【書籍】継続的成長の芸術ー藤沢秀行からの謙虚さと終生学習の教訓
『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)のp334「10月21日:伸びてくる人の共通点(藤沢秀行 囲碁九段・名誉棋聖)」を取り上げたいと思います。
藤沢秀行九段の言葉からは、成長し続ける人の特徴として「謙虚さ」と「絶え間ない学び」が挙げられています。彼は、自分が何も知らないと認識することから始まり、それが謙虚さを育て、物事の本質を見抜く力につながると説いています。例えば、囲碁の対局を通じて、初心者から学び、自己の未熟さを認識し続けることの重要性を強調しています。最善手を見出せないことは、上手い下手を問わず共通しており、どんな対手であろうと全力で向き合うべきだと述べています。
また、藤沢氏は人は常に進化し続けるべきであり、わずかな時間が経過しても、目をこすってでもその変化を確認するべきだという中国の古典を引用しています。
さらに、伸びていく人は常に発奮し続けるエネルギーを持っているとし、例として名人の小林光一が電車の中で棋譜を熱心に研究している様子を紹介し、一流の人は自らの未熟さを知り、常に学び続ける姿勢が他の人との差を生むと述べています。
藤沢氏の言葉は、自己成長への道は自己認識と謙虚さから始まり、常に学び、自己改善に努めることで、進歩していくことを教えてくれます。
<人事の立場から考えること>
藤沢氏の言葉には、人事管理の観点からも多くの示唆を受けることができます。氏が述べる「伸びてくる人の共通点」は、企業内でのタレントマネジメントや人材開発において重要な要素を含んでいます。
まず、自己の無知を認識し、そこから謙虚さを学ぶという点は、組織内での学習文化の構築に不可欠です。組織が成長し、イノベーションを促進するためには、個々の従業員が自らの限界を知りながらも、常に成長しようとする意欲が必要です。この精神は、組織開発やパフォーマンスマネジメントにおいても、「成長マインドセット」として重要視されます。
また、「三歳の童子たりとも導師たり」という言葉は、多様性とインクルージョンの観点からも深く考えさせられます。あらゆるレベル、あらゆる背景を持つ従業員から学ぶことができるという考え方は、組織内のコミュニケーションや協働を促進し、創造的なアイデアや解決策を引き出す可能性を高めます。リーダーや上級管理者も、部下や新入社員から学ぶ姿勢を持つことで、組織内の教育や人材育成の文化を強化することができます。
藤沢氏の言及する「伸びてくる人間は発奮するエネルギーがすごい」という点は、タレントマネジメントの観点から見ても核心を突いています。こうした人材を見極め、適切に育成し、適切な位置に配置することは、組織の成功に直接的に寄与します。一流とされる人が常に学び続ける姿勢は、組織内でのベンチマークとなり、他の従業員にもポジティブな影響があります。
人事としては、これらの価値観や行動様式を推進し、サポートするシステムやプログラムを設計し、実施する責任を持ちます。これには、効果的なパフォーマンスマネジメントシステム、継続的な学習と成長を支援する教育プログラム、多様性と包摂性を促進するイニシアティブ、そして従業員のエンゲージメントとモチベーションを高める報酬と福利厚生の提供などが考えられます。
藤沢氏の考え方は、単に囲碁や個人の成長に関わるものではなく、組織全体の成長と発展にも深く関係します。人事に従事する者として、これらの教訓を組織内のさまざまなプロセスやシステムに組み込むことで、持続可能な成長と組織の成功に関与していきたいものです。
静かで学びと成長の続く情景が描かれています。伝統的な日本の囲碁盤が、戦略と継続的な向上を象徴して中央に置かれ、その前景には開かれた本が置かれ、絶え間ない学びの重要性を示唆しています。柔らかな光がシーンを照らし、温かく招き入れる雰囲気を作り出しています。成長と発展を象徴する豊かな木が、ゲームに向かって微妙に曲がり、その葉が盤面に向かって優しく漂っています。全体の雰囲気は落ち着いており、自己改善の旅における一貫した努力と謙虚さの美しさに焦点を当てています。
1日1話、「生き方」のバイブルとなるような滋味に富む感動実話を中心に365篇収録されています。素晴らしい書籍です。
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