【書籍】行動する勇気―困難を感謝に変える人生哲学ー塙真弓氏
塙真弓氏の『なりたい自分になるために』を拝読しました。塙氏は、2024/11/16の樺沢紫苑氏のセミナーで登壇されました。
本書は、塙氏が、乳がんと2つの難病という非常に厳しい状況に直面しながら、人生をどのように乗り越え、新たな可能性を見出していったのかを深く語った内容です。特に、「万象肯定 万象感謝」という言葉との出会いをきっかけに、大きな転換を迎えた人生の姿が描かれています。この言葉を基盤にした行動哲学や、活動を通じて築かれた人々との絆が、多くの読者にとって感動と希望を与える内容となっています。
難病との闘いと「万象肯定 万象感謝」との出会い
2020年のクリスマスイブ、塙氏は、「消化管間質腫瘍(GIST)」という病名を告知されます。既に乳がんや腎臓の難病とも闘っていた塙氏にとって、さらにこの病気と向き合うことは、まさに絶望的な状況でした。この病気は治療法が限られており、進行を抑えるために抗がん剤を服用する以外に方法がないという厳しい現実が突きつけられました。
塙氏は当初、この現実を受け入れることができず、悲しみを抱えたまま涙も流せない日々を送りました。しかし、「自分と向き合うことが必要」と自覚し、「嘘泣きでもいいから泣いてみる」という行動を通じて、感情を解放する重要性を理解しました。この自己受容の一歩が、彼女の心の変化を促し、希望を見出すきっかけとなります。
転機は、娘の勧めで参加した音声SNS『Clubhouse』でした。このプラットフォームを通じて、「万象肯定 万象感謝」という言葉に出会います。この言葉は、「起きたすべての出来事を否定せず、感謝する」という哲学を示しており、心に深く響きました。初めてこの言葉を耳にした瞬間、まるで雷に打たれたかのような衝撃を受け、自分自身を新しい視点で見つめるきっかけとなったといいます。この考え方を受け入れることで、病気や困難な状況そのものに感謝し、それを人生の貴重な学びと捉えるようになりました。
「感謝の心まんまるの会」の設立とチャリティー活動
「万象肯定 万象感謝」の考え方を広めたいという思いから、著者は『Clubhouse』上で「感謝の心まんまるの会」というコミュニティを立ち上げます。このコミュニティでは、感謝と肯定の精神を共有し、多くの人々とつながることを目指しています。オンラインだけでなく、リアルな場でも活動を展開し、社会にポジティブな影響を与え続けています。
その象徴的な活動が、チャリティーイベント「希望コンサート」です。2022年8月に第一回目を開催し、以降も継続的に実施。収益は難病患者を支援する団体に寄付され、多くの人々に希望を届ける場として成長しています。このコンサートの企画から実現まで、著者は多くの支援者や仲間と協力しながら、イベントを成功させてきました。
特別な出会いがもたらした大きな変化
塙氏の活動を支える大きな力となったのは、数々の特別な出会いです。その中でも、歌手の中村あゆみさんとの出会いは特筆すべきものでした。塙氏がイベントに参加した際、中村さんから温かい言葉をかけられたことで、大きな勇気とエネルギーを得ました。
また、「世界一幸せな歌う講演家」として知られる古市佳央さんや、舌がん歌手しんびさんとの出会いも、著者の活動に大きな影響を与えました。彼らとの交流を通じて、著者は「病気に感謝する」という考え方をさらに深め、共に活動する意義を感じました。
これらの出会いは、単なる偶然ではなく、著者が前向きに行動し続けた結果として引き寄せられたものであるといえます。感謝と肯定の姿勢を持ち続けることで、人々との絆を深め、困難を乗り越える力を得たのです。
行動哲学と未来への展望
塙氏は、自らの経験を基にしたいくつかの行動哲学を提唱しています。その一つが「20%の準備で始める」という考え方です。完全な準備を待つのではなく、不完全でも行動を起こすことの重要性を強調しています。行動することで、課題が具体的になり、解決策が見えてくると述べています。
また、「自分自身を満たすことの重要性」にも焦点を当てています。他者を助けるためには、まず自分自身の心が満たされていることが必要であるという考え方です。この視点から、特に現代社会で多くの負担を抱える女性や母親たちに向けた支援活動を展開しています。
さらに、「自分の言葉を信じる」ことの重要性を説いています。夢や目標を言葉にすることで、脳がその実現に向けて働きかけるとし、実際に自らの経験を通じて言葉の力を実感しています。
子どもたちへの思いと社会への貢献
塙氏は、次世代の子どもたちに明るい未来を提供することを目指しています。自己肯定感を育む支援や、困難に直面しても回復できるレジリエンスを高める活動を推進しています。子どもたちが失敗を恐れず、新しい挑戦を楽しむことができる社会を実現するために、全力を尽くしています。
困難を乗り越える力と、感謝の心を持ち続けることの重要性を教えてくれるものです。著者の実体験と行動哲学は、多くの人々にとって希望と勇気の源となり、人生の指針として役立つ内容となっています。
企業人事の立場から考える:感謝と行動哲学を基にした組織運営と社員支援
本書名でもある、「なりたい自分になるために」というのは、自己の可能性を最大限に引き出し、困難を乗り越える力を培う姿勢を示したものです。企業とっても貴重な示唆を与えます。社員が成長し、組織全体のパフォーマンスを向上させるためには、感謝の姿勢や肯定的な考え方、行動哲学を取り入れた支援も一考すべきでしょう。企業としてが取り組むべき具体的な施策や考え方を深掘りしながら、組織運営における適用可能性を検討してみます。
