創造的思考を養うためのスキルと企業施策：川上真史氏のリスキリングガイド

　川上真史ビジネス・ブレークスルー大学教授の「リスキリングに必要な10のスキル 11は、「新しいことにチャレンジするスキル」です。

　リスキリングは、既存のスキルや知識を新たに再構築し、未来に向けて柔軟に対応できるようにするための重要なプロセスであり、その中でも「創造的思考」は新たなチャレンジに必要不可欠なスキルとされています。以下に、内容をさらに深く掘り下げ、考察してみます。

Aoba-BBT AirSearch

「創造的思考」の重要性

創造的思考を養うことの重要性

　川上氏は、リスキリングを成功させるためには、単に新しい知識を習得するだけでなく、その知識をどのように活用するか、特に「創造的思考」を養うことが重要であると述べています。まず、この創造的思考のプロセスについて説明していますが、その中でも特に重要なのが「冒険的思考」です。冒険的思考とは、従来の常識や固定観念にとらわれず、誰も疑問を持たなかったことに疑問を投げかけることから始まります。たとえば、日常の業務や社会の中で「当たり前」とされていることに対して「本当にこれが最善の方法なのか？」と疑問を持つことが大切です。このような思考は、イノベーションの第一歩であり、新たな価値を創造するための基盤となります。

情報収集と試行錯誤

　川上氏は、創造的思考をさらに深めるためには、単に問題を見つけるだけでなく、その問題に対して徹底的な情報収集と試行錯誤が不可欠であると強調しています。情報収集の段階では、問題解決に向けたあらゆるデータや知識を集めることが求められます。
　例えば、新しい製品やサービスを開発する場合、その市場の動向、競合他社の戦略、技術的な制約など、さまざまな要素を考慮に入れる必要があります。また、試行錯誤のプロセスでは、集めた情報をもとに仮説を立て、それを実際に試してみることが重要です。多くの場合、初めのアイデアや方法が必ずしも成功するわけではなく、何度も失敗を繰り返しながら最適な解決策を見つけていくことが求められます。

インキュベーションの重要性

　さらに、川上氏は「インキュベーション」の重要性についても言及しています。インキュベーションとは、問題に対して一度集中することをやめ、別の活動に取り組むことで、無意識のうちに脳が問題を処理し、新たなアイデアを生み出すプロセスを指します。これは、創造的思考において非常に効果的な手法です。
　例えば、長時間にわたって問題に取り組んでいると、どうしても視野が狭くなりがちです。そのような場合、一度問題から離れ、リラックスすることや、全く別のプロジェクトに取り組むことで、無意識のうちに脳が新たな解決策を見つけることがあります。川上氏は、このプロセスが創造的なひらめきを生むために非常に有効であると説明しています。

インキュベーションから現実化へ

　インキュベーションの後には、そのひらめきを実際の行動に移す「現実化」のステップが必要です。ひらめきが生じた後、それが単なるアイデアで終わらないよう、現実に適用可能な形にするための具体的な計画を立てることが求められます。この段階では、ひらめいたアイデアを更に精査し、具体的な形にするための詳細な計画を立てる必要があります。
　例えば、プロトタイプを作成したり、試験的に小規模なプロジェクトとして実行したりすることで、そのアイデアが実際に効果を発揮するかどうかを確認します。このプロセスを通じて、インキュベーションの段階で得たひらめきを現実のものにしていくことが重要です。

操作的思考の活用

　また、川上氏は創造的思考を深めるためには、「操作的思考」が必要であると述べています。操作的思考とは、得られた情報を単に受け入れるのではなく、それを分析し、比較し、論理的に展開することを指します。たとえば、ある問題に直面したとき、その問題に対する直感的な解決策をそのまま採用するのではなく、その解決策が本当に最適かどうかを再評価することが求められます。操作的思考には、直感的な判断を補完するための論理的な検証が含まれており、これにより、より精度の高い解決策を見つけることができます。

具体的操作と形式的操作

　操作的思考にはさらに二つの段階があり、一つ目が「具体的操作」、もう一つが「形式的操作」です。具体的操作とは、一つの論理軸に沿って論理を展開する思考法であり、特定の問題に対してシンプルかつ効果的な解決策を見つけるのに適しています。
　たとえば、「もしAがBであるならば、CはDである」という形で、論理を一貫して展開することができます。しかし、この具体的操作には限界があり、特に複雑な問題や多くの要因が絡み合う場合には、すべての要素を網羅することが難しいです。

　このため、川上氏は「形式的操作」が必要であると述べています。形式的操作とは、複数の論理軸を同時に考慮し、それぞれの矛盾や葛藤を解決しながら最適解を導き出すプロセスを指します。形式的操作では、単一の論理ではなく、複数の要素や視点を同時に考慮し、その中から最もバランスの取れた解決策を見つけることが求められます。
　たとえば、ビジネスの場面では、利益、顧客満足度、従業員のモチベーション、社会的責任など、複数の要因が絡み合います。これらの要因をすべて考慮に入れた上で、最適な解決策を見つけることが重要です。川上氏は、この形式的操作が創造的な思考を生み出すための鍵であり、特にリーダーシップやマネジメントにおいて非常に重要であると強調しています。

否定すること

　川上氏は、自分の考えや結論を否定する論理を取り入れることの重要性も強調しています。自分の考えに対する反論や否定的な視点を取り入れることで、新たな視点が生まれ、より創造的な解決策が見つかる可能性が高まります。形式的操作を通じて、矛盾や葛藤を解決しながら、新たな発想やチャレンジを生み出すことができると述べています。

まとめ

　この講義を通じて、創造的思考の重要性が強調され、それを実現するための具体的なプロセスが詳細に解説されています。川上氏は、リスキリングにおいて創造的思考を養うことが、新しい挑戦に成功するための鍵であり、そのためには徹底した情報収集、試行錯誤、そして形式的操作が不可欠であると述べています。このようなプロセスを通じて、新たなスキルや知識を効果的に活用し、未来に向けた柔軟な対応力を身につけることがリスキリングの成功に繋がると説明しています。

　知識を得るだけでなく、その知識をどのように活用し、新たな価値を生み出すかに焦点を当てています。今回取り上げたアプローチは、リーダーやビジネスパーソンが直面する複雑な問題を解決するために不可欠なスキルであり、リスキリングの一環として取り組むべき重要な要素なのでしょう。

活気あふれるオフィス環境での「創造的思考」です。従業員たちは、テーブルを囲んでアイデアを議論したり、ノートパソコンを使って作業したりしています。大きな窓から差し込む自然光が、明るく開放的な雰囲気を演出しています。カラフルな付箋やスケッチでいっぱいのホワイトボードがあり、別の従業員は静かな一角で思索にふけっています。部屋全体には、新しいアイデアやイノベーションを象徴する浮かぶ電球や抽象的な形が散りばめられており、エネルギッシュで協力的な雰囲気が感じられます。