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【書籍】「人を追う」ビジネス哲学ー中井政嗣氏の金言に学ぶ

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp351「11月6日:金を追うたらあかん。人を追いなさい(中井政嗣 千房会長)」を取り上げたいと思います。お好み焼きの千房の創業者です。

 「金を追うたらあかん。人を追いなさい」という中井氏の言葉は、彼の人生哲学を端的に表現しているといえるでしょう。特に、ビジネスで成功するためには人との信頼関係が重要であり、人に焦点を当てた価値観が真の成果を生むという深いメッセージが込められています。

 中井氏は千房の会長として、お好み焼きチェーンを日本国内外で成功に導いた経験を持っています。彼は、多くの人々と接する中で、信頼関係の重要性を学び、成長を遂げてきました。彼の哲学は、ただお金を追い求めるだけではなく、人とのつながりを通じてビジネスを構築し、持続的な成果を生み出すというものです。ビジネスにおける成功はもちろん重要ですが、最終的には人々との信頼関係が成功の基盤となると中井氏は考えています。

 この考え方は、ビジネスの枠を超えて、人間関係全般に適用できるものです。家庭やコミュニティ、さらには国家レベルでさえ、人との信頼関係が物事の成功や調和に大きな役割を果たします。中井氏の言葉は、現代のビジネス環境や社会において、目先の利益だけにとらわれることなく、長期的な視野で人間関係を築くことの重要性を訴えています。

 お金はビジネスの成功にとって不可欠な要素ではあるものの、それ自体が目的となると、やがて行き詰まりを生む可能性があります。一方、人に焦点を当てることで、信頼やサポート、連携など、ビジネスの成長に欠かせない要素が自然と生まれます。このように、「人を追う」ことは、持続的なビジネスモデルを築くための基本的な原則といえます。

 中井氏の言葉は、私たちが他者とのつながりを大切にし、人間関係に投資することで、個人や組織の成功が広がる可能性を示唆しています。ビジネスパートナーや顧客、従業員との関係を大切にすることで、最終的に得られる利益が増え、結果としてビジネスの成長に繋がるといえるでしょう。

では、どうしたらお客様に喜んでいただけるかを考えると、その前提となるのはやはり従業員がニコニコとお客様に接してくれることですし、従業員が幸せだと感じてくれる会社でなくてはいけません。と同時に会社自体の発展もなくてはいけない。お客様の満足、従業員の幸せ、会社の発展。経営とはこの三本柱だと思っています。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p351より引用

「人を追う」:人事視点でどう活かすか

 「金を追うたらあかん。人を追いなさい」という中井氏の言葉には、ビジネスの根幹にある信念が表現されています。この言葉から見えてくるのは、人間関係や組織文化を重視し、短期的な利益追求よりも長期的な成長や社会的信頼を大切にする姿勢です。ビジネスだけでなく、人事の領域でもこの理念は重要であり、組織全体で従業員を中心に据えることが、持続可能な成長戦略となります。

「人を追う」ビジネスモデルの本質

 ビジネスの本質を人に置くことには、組織文化や顧客関係、長期的な成長における大きな意義があります。以下に、その具体的な側面と重要性を深掘りします。

従業員の幸福とエンゲージメントの向上
 
従業員の幸福感を高めることで、生産性の向上や創造性の発揮を引き出します。従業員が満足し、モチベーションを持って業務に取り組むことで、顧客に対するサービスの質も向上し、組織のブランドイメージや評判の向上に繋がります。従業員を大切にする企業文化は、従業員の仕事への情熱を育み、結果的に業績や顧客満足度の向上に結びつきます。

サステナビリティと長期的な関係構築
 
短期的な利益だけを追求するアプローチは、企業に長期的なリスクをもたらすことがあります。顧客やパートナー、従業員、地域社会との関係を大切にし、信頼と誠実さを重視したビジネスは、持続可能な成長を支える基盤となります。信頼関係の構築は、組織が変化する市場や経済状況に柔軟に対応し、顧客ニーズに迅速に応えるための重要な要素です。

企業文化の強化
 
人を中心に置くアプローチは、組織の文化そのものを強化し、ポジティブな変化をもたらします。信頼や相互尊重の文化が根付いた組織は、従業員が自分の意見やアイデアを積極的に表現できる環境を作り出し、イノベーションや問題解決力の向上に寄与します。これは、組織全体の生産性や競争力を強化するために欠かせない要素です。

人事における「人を追う」戦略の適用

 人事戦略にこの哲学を適用することで、企業全体の成長をサポートすることができます。具体的なアプローチをいくつか挙げ、考察してみます。

採用戦略の見直し
 
スキルや経験だけでなく、人間性や企業文化との適合性も重視した採用戦略が求められます。企業の理念やビジョンに共感し、組織の一員として長期的に活躍できる人材を採用することで、組織全体の安定と成長をサポートします。従業員の定着率向上は、採用コスト削減や生産性向上にも寄与します。

タレントマネジメント
 
従業員の強みやキャリア志向を把握し、それに合った研修プログラムやキャリアパスを提供することで、彼らの成長をサポートします。これにより、組織内でのタレントプールを拡大し、従業員の能力を最大限に引き出すことができます。適切なタレントマネジメントは、組織全体の競争力を向上させ、次世代リーダーの育成にもつながります。

エンゲージメント向上策
 
従業員のフィードバックを重視し、定期的なコミュニケーションや意見交換を促進することで、エンゲージメントの向上を図ります。従業員が自分の声を出しやすい企業文化を築くことで、組織全体のコミュニケーションが円滑になり、従業員同士の協力体制が強化されます。これは、チームの一体感や生産性の向上に繋がります。

福利厚生や報酬の充実
 
従業員のモチベーション維持には、適切な報酬と福利厚生の提供が欠かせません。従業員が健康で安心して働ける環境を整備し、ワークライフバランスを重視する施策を導入することが重要です。福利厚生の充実は、従業員のモチベーションを高め、パフォーマンスの向上や組織への帰属意識を強化します。

教育とスキル開発
 
従業員のスキル開発を促進するため、継続的な研修プログラムや自己啓発の機会を提供することが重要です。組織の変化や市場ニーズに対応できる柔軟なスキルを持つ人材を育成することで、組織全体の競争力を高めることができます。従業員の成長を支援する企業文化は、組織への貢献意識を高め、離職率の低下に繋がります。

まとめ

 人事部門は組織全体の戦略的パートナーとして、経営層と連携しながら従業員一人ひとりの成長を支える役割を果たすべきです。「人を追う」哲学を人事戦略に取り入れることで、従業員が長期的に成長し、組織のビジョンに貢献できる環境を作り出すことができます。組織全体で人を大切にする文化を育むことで、健全な成長と安定を実現し、持続可能な企業経営をサポートきるようになるでしょう。まさに、中井氏の金言が実行できるようになるわけです。

ビジネスにおいて「お金より人を重視する」という考え方を表現しています。前景でリーダーが多様な人々と握手し、信頼と協力の価値を強調しています。成長を象徴する繁栄した木々や澄んだ空は、長期的な進歩と持続可能性へのビジョンを反映しています。暖かい色合いのパレットは、楽観的で調和の取れた雰囲気を醸し出し、この哲学の精神をうまく表現しています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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