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【書籍】ゼロから始める資金管理術と起業家マインドー今井孝氏

 2024/9/21に開かれた、樺沢紫苑氏Web心理塾のセミナー「今から準備する! 「複業・起業マインド」セミナー」に登壇されていた、今井孝さんの『ゼロからいくらでも生み出せる! 起業1年目のお金の教科書』(かんき出版、2017年)を拝読しました。

 セミナーでも取り上げられていましたが、起業や副業において、方法論も大切ですが、「マインド」の部分もまた重要になります。その点を確認するのにも参考になる点が多かったです。内容を考察してみます。

1. 起業時におけるお金の管理と不安に対するアプローチ

 起業を考える際、多くの人が最初に直面するのは「お金に関する不安」です。この問題に対する考え方や準備が不足していると、早期に失敗するリスクも高くなります。著者が頻繁に受ける質問として、「開業資金はいくらかかるのか?」、「どのように借金をして事業を始めるべきか?」、「初期投資の適切な額はいくらなのか?」、「どのようなプロセスで価格設定をするべきか?」など、多くの人が事業の初期段階で直面する課題が挙げられています。

 これに対して今井氏は、資金や初期費用に関する具体的な答えは一つではなく、ビジネスの種類、規模、地域、時期によって異なるため、一般的な解決策は存在しないとしています。

 しかし、どんなビジネスであっても共通して大切なのは、お金の出入りをしっかりと管理し、収入が支出を上回るようにすることであると説明しています。これがビジネスの最も基本的であり、最も重要な原則であると述べています。この原則を理解し、冷静に対応できれば、大きな経済的損失や事業の崩壊を防ぐことが可能となり、持続的に事業を運営していくことができるとされています。

2. お金が感情に与える影響とそれを克服する方法

 次に重要なのは、お金が私たちの感情にどれほど強い影響を与えるかという点です。今井氏は、「お金は感情に直結しており、それが冷静な判断を妨げる原因になる」としています。
 例えば、事業を始める際に必要な投資に対して過剰な恐怖心を抱くと、本来は投資すべきチャンスを逃してしまうことが少なくありません。逆に、お金に対する無頓着さが原因で、必要のないものに多額の投資をしてしまい、後悔することもあります。また、人はお金に関して家族や友人、周りの人々の反応や期待を過剰に気にしてしまうことがあり、結果として本来のビジネス的な判断ができなくなるというケースも珍しくありません。特に起業1年目の段階では、お金に関する感情の動きが非常に大きな影響を持つため、こうした感情をうまくコントロールできるようになることが成功の鍵を握ります。著者は、感情を冷静に保ちつつ、的確な投資判断ができるようになることの重要性を繰り返し述べています。

3. 起業1年目に必要な心構えと実践的アプローチ

 起業において特に大切なのは、「お金を生み出す」という行為が単なる物品やサービスの提供以上のものであり、「欲求を生み出す」ことと同義であるという点を理解することです。この概念をしっかりと理解し、自分の中で落とし込むことができれば、起業家としてお金を稼ぐための道筋が明確になり、お金に対する恐怖心や不安をコントロールする力が身につくと説明されています。

 今井氏は、起業に関する理論や手法だけではなく、起業家のメンタル面にも焦点を当てており、お金との向き合い方についての心構えが重要だと述べています。多くの人が起業に際して感じるお金に対する不安や恐れを、どのようにしてコントロールし、冷静な判断を下すかがビジネス成功のために不可欠です。この本では、理屈だけではなく、実際の行動や思考のプロセスにおいても、どのようにして感情を整理し、お金との関わり方を見直すべきかを丁寧に解説しています。

