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【書籍】与える喜びがもたらす奇跡 ーコシノジュンコ氏の人生哲学

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp81「2月22日:与うるは受くるより幸いなり(コシノジュンコ デザイナー)」を取り上げたいと思います。

 ファッションデザイナーのコシノジュンコさんのインタビュー記事からは、彼女の豊かな人生経験とそこから得た学びが深く伝わってきます。

 特に印象的なのは、母親の遺した言葉「与うるは受くるより幸いなり」に対する解釈です。コシノさんは、この言葉を単なる「人に親切にしましょう」という教訓として捉えるのではなく、「与えることは、巡り巡って自分自身に返ってくる」という、より深い意味を見出しています。

だから、人に何かをしてあげることは、遠く回って、結局は自分のためになる。自分のためにやるのではなく、人のためにやると最終的には自分に返ってくるよ、ということを母は最期に私に伝えたかったのだと思います。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p81より引用

 この考え方は、彼女自身の経験にも裏打ちされています。ニューヨークで出会った方の息子さんの個展を自身のブティックで開催したエピソードは、まさに「与える」ことの力を示す好例です。個展を通じて、コシノさんは新たな人脈やチャンスを得ることができただけでなく、息子さんの才能を世に広める機会を提供することにも繋がりました。

コシノさんの人生哲学は、「かきくけこ」という言葉にも表れています。

  • か: 感謝の気持ちを持つこと。周りの人々や環境への感謝は、心を豊かにし、新たな出会いやチャンスを引き寄せます。

  • き: 希望を胸に抱くこと。困難な状況でも希望を失わず、前向きな姿勢を保つことは、成功への道を切り開く鍵となります。

  • く: くよくよしないこと。過去を悔やんだり、未来を不安に思うのではなく、今この瞬間を大切に生きることで、より充実した人生を送ることができます。

  • け: 健康を大切にすること。心身ともに健康であることは、仕事やプライベートを充実させるための基盤となります。

  • こ: 行動を起こすこと。どんなに素晴らしいアイデアや計画を持っていても、行動に移さなければ何も変わりません。勇気を持って一歩踏み出すことが、夢を実現するための第一歩です。

 これらの言葉は、コシノさんが長年にわたる活動の中で培ってきた、いわば人生の指針と言えるでしょう。彼女の人生経験とそこから得た学びは、私たちに多くの示唆を与えてくれます。

人事の視点で考えること

 コシノさんのインタビューは、単なる成功物語ではなく、その根底にある哲学や価値観が色濃く反映されており、人事の視点からも多くの示唆を引き出すことができます。

  1. 従業員エンゲージメントの向上
     
    コシノさんが大切にする「与うるは受くるより幸いなり」の精神は、従業員エンゲージメントを高めるための重要な鍵となります。従業員が自身の能力や経験を最大限に活かせるような機会を提供し、その貢献に対して適切な評価とフィードバックを行うことで、従業員は会社への愛着と貢献意欲を育むことができます。
     例えば、従業員が主体的にプロジェクトを企画・提案できる制度を導入したり、メンター制度を通じて経験豊富な社員が若手社員の成長をサポートする機会を設けたりすることで、従業員は「与える」喜びを実感し、会社への貢献意欲を高めることができるでしょう。

  2. 人材育成の重要性
     
    コシノさんの「かきくけこ」の言葉は、人材育成における重要な指針となります。「感謝」の気持ちを持つことで、周囲の人々や環境への感謝の念が生まれ、より良い人間関係を築くことができます。「希望」を持つことで、困難な状況にも立ち向かう力を養い、成長への意欲を高めることができます。「くよくよしない」ことで、過去の失敗にとらわれず、未来への展望を持つことができます。「健康」を意識することで、心身ともに健全な状態で仕事に取り組むことができ、パフォーマンスの向上に繋がります。「行動」を起こすことで、自身の可能性を広げ、新たな挑戦へと踏み出すことができます。これらの要素をバランス良く育成するための研修プログラムやキャリアパス設計を行うことで、従業員の能力開発を促進し、組織全体の成長に貢献することができます。

  3. リーダーシップの在り方
     
    コシノさんのリーダーシップは、従業員に「与える」ことの重要性を体現しています。リーダーが自身の知識や経験、そしてビジョンを積極的に共有し、従業員の成長を支援することで、従業員はリーダーへの信頼感を深め、より積極的にリーダーシップに従うようになります。
     例えば、定期的な1on1ミーティングを通じて、従業員の悩みや課題を共有し、具体的なアドバイスや解決策を提示したり、リーダー自身の成功体験や失敗談を共有することで、従業員はリーダーへの共感を深め、より強い信頼関係を築くことができます。このようなリーダーシップは、従業員のモチベーションを高め、組織全体の活性化に繋がります。

 コシノさんの言葉や行動は、人事にとって、従業員エンゲージメントの向上、人材育成、リーダーシップの在り方など、多岐にわたる示唆を与えてくれます。これらの示唆を参考に、従業員が最大限に能力を発揮できるような環境を整備し、組織全体の成長を促進していくことが、人事の重要な役割でしょう。

ファッションデザイナーが母親の言葉「与うるは受くるより幸いなり」にインスパイアされている様子が描かれています。デザイナーは彼女のスタジオで、スケッチや生地、完成したデザインに囲まれ、静かで思索的な表情をしています。背景にはエレガントな服がディスプレイされた美しいブティックが見え、温かみのある照明が生地の豊かさとスケッチの創造性を引き立てています。このシーンは、感謝、希望、与える喜びの本質を見事に捉えています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。

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