【書籍】仕事は祈りである:河井寛次郎と鷺珠江の教え
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp300「9月19日:祈らない祈り 仕事は祈り(鷺珠江(サギタマエ) 河井寛次郎記念館学芸員)」を取り上げたいと思います。
河井寛次郎の孫の鷺氏は、河井寛次郎の深遠な人生観と芸術に対する姿勢を紹介しており、その中で寛次郎の生き方や思想に深い感銘を受けていることが語られています。寛次郎は、執着を持たない生活を送り、自身の作品を通じて生命の喜びを表現していたとされます。特に、彼の言葉「祈らない祈り 仕事は祈り」は、日常の業務を通じて生かされていることへの感謝と、それ自体が一種の祈りであるという彼の考えを示しています。
寛次郎の芸術家としての道のりは、技術を守りつつも、新しい自己を模索し続ける柔軟性に満ちていました。彼は陶芸において二度の大きな作風の変化を経験し、陶芸だけに留まらず多岐にわたる芸術作品を手がけました。この探究心は、彼の興味が新しい表現に向けて常に前進し続けていたことから来ていると言えるでしょう。
さらに、戦時中に灯火管制によって一時的に作陶活動を中断せざるを得なくなった際、寛次郎はろくろから筆へと道具を変え、多くの詞句を残しました。これらの詞句からは、彼の精神性が一層深まったことが伺えます。特に「饗応不尽」という詞句には、彼が到達した人生観が如実に表現されており、生命が時間の上を歩いているという比喩を通じて、我々がこの世で受ける無数の恵みへの感謝が述べられています。
鷺氏自身も、二十年前にがんを患い、その経験を通じて人生の不確実性とそれに立ち向かう大胆さを学んだと述べています。この体験は、以前は躊躇していた行動に対しても思い切って挑戦する勇気を彼女に与えました。彼女は寛次郎の教えを通じて、人生における困難が実は意味を持ち、喜びをもたらすことを学び、これからも寛次郎の作品とその背後にある人生観を伝え、人々に生きる喜びを感じてもらいたいと願っています。
寛次郎の生き方は、怒りや否定的な言葉を避け、生命とその美しさを深く感じることにより、日々の仕事や創作活動を神聖なものと捉える姿勢を示しています。この考え方は、仕事や日常生活の中に神聖さを見出し、生きることそのものを祈りとして捉えることの大切さを我々に教えています。鷺氏が述べる寛次郎の人生観は、困難に直面しても前向きに生きる姿勢と、生命の無限の可能性を信じる心を我々に示しており、読む者に深い共感とインスピレーションを与えます。
人事としての応用
寛次郎の生き方や芸術に対する姿勢は、彼の孫であり河井寛次郎記念館の学芸員である鷺氏によって紹介されています。寛次郎の「祈らない祈り 仕事は祈り」という言葉や彼の芸術から生命の歓喜を表現する姿勢、戦時中の困難を乗り越えた柔軟な対応、そして人生を豊かに生きるための哲学は、現代の働く私たちにも多くの示唆を与えます。特に、人事管理の立場から見ると、これらの教訓は、組織内の人材育成、モチベーション向上、組織文化の構築において大いに活用できる価値があると考えられます。
1. 「祈らない祈り 仕事は祈り」という姿勢の組織への応用
寛次郎の仕事に対するこの深い尊敬と感謝の精神は、従業員が自分の仕事に対してより大きな意義を見出し、日々の業務に感謝の心を持つことの重要性を示しています。人事管理者としては、このような価値観を組織文化に取り入れることで、従業員のエンゲージメントを向上させることができます。例えば、従業員が完成したプロジェクトや達成した成果に対して、ただ単に「終わった」と感じるのではなく、「この仕事を通じて何を学び、どのように成長したか」を振り返る機会を設けることが有効です。これにより、仕事の中で新たな価値や意義を見出すことが可能になります。
2. 常に新しい自分を求める姿勢と人事への意義
寛次郎の芸術や生き方からは、常に変化を恐れずに新しい挑戦を続けることの重要性が示されています。人事管理においては、この姿勢を従業員のキャリア開発や人材育成プログラムに反映させることが大切です。従業員が自分自身の興味や強みを理解し、それを生かした新しい分野への挑戦をサポートすることは、組織全体のイノベーションと成長に寄与します。失敗を許容し、挑戦を奨励する文化の醸成は、従業員が安心して新しいことに挑戦できる環境を作り出します。
3. 人間関係の調和と感謝の心
寛次郎が示した「饗応不尽」という言葉には、周囲への感謝と調和を求める心が込められています。職場においても、このような人間関係の構築は非常に重要です。人事としては、チームワークを強化し、互いに支え合う文化を育てることが必要です。例えば、チームビルディングの活動やコミュニケーションスキルの向上を図る研修を定期的に実施することで、チーム内の調和と相互理解を深めることができます。
4. 困難に対する柔軟な対応
戦時中の困難を乗り越えた寛次郎の経験は、組織が予期せぬ困難に直面した際に柔軟に対応する重要性を教えてくれます。人事としては、従業員が変化に対応できるように支援するための施策を考え、実施することが重要です。変化に強い組織を作るためには、従業員が新しいスキルを学び、柔軟な思考を持つことができるような環境を提供することが求められます。
5. 人生と仕事の豊かさ
寛次郎の生き方からは、仕事だけでなく、人生そのものを豊かにするための哲学が得られます。人事管理の観点からも、従業員が仕事を通じて人生の喜びや満足を感じられるような職場環境の創造が重要です。これは、従業員が仕事の意義を見出し、自己実現を図ることができる職場文化の構築に他なりません。例えば、従業員が自分の価値観や目標に合致する仕事を見つけ、それに情熱を持って取り組めるようなキャリアパスの提供が考えられます。
まとめ
寛次郎の教えや芸術は、単に美術の世界に留まるものではなく、現代の組織や働く人々に対しても大きな示唆を与えるものです。人事管理の立場からこれらの価値観や姿勢を組織内に取り入れ、従業員が自分の仕事に誇りを持ち、組織全体がよりポジティブで創造的な環境へと変化するよう取り組むことは、結果として組織全体のパフォーマンス向上につながるでしょう。これらの原則を実践することで、働くことの本質的な価値と喜びを再発見し、従業員一人ひとりがより充実した職業生活を送ることが可能になります。
河井寛次郎の生き方と哲学にインスパイアされた、穏やかで深いシーンを捉えています。伝統的な日本のスタジオで静かにろくろを回す陶芸家を描いており、周囲には陶芸作品と筆が満ちています。柔らかな自然光が障子から漏れ入り、アーティストと彼の作品を照らしています。スタジオの周りには、自然との調和や生命の恵みへの深い感謝を象徴する、静かな日本庭園が見えます。この環境は、感謝、創造性、そして「祈らない祈り、仕事は祈り」というフレーズが体現する、日々の仕事の精神的な本質を伝えます。スタイルは優しく、河井寛次郎の教えと彼の芸術及び人生哲学への影響の暖かさと深みを捉えています。この画像は、目的と感謝に満ちた生活の美しさを感じさせ、平和、インスピレーション、そして生きることの美しさを呼び起こします。
1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。