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【書籍】障害を超えた絆ー浦田理恵さんと家族の旅路

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp215「6月30日:笑顔に咲いた天の花(浦田理恵 ゴールボール女子日本代表)」を取り上げたいと思います。

 浦田理恵さんは、20歳の時に突然視力を失い始め、この出来事は彼女の人生に大きな影響を及ぼしました。彼女は、目指していた小学校教師という夢を叶えるための専門学校卒業を間近に控えていた時期に、左目が見えなくなり、すぐに右目も同じ運命をたどりました。この急速な変化により、彼女は自分がこれまで当たり前に行っていた日常生活の活動ができなくなることに深い恐怖を感じました。

 視力を失った後、浦田さんは約1年半にわたって一人暮らしのアパートから外に出ることができず、この困難な状況を家族や友人と共有することができませんでした。彼女は絶望的な気持ちに苛まれ、自分の存在に価値を見出せない日々を過ごしました。しかし、22歳のお正月になり、彼女はもうこの状況を一人で抱えきれないと感じ、自分の人生を終わらせるくらいなら家族に真実を伝えるべきだと決心しました。

 福岡から熊本への帰省は、浦田さんにとって大きな一歩でした。電車での移動中、彼女はかつて記憶にある景色や場所の配置を頼りに駅のホームを歩きました。そして改札で母親と再会した時、母親の声は聞こえたものの、顔が見えないことに彼女は深い悲しみを覚えました。この瞬間、彼女は自分の失明が進行している現実を改めて痛感し、家族に対して自分の状況を打ち明けることが重要であると感じました。

 母親との再会の後、浦田さんは自分の視力の状況を家族に正直に伝えました。この共有は、彼女にとって大きな解放感をもたらしました。家族は彼女を支え、一緒に前向きな解決策を探し始めました。この体験を通じて、浦田さんは家族の存在と支援の価値を再認識し、自分の状況にもかかわらず何かを成し遂げることができるという希望を持つようになりました。

 それと、親がしばらくして「何か自分ができることを探さんとね」と声を掛けてくれた。その時に、あぁ自分がたとえどんな状態になっても親は絶対見捨てないでいてくれるなと実感できたんです。
 それまでは家族の存在も、まるで空気のように当たり前に感じていたのですが、いてくれることのありがたさというのが初めて身に染みて感じられました。そしてこれだけ応援してくれたり、励まして支えてくれる人がいるんだから、自分も何かをやらないと、とそれまで後ろ向きだった気持ちが少しずつプラスに変化していきました。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p215より引用

 浦田理恵さんの物語は、困難な状況に直面しても、家族の愛と支持がいかに人生を変えることができるかを示しています。彼女は、視力を失ったとしても、それが人生の終わりを意味するわけではなく、新たな始まりとなり得ることを私たちに教えてくれます。また、困難を乗り越える過程で、自分自身の強さと可能性を発見する機会もあることを示しています。浦田さんは、視力喪失という逆境を乗り越え、新しい人生の道を歩み始めたことで、多くの人々にインスピレーションを与えています。

人事としての応用

 浦田理恵さんの体験談からは、個人が直面する人生の困難、特に障害を持つことへの適応、そしてその過程での家族やコミュニティからの支援の重要性が浮き彫りになります。彼女の経験を通じて、人事や組織開発者は障害を持つ従業員をサポートし、彼らが組織内でフルに活躍できるようにするための環境整備の重要性について多くの洞察を得ることができます。

障害を持つ従業員の採用とサポート

 障害を持つ人々が就職活動において公平な機会を得ることが困難であることはよく知られています。企業は、障害を持つ応募者に対して偏見を持たず、彼らの能力と潜在能力を正しく評価することが求められます。このためには、採用プロセス全体で公平性を確保し、必要な配慮を行うことが不可欠です。これには、アクセシブルな面接場所の提供、選考プロセスの柔軟な調整、コミュニケーション支援ツールを使うことです。

職場環境の整備とキャリアサポート

 障害を持つ従業員に対する支援は、職場の物理的なアクセシビリティの確保から始める必要がありますが、それに留まるべきではありません。職場文化や制度も含め、彼らが自分の能力を最大限に発揮できるよう、包括的な支援環境を整えることが求められます。これには、柔軟な勤務時間の提供、リモートワークの機会、業務内容の適切な調整、職場での意識向上活動などが含まれます。さらに、障害を持つ従業員もキャリア発展の機会を平等に享受できるよう、昇進や研修への参加を公平に行うことが重要です。

継続的なコミュニケーションとエンゲージメント

 障害を持つ従業員との継続的なコミュニケーションは、彼らが直面している困難を理解し、適切なサポートを提供する上で非常に重要です。個々のニーズに合わせてカスタマイズされたサポートプランを作成し、定期的なフォローアップ、心理的サポートの提供が必要です。また、全従業員が障害について正しい理解を持ち、互いの違いを尊重し合う文化を育むことで、組織全体のエンゲージメントと生産性が向上します。

組織の多様性と包摂性の強化

 障害を持つ従業員の採用とサポートは、組織の多様性と包摂性を強化する上で重要な役割を果たします。多様な背景を持つ人々が共に働くことは、新しい視点やアイデアを生み出し、組織のイノベーションと競争力を高めることに貢献します。障害を持つ従業員がその能力を存分に発揮し、成功したキャリアを築けるよう、組織はインクルーシブな文化の構築に努める必要があります。

 浦田さんの物語は、障害を持つ人々が直面する困難、彼らがこれらの困難を克服し、新たな目標に向かって前進する過程での家族や社会からの支援の重要性を示しています。企業はこの事例から学び、障害を持つ従業員に対するサポートを強化し、彼らが組織内で活躍できるような環境を整えることで、より包摂的で生産的な職場を構築することができます。

 浦田さんの経験はまた、障害に関わらず、人々が直面する困難に対して共感し、支援することの価値を示しています。人事としては、従業員一人ひとりのニーズを理解し、それぞれが直面する挑戦に適切に対応するための方策を模索することが重要です。これは、障害を持つ従業員だけでなく、様々な背景を持つ全ての従業員に適用されるべき原則です。

 最終的に、浦田理恵さんの話は、障害が人生の終わりを意味するものではなく、適切な支援と環境があれば、個人は困難を乗り越えて新たな目標に向かって前進できることを示しています。この事例から学んだ教訓を活かし、企業は障害を持つ従業員に対してより良いサポートを提供し、より公平で生産的な職場を作り上げることができます。

 企業が障害を持つ従業員をサポートすることは、単に法的義務を満たせば良いとよいというものではありません。多様性を受け入れ、すべての従業員が互いに学び合い、成長できる環境を作ることです。これにより、従業員は自分たちが価値ある一員であると感じ、その結果、組織全体がより強く、より革新的になるでしょう。

浦田理恵さんの勇気ある一歩を象徴しています。駅のプラットフォームを慎重に歩く彼女の姿は、見えない世界をナビゲートする彼女の勇敢さと適応力を表しています。背景のぼんやりとした人々や電車の輪郭は、周囲に溢れる生命と動きを示しながらも、彼女がこの画像の明確な焦点であることを強調しています。彼女の表情は決意とわずかな不安を示しており、視覚的に見慣れない世界を航海する彼女の勇気と適応を象徴しています。このパワフルなシーンは、彼女が家族に自身の挑戦を打ち明け、共有するための勇敢なステップを象徴しており、観る者に彼女の回復力に対する共感と称賛の感情を喚起します。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。




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