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L.E.T.の活用術(医療現場を事例とした応用)

 Prescribe Your Doctor a Dose of the Gordon Model?(あなたの医者にゴードン・モデルを処方してみませんか?)という以下記事、L.E.T.(リーダー・エフェクティブネス・トレーニング)のコミュニケーションの観点で大変興味深い記事でした。

 この内容をもとにコミュニケーションについて考察してみたいと思います。なお、あくまでコミュニケーションを考えるための「事例」として捉えてください。ここでは、医療従事者、患者自身に問題がある、ということを論点にしたいわけではありません。

 医療の現場において、患者と医療従事者とのコミュニケーションは治療の効果や患者の満足度に影響すると考えられます。患者が医療従事者に対して不満を抱く原因は、技術的な問題というよりは、コミュニケーションの質にあるとも考えられます。患者が自身の不安や疑問を自由に表現できず、医療従事者の説明が十分に理解されないことが主な問題です。記事では、これらの問題を解決するために、L.E.T.のコミュニケーション技法が有効であることが示唆されています。以下に、L.E.T.の技法を用いた医療現場のコミュニケーション改善策を詳細に考察してみます。

L.E.T.の概要

L.E.T.は、リーダーシップとコミュニケーションスキルを向上させるためのトレーニングプログラムです。

 以下の主要なスキルが含まれます。これだけではありませんが、今回はこの3つに絞って考えてみたいと思います。

  • アクティブ・リスニング(A/L)
    相手の話を注意深く聞き、理解していることを示す技法です。

  • I-メッセージ(I-M)
    自分の感情やニーズを率直に伝える技法です。

  • メソッドⅢ(M.Ⅲ)
    双方のニーズを満たす解決策を共に見つける方法です。

医療現場におけるコミュニケーションの課題

  1. 患者の不満
     患者は、医療従事者に対して質問や不安を話すことが少なく、話しても理解されていないと感じることがあるようです。医療従事者が患者の話を途中で遮ることや、共感を示さないことが原因と考えられます。

  2. 感情のケア不足
     患者やその家族が感じる不安や恐怖に対して、医療従事者が適切に対応できていないことがあります。感情的なサポートが不足しているため、患者や家族は孤立感を覚えやすいのではないかと考えられます。

  3. コミュニケーションの断絶
     医療従事者が患者の話を途中で遮ったり、表面的な対応しか取らなかったりすることで、信頼関係が築けないことがあります。これにより、患者は医療従事者に対して不信感を抱き、治療への積極的な参加が妨げられます。

L.E.T.の技法を用いた改善策

アクティブ・リスニング(A/L)

 アクティブ・リスニングは、患者が話している内容や感情をそのまま受け止め、理解していることを確認する技法です。相手の話に注意深く耳を傾け、適切な反応を示すことで、患者が自分の気持ちを自由に表現できる環境を作ります。
 患者は自分が聞かれていると感じ、安心感を得ることができます。さらに、話すことで自分の感情や問題点を整理しやすくなります。医療従事者は患者の真のニーズを理解し、適切な対応が可能になります。

I-メッセージ(I-M)

 I-メッセージは、医療従事者が自分の気持ちやニーズを率直に伝える技法です。これにより、患者に対して透明性のあるコミュニケーションが行われます。I-メッセージは、相手を非難せずに自分の立場や感情を伝えることが重要です。
 I-メッセージを使用することで、相互理解が深まり、患者との信頼関係が強化されます。患者は医療従事者が自分を理解しようとしていると感じ、治療への積極的な参加が促されます。

メソッドⅢ(M.Ⅲ)

 メソッドⅢは、患者と医療従事者が協力して解決策を見つける方法です。双方のニーズを満たすための解決策を探るプロセスであり、相互理解と共同作業を重視します。
 患者は治療プロセスに積極的に参加することで、治療への満足度が向上します。また、医療従事者と患者の間に信頼関係が築かれ、治療方針に対する協力が得られやすくなります。

