
【書籍】母の愛と太陽の絆:現代社会における母親の役割ー境野勝悟氏
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp92「3月3日:「お母さん」という言葉の由来(境野勝悟 東洋思想家)」を取り上げたいと思います。
「お母さん、何かないの?」
幼い頃、遊び疲れて家に帰ると、決まってこの言葉が口をついて出ました。すると、台所から優しい声が返ってきます。「あら、お腹空いたの?ちょっと待っててね」。そして、少しすると、ふかしたサツマイモや、おにぎり、季節の果物など、母の手作りのおやつが食卓に並びます。
それは、ただお腹を満たすためだけの食事ではありませんでした。母の温かい笑顔と優しい言葉に包まれながら食べるおやつは、疲れた心と体を癒し、明日への活力を与えてくれる、特別な時間でした。
そんな母を呼ぶ言葉、「お母さん」。実は、この言葉には、太陽のように明るく温かい母の存在と、私たち人間にとって欠かせない太陽との深い繋がりが隠されているのです。
古来より、人々は太陽を「カカ」「カアカア」「カッカッ」と呼び、燃え盛る太陽の姿を擬態語で表しました。そして、私たち人間にとって太陽と同じように大切な存在である母親を、「お日身(カミ)さん」と呼んだのです。
太陽が万物を照らし、草木を育て、私たちに光と温もりを与えるように、母は私たちを身ごもり、産み育て、無償の愛を注いでくれます。夜遅くまで仕事をして疲れていても、朝早く起きてお弁当を作り、子供の成長を願い、時には厳しく、時には優しく、太陽のように私たちを導いてくれます。
例えば、子供が風邪を引いた時、母は看病をしながら、早く良くなるようにと願い、温かいスープを作ってくれます。子供が進路に迷った時、母は励ましながら、子供の幸せを願い、最善の道を一緒に探してくれます。子供が失敗した時、母は慰めながら、立ち直る力を信じ、再び挑戦する勇気を与えてくれます。
このように、母は太陽のように、私たちを温かく包み込み、生きる力を与えてくれる存在です。子供たちは、この「カカ」という古語を縮めて「カカさま」と呼び、さらに変化して「おかあさん」になったと言われています。「おかあさん」の「か」の音が、太陽を表す「カ」に通じていることからも、母と太陽の深い繋がりが感じられます。
子供たちは、この古い言葉の「カカ」をとって、「カカさま」といった。この「カカ」の「カ」が残って、「おかあさん」という。「おカあさん」の「カ」は、太陽です。母親を敬愛する教育を怠って、思いやりの深い、温かい日本人は、苦しみます。
現代社会において、家族の形が多様化する中で、母親の役割も変化しています。しかし、子供が健やかに成長するために、母親の存在が不可欠であることは変わりません。母親への尊敬と感謝の気持ちを育むことは、他人への思いやりや優しさに繋がり、温かい人間関係を築く上で欠かせないものです。
私たち一人ひとりが、母親の偉大さを再認識し、感謝の気持ちを忘れずに日々を過ごすことが、より良い社会を築く第一歩となるのではないでしょうか。
人事としてどう考えるか
今回、「お母さん」という言葉の由来を考えるきっかけとなりました。人事として着目すべき4つのポイントを掘り下げてみます。
1.従業員のエンゲージメント向上:家族への配慮が企業にもたらすメリット
従業員の家族への配慮は、単なる福利厚生の一環ではなく、企業の成長に不可欠な戦略です。家族が安心して過ごせる環境を提供することで、従業員は仕事に集中し、生産性を向上させることができます。
例えば、ある企業では、子供の急な病気や学校行事への参加に対応できるよう、柔軟な休暇制度を導入しました。その結果、従業員の欠勤率が減少し、業務効率が向上しただけでなく、従業員の会社への愛着心も高まりました。
また、別の企業では、従業員の家族を対象とした健康診断やレクリエーションイベントを開催しています。家族ぐるみで企業を応援する雰囲気が醸成され、従業員の帰属意識が高まり、離職率の低下にも繋がっています。
2.多様な価値観への理解:個性を尊重する組織文化の構築
現代社会では、家族の形態や価値観は多種多様です。LGBTQ+の従業員、シングルペアレント、共働き世帯など、それぞれの状況や考え方を尊重し、誰もが安心して働ける環境を整備することが、企業の持続的な成長に不可欠です。
例えば、ある企業では、同性パートナーシップ制度を導入し、LGBTQ+の従業員が安心してパートナーシップを公表できる環境を整えました。その結果、多様な人材が活躍できるようになり、企業全体の創造性やイノベーション力が高まりました。
また、別の企業では、管理職向けのダイバーシティ研修を実施し、多様な価値観を持つ従業員を理解し、それぞれの能力を最大限に引き出すためのマネジメントスキルを習得させました。その結果、従業員のエンゲージメントが向上し、チーム全体の生産性が向上しました。
3.人材育成:従業員の成長を支援する多角的なアプローチ
従業員の成長は、企業の競争力強化に直結します。階層別研修や職種別研修だけでなく、メンタリング制度やキャリアコンサルティング制度など、多角的なアプローチで人材育成に取り組むことが重要です。
例えば、ある企業では、新入社員一人ひとりに先輩社員をメンターとして配置し、業務上の指導だけでなく、キャリアプランの相談やメンタル面のサポートも行っています。その結果、新入社員の早期離職が減少し、定着率が向上しました。
また、別の企業では、従業員が自発的にスキルアップできるよう、オンライン学習プラットフォームを導入しました。従業員は自分のペースで学習を進めることができ、多様なスキルを身につけることで、キャリアアップを目指せるようになりました。
4.組織文化の醸成:感謝と共感を育むコミュニケーション
感謝の気持ちや思いやりを大切にする組織文化は、従業員同士の信頼関係を深め、一体感のある組織を作ります。感謝の気持ちを伝えるための社内表彰制度や、従業員同士が気軽に感謝の気持ちを伝え合えるようなコミュニケーションツールの導入など、具体的な取り組みが重要です。
例えば、ある企業では、毎月の会議で「グッジョブ賞」を設け、他の従業員をサポートした社員を表彰しています。感謝の気持ちを公に表現する機会を設けることで、従業員同士の感謝の気持ちが自然と高まり、協力的な雰囲気が醸成されました。
また、別の企業では、社内SNSを活用して、従業員同士が日々の業務で感じた感謝の気持ちを気軽に投稿できる仕組みを導入しました。感謝の言葉が飛び交うことで、職場の雰囲気が明るくなり、コミュニケーションが活性化しました。
人事としては、これらの要素を総合的に考慮し、従業員が安心して働き、成長できる環境を整えることで、企業の持続的な成長に貢献することができます。

遊び疲れて帰ってきた子供が「お母さん、何かないの?」と尋ねる温かい家庭の一場面です。台所でおやつを準備する母親の姿は、優しさと愛情に溢れています。ふかしたサツマイモやおにぎりが並ぶ食卓は、母の手作りの温かさを感じさせます。このシーンは、母親が子供にとっての太陽のような存在であることを象徴しており、母親の愛とぬくもりが子供の心と体を癒し、明日への力を与えてくれる様子を美しく表現しています。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。