【書籍】柏木哲夫氏の人生観ー使命に生き、懸命に働き、宿命を受け入れる
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp131「4月10日:使命、懸命、宿命(柏木哲夫 金城学院大学学長)」を取り上げたいと思います。
柏木氏は、自身の人生を導く三つの言葉「使命」「懸命」「宿命」について語っています。
使命に関しては、作家三浦綾子氏の言葉から影響を受け、自分の命を使うこと、つまり自分に課せられた使命を全うすることの重要性を説きます。三浦氏は小説を書くことを自分の使命と捉え、病に苦しみながらもそれを続けることで命を使っていると実感していたと紹介します。
次に、懸命については、瀬戸内海の小島で医療に従事する老医者の姿勢から学んだことを述べます。この医者は、医療が乏しい島の人々のために一生を捧げ、自分の仕事に命を懸けてきました。柏木氏は懸命とは、命を懸けることであると解釈します
最後に、宿命に関しては、通常ネガティブな印象を持たれがちですが、柏木氏は命が宿ることとしてポジティブに捉えます。医者が自分の運命を受け入れ、島で骨を埋めるつもりでいることから、
柏木氏は人生で命を使い、命を懸け、最終的には命が宿るような生き方をすれば素晴らしいと考えます。これらの言葉は、自己犠牲と使命感に基づいた生き方の価値を示しています。
<人事として考えること>
柏木氏が述べる「使命、懸命、宿命」という三つの言葉は、深い洞察に基づく人生観を表しています。これらの言葉は、人事の立場から見ても、組織や個人の成長と発展において重要な意味を持ちます。あくまで一つの捉え方ではありますが、考察してみたいと思います。
使命(Mission)
「使命」とは、組織が社会において果たすべき役割と、そこで働く一人ひとりが持つ役割の認識と捉えられるでしょう。企業のミッションステートメントは、組織が目指すべき大きな目的を明示し、従業員にとっての行動の指針となります。
個人においては、三浦氏が述べたように、自らの職務やキャリアにおいて「命を使う」という覚悟を持って取り組むことが使命感の表れです。自分の仕事を通じて社会に貢献し、組織の目標達成に貢献することが、プロフェッショナルとしての使命でもあります。
懸命(Dedication)
懸命に働くとは、与えられた仕事や責任に対して全力を尽くすと捉えられます。例えば、人事においては、従業員が自らの役割において最大限の努力を尽くせるよう、適切な環境を提供することが求められます。これには、適切なトレーニングの提供、モチベーションの向上、そして健康で働きがいのある職場環境の維持が含まれるでしょう。懸命に働く文化を育むことは、組織全体のパフォーマンス向上に直結します。
宿命(Destiny)
宿命とは、個人や組織が向かうべき未来やその運命を受け入れ、それに向かって進むと捉えられます。人事の立場からは、組織や従業員が直面する挑戦や困難を乗り越え、成長し続ける運命を受け入れ、それを支援する役割があります。キャリアの中で、従業員が自身の「宿命」と感じる役割や目標に取り組むことを支援し、それが組織の長期的な成功につながるようにすることが重要です。
人事の立場においても、これら三つの言葉は、組織とその構成員が共に成長し、発展するための基盤を形成します。使命感を持って仕事に取り組み、懸命に努力し、最終的には自らの宿命を受け入れ、それを超えることが、個人と組織双方の成功への鍵です。
人事管理の実践においては、従業員一人ひとりが自分の使命を見つけ、その使命に懸命に取り組み、最終的には自分たちの宿命を理解し受け入れることを支援することが重要です。これにより、組織は持続可能な成長を遂げ、従業員は充実したキャリアを築くことができるものと思います。
「使命」「懸命」「宿命」という三つの言葉が導く人生の深遠な旅を、夕暮れの空の下に広がる穏やかで広大な風景を通じて表現しています。道が畑を抜け、遠くの山に向かって曲がりくねっており、その道沿いにはそれぞれの言葉を象徴する三つの目印があります。「使命」を象徴する光の灯台、「懸命」を表す橋、「宿命」を象徴する山の麓に輝く門が、それぞれの旅の段階を表しています。この風景は、人生の旅への深い内省と、その旅に対するコミットメントを体現しており、温かみとインスピレーションを呼び起こす柔らかく優しい画風で描かれています。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。