ケーススタディと考察

ケース1:患者が医師に対して不満を持っている場合

 患者が自身の症状や不安を話そうとしても、医師が途中で遮ったり、適切に対応しないことがあります。このような状況では、患者は自身の気持ちを十分に表現できず、不満を感じます。
 医師はアクティブ・リスニングを使い、患者の話を最後まで聞き、その内容を確認することが重要です。さらに、自分の理解をI-メッセージで伝え、次のステップを一緒に考えるメソッドⅢを用いることで、患者の不満を解消し、信頼関係を築くことができます。

ケース2:患者の家族が不安を抱えている場合

 患者の家族が治療についての不安や質問を抱えているが、誰にも話せない状況がしばしば見られます。家族の不安が適切にケアされないと、患者へのサポートも不十分になります。
 医療従事者は家族に対してアクティブ・リスニングを実践し、家族の不安や疑問を理解することが求められます。次に、I-メッセージで医療従事者自身の見解を率直に伝え、メソッドⅢを用いて家族と一緒に解決策を考えることが重要です。

具体的な実践方法

アクティブ・リスニングの実践

  • ステップ1:患者が話し始めたら、話の内容に集中し、適切な相槌やうなずきを行います。

  • ステップ2:患者の話の要点を繰り返し確認し、理解を示します。「あなたが言っているのは〇〇ということですね」といった確認の言葉を使います。

  • ステップ3:患者の感情に対して共感を示し、「そのことについてどう感じていますか?」といった質問を投げかけます。

I-メッセージの実践

  • ステップ1:自分の感情やニーズを明確にします。例えば、「私は〇〇と感じています」といった形で伝えます。

  • ステップ2:相手の行動や状況に対して具体的に言及します。「あなたが〇〇をしたとき、私は〇〇と感じました」と具体的に伝えます。

  • ステップ3:自分のニーズや希望を明確に伝えます。「私は〇〇を希望しています」といった形で、自分の期待やニーズを伝えます。

メソッドⅢの実践

  • ステップ1:問題の共有と定義を行います。双方が問題をどのように認識しているかを確認します。

  • ステップ2:双方のニーズを明確にします。患者と医療従事者それぞれのニーズや関心事を洗い出します。

  • ステップ3:ブレインストーミングを行い、解決策のアイデアを出し合います。批判をせず、自由にアイデアを出します。

  • ステップ4:提案された解決策を評価し、双方が受け入れられるものを選びます。

  • ステップ5:選ばれた解決策を実行に移します。具体的な行動計画を立て、実行に移します。

  • ステップ6:結果を評価し、必要に応じて再度調整を行います。解決策が効果を上げているかを確認し、必要があれば再度ブレインストーミングを行います。

まとめ

 L.E.T.のコミュニケーション技法を医療現場で活用することで、患者やその家族との信頼関係を築き、治療の満足度や効果を向上させることができます。
 特に、アクティブ・リスニング、I-メッセージ、メソッドⅢの3つの技法は、患者中心のケアを実現するために非常に有効です。これらの技法を日常的に実践することで、医療従事者は患者の真のニーズを理解し、より良い治療を提供できるでしょう。
 医療現場におけるコミュニケーションの質を向上させることは、患者の満足度を高め、治療の効果を最大化するためにも必要だな、応用が効く部分も多いな、改めて感じたところでもあります。

L.E.T.のコミュニケーション技法を医療現場で活用する場面です。医師と看護師が患者と向き合い、アクティブ・リスニングを通じて患者の話を丁寧に聞き、I-メッセージを使って率直に自分の気持ちを伝えています。背景には「問題の共有」「解決策のブレインストーミング」など、メソッドⅢのプロセスが示されたホワイトボードが見えます。このようなコミュニケーション技法は、患者が安心感を持ち、治療に積極的に参加できる環境を作り出します。

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