性向上のための重要な取り組みとなります。人事としても、こうした取り組みを通じて、従業員一人ひとりが最大限の創造性を発揮できる環境を整備し、組織全体の創造性と革新性を高めていく重要な役割を担っていきたいものです。


創造性と内発的動機づけが生き生きと花開く企業環境を描いています。オープンなオフィス空間が、多様な人々のコラボレーションと、個々の自律性を尊重する文化の大切さを表現しています。柔らかな画風が、支援と奨励の雰囲気を温かく伝え、創造性を育むポジティブで育成的な職場環境を見事に捉えています。


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