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【書籍】「努力と人間性の融合」-鳥羽博道氏の成功物語と人事への応用
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp254「8月5日:努力にも段位がある(鳥羽博道 ドトールコーヒー名誉会長)」を取り上げたいと思います。
鳥羽氏は、自己の事業と人生を振り返り、成功の背後にある哲学を語っています。鳥羽氏が強調するのは、自分自身の欲望を抑え、見返りを期待せずに仕事に没頭することの重要性です。彼はこの精神を持って多くの困難を乗り越え、数々のチャンスを掴んできました。彼の人生は、高校を中退し上京した若き日々から始まり、その後ブラジルへと渡りコーヒー農園で働くという、決して平坦ではない道のりでした。しかし、それぞれの経験が彼のキャリアにおいて重要な転機となり、結果として大きな成功につながっています。
特に印象的なのは、鳥羽氏が若い頃に体験した二つのエピソードです。一つ目は、ブラジルへの渡航前に勤めていた日本のコーヒー卸会社の社長から、帰国を促す電話がかかってきたこと。この社長は、鳥羽氏がブラジルで得た経験を高く評価し、彼の帰国のために船賃を全額負担すると申し出ました。二つ目は、ドトールコーヒーの立ち上げ時に資金調達のために大手総合商社の担当者に相談したところ、彼が自ら会社を説得し、必要な資金を貸し出す手続きを取り決めてくれたことです。これらのエピソードからは、鳥羽氏が持つ真摯な姿勢と人を惹きつける人間性がうかがえます。
鳥羽氏は、努力の重要性を認識しつつも、単に努力するだけではなく、その質を高める必要があると語っています。「努力にも段位がある」という彼の言葉は、自分がどれだけ努力していると感じても、それが必ずしも最大限の努力であるとは限らないことを示しています。彼は、商売がうまくいかないと嘆く人々に対し、さらに高いレベルの努力、すなわち「八段」の努力をすることで初めて成功に近づけるとアドバイスしています。
僕は「努力にも段位がある」という話をするんです。 「あなたはいま自分の精いっぱいの努力をしてると思うかもしれないけど僕から見たらまだ五段だ。少なくとも八段まで行かないと名人とは言わないように、八段の努力をしないと商売はうまくいきませんよ」って。ただ八段の努力をしてるだけではダメで、人間性が大事なんでしょうね。一所懸命やればこうなるっていう期待や打算があってはいけない。無心でなきゃいけない。それが人生を展開していく大きな鍵になるんだと思います。
また、鳥羽氏は人間性の重要性にも言及しています。成功への道は、ただ努力を積み重ねるだけでなく、その過程での人間性の成長が不可欠であると強調しています。目標達成のための期待や打算を持たず、無心で取り組むことが、人生を豊かに展開させる鍵であると語ります。これらの教訓は、ビジネスだけでなく人生のあらゆる面で応用可能であり、鳥羽氏の成功物語は多くの人にとって大きなヒントとなるでしょう。彼の経験からは、挑戦と失敗を恐れず、常に前向きに努力し続けること、そして何よりも自己の内面を磨き続けることの重要性が伝わってきます。
鳥羽氏の生き方を人事としてどのように活かすか
鳥羽氏の経歴とその哲学から学べる人事戦略について詳細に掘り下げていくと、組織の人材開発、リーダーシップ育成、文化形成における深い洞察を得ることができます。鳥羽氏の言葉を基に、現代の企業における人事の役割とその戦略的な重要性を探求します。
1. 無私の姿勢と組織への献身
鳥羽氏が強調する「我欲がなかったから」という無私の姿勢は、個人が自己中心的な目標を超えて組織のために働くことの価値を示唆しています。人事管理の観点からは、このような姿勢を社員に促すことで、組織全体の目標達成に向けた協力と連携が強化されます。具体的には、社員が自己の成長を組織の成長と密接に関連づけるような人事制度の設計が求められます。例えば、個人の成果だけでなく、チームや組織全体の目標達成に対する貢献度を評価する指標を設けることで、個人主義ではなく協調性と献身性を重んじる文化を育むことができるでしょう。
2. 努力の質と深さの重要性
「努力にも段位がある」という考え方は、目標達成に向けた取り組みの質が成功を左右することを意味します。人事管理においては、社員が高いレベルの努力を継続的に行えるよう支援する体制が必要です。これには、社員一人ひとりのモチベーションを理解し、個々の能力と興味に合わせた目標設定が効果的です。また、定期的なフィードバックとキャリアアドバイジングを通じて、社員が自己の成長を実感できる環境を整えることが、努力の質を高める上で重要です。
3. 無心での取り組みと人間性
鳥羽氏が述べる「無心でなきゃいけない」というメッセージは、仕事に対する真摯な姿勢と人間性の大切さを強調しています。人事戦略においては、社員が自分の仕事に情熱を持ち、個人的な成長と組織への貢献を同時に追求できるような環境作りが求められます。このためには、仕事の意義を感じられるような役割分担、適切な報酬体系、そして社員の健康と幸福を支援する福利厚生が不可欠です。また、個々の社員が持つ多様性を尊重し、それぞれが自身の能力を最大限に発揮できるような多様性と包摂性に富んだ職場環境の構築も重要です。
4. 長期的な視点の持続性
最後に、鳥羽氏の経歴からは、目先の利益を追求するのではなく、長期的な視野を持って取り組むことの重要性が浮かび上がります。人事戦略においては、短期的な成果だけでなく、長期的な組織の成長と持続可能性を見据えた計画が求められます。これには、未来のリーダーを育成するためのリーダーシップ開発プログラムや、変化する市場や業界の動向に対応できるよう社員のスキルアップを支援する教育・研修の提供が含まれます。
まとめ
鳥羽氏の言葉と経験は、単にビジネスの成功に留まらず、組織と個人がどのように成長し続けることができるかについての深い洞察を提供します。これらの教訓は、人事のプロフェッショナルが直面する様々な課題に対するアプローチ方法を考える際に、有益な指針を与えてくれるでしょう。
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鳥羽氏の人生と事業における哲学を象徴的に描いたものです。彼の若き日々からコーヒー農園での働きまで、そして成功への長い道のりが暖かく柔らかな色使いで表現されています。彼が過去を振り返りながらも前を向いている姿勢は、挑戦と失敗を恐れずに前進し続けることの大切さを教えてくれます。また、この画像は、無私無欲で仕事に取り組むことの重要性と、人間性の成長が成功への鍵であることを示唆しています。ビジネスだけでなく人生においても、これらの教訓は多くの人々にとって価値ある指針となるでしょう。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。