レジリエンスの重要性とその育成
塙氏が、「万象肯定 万象感謝」という言葉を通じて、困難を受け入れ前向きに転じたように、企業も社員が逆境を乗り越えるレジリエンスを育むことが求められます。現代のビジネス環境は急速な変化と高い不確実性に満ちており、社員が困難な状況に柔軟に対応し、再起する力は重要なスキルの一つです。特に、キャリアの中で予測不可能な出来事に直面することが増えている中で、社員が自信を持って行動できるよう支援する仕組みが不可欠です。
具体策の案
メンタルヘルス研修を定期的に実施し、社員がストレスに対処するための知識と方法を学ぶ機会を提供する。
社員同士が困難を共有し、互いにサポートできる「ピアサポートプログラム」を導入することで、心理的安全性を確保する。
リーダーがレジリエンスの模範を示し、部下が困難に直面した際の適切な対応を学べる環境を作る。
レジリエンスは、単なる耐久力ではなく、柔軟性や対応力を持つ能力です。この視点を取り入れることで、社員個人の成長だけでなく、組織全体の競争力向上に繋がります。
社内コミュニティを活用したエンゲージメントの向上
塙氏が設立した「感謝の心まんまるの会」のように、共通の価値観や目標を持つコミュニティは、人々に強い結びつきとエネルギーを与えます。企業でも、部署を超えたコミュニティ活動を支援することで、社員同士の連帯感を高め、組織へのエンゲージメントを向上させることができます。
具体策の案
「クロスファンクショナルチーム」を作り、異なる部門の社員が共通の課題解決に取り組む場を提供する。
社員が自発的に立ち上げるクラブ活動やボランティア活動を支援し、社内外での交流を促進する。
オンラインとオフラインを組み合わせた「感謝を共有する場」を設け、日々の業務での小さな成功や感謝の声を集めて共有する。
コミュニティ活動を支援することで、社員は「組織の一員である」という意識を深め、自分の役割に対する満足度や意欲が向上します。また、コミュニティを通じて培われた横のつながりは、異なる部門間の協力体制を強化し、イノベーションを促進する効果も期待されます。
自己肯定感を高める評価制度と育成プログラム
塙氏が述べる「自己肯定感」の重要性は、企業の人事施策にも直結します。社員が自己肯定感を持つことで、モチベーションが高まり、自発的に行動する意欲が湧きます。自己肯定感を高めるためには、適切な評価制度やキャリア支援が不可欠です。
具体策の案
フィードバック面談を定期的に実施し、社員の努力や成果を具体的に評価し、承認する文化を醸成する。
社員が自分の強みを発見し、それを活かしたキャリア設計を支援する「ストレングスファインダー」やキャリアカウンセリングを提供する。
自己肯定感を高めるための心理学的アプローチ(ポジティブ心理学に基づくトレーニングなど)を活用した研修を導入する。
自己肯定感を育むことは、特に若手社員にとって重要です。これにより、社員は「自分は組織に貢献している」という感覚を持ち、長期的なキャリアビジョンを描きやすくなります。
言葉の力を活かしたリーダーシップと組織文化の形成
塙氏が、言葉の力で人生を切り拓いてきたように、企業でもリーダーが肯定的な言葉を活用して社員を鼓舞し、成長を促すことが求められます。リーダーシップにおいて、言葉は行動の方向性を示し、組織全体の意識を統一する重要な役割を果たします。
具体策の案
リーダー向けに「ポジティブフィードバック」のスキルを高めるトレーニングを実施する。
社内で「言葉の力」をテーマにしたイベントやワークショップを開催し、社員が前向きなメッセージを共有する場を作る。
ビジョンやミッションを具体的で共感を呼ぶ言葉に落とし込み、社内で頻繁に共有する。
リーダーが肯定的で前向きな言葉を発信することで、社員のモチベーションが向上し、組織全体が同じ方向を向いて進むための一体感が生まれるでしょう。
「なりたい自分」を支援するキャリア開発の重要性
塙氏が、「なりたい自分になるために」行動し続けたように、企業も社員が自己実現を目指す環境を提供することが重要です。社員が自分の可能性を信じ、それを実現できる職場は、企業にとっても人材定着率や生産性の向上につながります。
具体策の案
社員が自己開発に取り組みやすい環境を整備し、研修や資格取得をサポートする制度を導入する。
キャリアパスの選択肢を明示し、社員が自分に合ったキャリアを選び取れる柔軟性を確保する。
定期的なキャリア面談を通じて、社員の希望や目標を共有し、それに基づいた育成計画を策定する。
自己実現を支援することは、社員一人ひとりのモチベーションを高めるだけでなく、組織全体としての競争力を強化する効果があります。
まとめ:感謝と行動哲学を企業文化に取り入れる意義
企業として感謝と行動哲学を取り入れることは、社員一人ひとりが困難を乗り越え、自己実現を目指すための力となります。この取り組みは、社員のモチベーション向上やエンゲージメントの強化だけでなく、組織全体の成長にも直結します。
「なりたい自分になるために」に示された考え方は、社員の可能性を最大限に引き出し、企業が持続的に発展するためのヒントに満ちています。人事として、この視点を組織運営に活かすことが、これからの企業にとって欠かせないアプローチとなるでしょう。
自然の穏やかな美しさと「万象肯定 万象感謝」の精神を象徴しています。女性が広げた手と夕暮れの風景が調和し、希望と感謝のメッセージが強く感じられる構図です。柔らかな光と舞う花びらが、厳しい現実を受け入れ、それを超えていく力強さと優しさを表現しています。