4. お金をかけずにできることは無限にある

 起業初期の段階では、しばしば「資金が足りない」という問題が最も大きな課題とされます。多くの起業家が資金不足に悩み、十分な資金がなければ何も始められないと考えることが一般的ですが、今井氏はこれに対して明確に異議を唱えています。実際には、お金がなくてもできることが無数にあるとしています。
 例えば、カフェを開業したいと考えている人が「資金がないので何もできない」と言った場合、著者は次のように問いかけます。「もしあなたに今日、1千万円の資金を提供したら、何をしますか?」と。この質問に対して、多くの人は「まず市場調査をします」と答えるでしょう。
 しかし、著者は市場調査はお金がなくても今すぐにでもできることだと指摘します。このように、お金がなくてもできることはたくさんあり、それに取り組むことで準備を進めることができるのです。さらに、オフィスや店舗を設ける際にも、初期投資を最小限に抑える方法が数多くあると説明されています。
 例えば、ウェブサイトを作る場合でも、最初は無料のサービスを利用することができますし、オフィスも自宅で十分対応できるケースが多いです。特に飲食店を始める場合、レンタルスペースを活用することで、コストを抑えつつ実験的にビジネスを進めることが可能です。このように、最初から多額の投資を避け、必要最小限のコストで最大の成果を狙うことが、起業1年目の成功の秘訣だとしています。

5. ビジネスの本質は「価値」と「顧客」の創造

 ビジネスの本質とは何か? それは「価値を創造すること」と「顧客を創造すること」であるとしています。これ以外の事務的な手続きや手配は、ビジネスの本質とは無関係であり、後から対応できる部分です。

 例えば、起業する際に税務署への届出や法人化の手続きが必要ですが、これらは事業が軌道に乗ってからでも十分に対応可能であると説明されています。特に起業1年目では、売上を立てることが最優先事項であり、書類作成や法的手続きに多くの時間を費やすことは、ビジネスの本質から外れてしまうと指摘されています。最低限の手続きは守りつつも、ビジネスの本質である「価値の提供」に最大限のエネルギーを注ぐことが成功の鍵であり、売上を上げることができれば、後から手続きに取り組んでも遅くはありません。これは特に起業1年目にありがちな問題であり、書類や法的手続きにばかり注意を払い、本来のビジネス活動がおろそかになることを防ぐためのアドバイスです。今井氏は、ビジネスにおいて本当に重要なことは非常に少なく、複雑に見えるプロセスも実際にはシンプルであると強調しています。ここは、上記セミナーでも話題にされていました。

6. 価格設定と「相場」に縛られない価値の見出し方

 起業をする際に多くの人が悩むのが、価格設定(プライシング)です。商品やサービスの価格をどのように決めるべきかという問題は、ビジネスの成否に大きく影響します。特に起業1年目の段階では、適切な価格を設定することが難しく感じることが多く、「相場」を基準に価格を決めようとする傾向があります。
 しかし、今井氏は「相場」だけに依存して価格を決めるのは間違いであり、むしろ顧客にとっての価値を基準に価格を設定すべきだと述べています。相場はあくまで目安であり、それを超える価格であっても顧客が満足すれば問題ありません。
 例えば、宝くじが当選した場合、その宝くじを銀行に持って行くためにタクシーを利用する際の価値は、通常のタクシー運賃以上の価値を持つかもしれません。このように、価値は顧客が感じるものであり、その価値に基づいて価格を設定することが、ビジネスの成功には欠かせないとされています。また、価格設定を通じて、自分のビジネスが提供する価値を再確認し、顧客の立場に立った思考を重視することが重要です。

 今井氏は起業1年目におけるお金の扱い方や価格設定、そしてビジネスにおける感情のコントロールの重要性を強調しています。特に、ビジネスにおいてはお金が単なる数値以上の存在であり、感情や判断力に大きな影響を与えることを理解し、それに対する適切な対応策を持つことが、長期的な成功につながるとのことです。先般のセミナーの内容をさらに深掘りできた内容でした。私も人事支援を行っていますが、改めて原点に戻ることができました。

起業初期の段階でお金の管理や不安を乗り越える姿を描いています。起業家がデスクで資料を確認しながら、ノートやパソコンを使ってビジネス戦略を練っている様子が伝わります。温かい照明と淡いベージュやブルーの色調が、落ち着いた雰囲気を醸し出し、集中と決意を表現しています。背後のインスピレーションを与えるポスターも、前向きな心構えを示しています。



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