見出し画像

【書籍】谷田大輔氏の座右の銘「人生万事因己」に学ぶ自己改善の精神

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp247「7月30日:人生万事因己(谷田大輔 タニタ社長)」を取り上げたいと思います。

 1983年に谷田氏がタニタ社の副社長に就任した当時、同社は2期連続の赤字決算に陥る最悪の経営状況にありました。父である会長から実質的な経営権を委ねられた谷田氏は、従来の経験豊富な役員陣を残し、彼らとの熱心な議論を重ねながら会社再建に取り組むことにしました。

 再建の道のりは困難を極めました。新社長が常にする役員の刷新人事を敢えて行わなかった谷田氏は、役員から「素人にできるはずがない」など批判の言葉を投げかけられることも多々ありました。しかし彼は、そうした発言を発奮材料に変え、相手を左遷や降格で制裁することはせず、言論の自由を担保しました。結果として5年間で4期の赤字計上、累損は約2億6000万円に達し、最盛期の売上高60億円からも大幅に下落する深刻な状況に陥りました。

 このような絶望的な窮地の中で、谷田氏を支えたのが「人生万事因己(おのれがもと)」という言葉でした。実家の欄間に掛かっていたこの言葉を座右の銘に、彼は自らの決断と責任を重んじながら改革に取り組みました。失敗を重ね、苦悩に満ちた日々が続きましたが、自分の判断が会社の存続をも左右する緊迫した状況下で、自己変革を図り、思い切った決断を重ねていくことで、次第に自信をつけていきました。

そんなとき心の支えになったのが「人生万事因己(おのれがもと)」という言葉でした。 この言葉は私の実家の欄間に掛かっていた額の言葉で、いまでは私の座右の銘にしていつも自分に言い聞かせています。再建をしていく段階で、いろいろ失敗したり、つまずいたりして悩みましたけれど、すべての責任は自分にあるんですね。だから、何かにつまずいたときは、自分をどう変えれば良くなるかと考え、自らを異質化してきました。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)p247より引用

 「背水の陣」と言うべき極限状況の中で、役員陣との議論を尊重しつつも最終決定権は自らが掌握し、その決断に対する責任を全うすることに徹しました。困難な道のりでしたが、これら一つひとつの決断が自信となり、ついには「己が因」と言える思い切った選択ができるようになりました。この「人生万事因己」を旨とした改革へのスタンスが、ついに会社を再建へと導いたのです。

人事として学ぶこと

 谷田氏の経験は、組織のリーダーとして直面する多くの挑戦に対して、実践的な教訓を提供しています。これらの教訓は、人事の領域においても非常に関連性が高く、組織運営や人材管理において重要な指針となります。以下で、谷田氏の経験を基に、人事としての私の観点から深く掘り下げてみます。

厳しい状況下でのリーダーシップ

 谷田氏が副社長に就任した時、会社は連続して赤字を記録しており、極めて困難な状況にありました。このような状況でリーダーシップを発揮するには、強い意志と、現状を改善するための具体的な計画が必要です。人事として組織内のリーダーシップを育成する際には、このような厳しい状況に直面した時にどのように対応すべきかを教育することが重要です。リーダーが困難な状況を乗り越える過程で示す行動や決断は、従業員にとって大きな学びとなり、組織全体のレジリエンスを高めることにつながります。

意見の多様性と組織内コミュニケーション

 谷田氏は、イエスマンだけを取り巻きにするのではなく、意見の多様性を尊重しました。これは、組織が革新的であるためには必要不可欠な要素です。人事管理においても、従業員が自由に意見を述べられる文化を育成することは、組織の成長にとって非常に重要です。意見の多様性を促進することで、問題解決のための新しい視点が提供され、より効果的な戦略が生み出されます。また、従業員が自身の意見が価値を持つと感じることで、エンゲージメントと満足度が高まります。

自己責任と継続的な自己改善

 「人生万事因己」という谷田氏の座右の銘は、自己責任と継続的な自己改善の重要性を教えています。人事としては、この考え方を従業員の成長と発展の文化に取り入れることが重要です。個々の従業員が自らのキャリアと成長に責任を持ち、自己改善のためのリソースやサポートを提供することで、組織全体の能力と効率が向上します。また、失敗を恐れずに新たな挑戦を続けることが、個人としても組織としても成長するための鍵であることを強調することが大切です。

組織文化と価値観

 谷田氏の経験からは、組織文化と価値観が如何に経営に影響を与えるかが伺えます。困難な状況下でも、彼の価値観と組織文化への深い理解が、会社を再建する上での基盤となりました。人事として組織文化を形成し、維持することは、組織のアイデンティティを形成し、従業員が共通の目標に向かって協力するための重要な要素です。組織の価値観を明確にし、それを日々の業務、評価、報酬システムに組み込むことで、強固な組織文化を築くことができます。

まとめ

 谷田大輔氏の言葉と経験は、組織運営と人事管理の多くの側面に深い洞察を与えています。リーダーシップの発揮、意見の多様性の尊重、自己責任と継続的な自己改善、組織文化と価値観の重要性は、どの組織にとっても成功の鍵です。これらの原則を組織運営に取り入れることで、どんな困難な状況でも乗り越え、持続可能な成長と発展を遂げることができるでしょう。人事としてこれらの価値を実践し、組織と従業員の両方が最大限に成長できるよう支援することが私たちの使命と思っています。

困難な企業再建の旅を象徴する、決意に満ちたエグゼクティブの瞬間を嵐のようなオフィス環境の中で描いています。エグゼクティブは大きな窓のそばに立ち、これからの不確かさと困難を象徴する暗く曇った空を見つめています。オフィスは、会社が直面している財務上の困難を示す紙やチャートでいっぱいです。背景には、「人生万事因己」というフレーズの伝統的な日本の巻物が掛かっており、動機づけと原則の灯台として機能しています。スタイルは柔らかく感動的であり、不屈の精神、献身、そして最終的にはより明るい未来への希望の気持ちを捉えています。


1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?