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【書籍】成功へ導く脳のベクトルー目的意識ある思考の力ー加藤俊徳氏

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp332「10月19日:脳にベクトルを持つ(加藤俊徳 「脳の学校」代表取締役・医師・医学博士)」を取り上げたいと思います。

 ここでは、個々の人生を通じて脳をどのように変化させ、成長させるかについての洞察を提供します。加藤氏は、脳に「ベクトル」を持つことの重要性を強調しており、これが個人の成長と成功に直接的な影響を与えると説明しています。

 加藤氏は、人間が得意な「脳番地」を使って物事を考える傾向があると述べています。脳番地とは、脳の中で特定の情報処理を担当する部位のことを指し、それぞれの人が得意とする思考のスタイルや能力に対応しています。明確な目標を持つことにより、これらの脳番地が活性化され、結果としてその人の思考や行動がより目標指向になると解説しています。具体的に、強い目的意識を持ち、それに向かって突き進む人は、脳が活性化され、成功を手に入れやすくなると述べています。

 一方で、目標がなく漫然と日々を過ごす人々は、脳に明確なベクトルが存在しないために、思考が定まらず、人間的な魅力や成長の面で劣る可能性があると警告しています。目標を設定することで、個人が直面する問題や課題に対して、より効果的に対処できるようになり、また新たなスキルを習得する機会も増えると説いています。

強い目的を持ってまっしぐらに進んでいく人の脳が著しく活性化され、成功を掴むことができるのは、脳の観点からも得心できるのです。逆に、漫然と人生を過ごしている人は、脳にベクトルがないために思考の視点が定まりません。人間的にも魅力的な特徴に乏しく、飛躍的な成長もあまり期待できないと思います。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p332より引用

 さらに、目標が見つからない場合の対処法として、尊敬する人物や目標とする存在をイメージし、その人物を追い越そうとする努力をすることが有効であると助言しています。このプロセス自体が脳に明確な方向を示し、モチベーションの源となると述べています。

 また、社会と積極的に関わることの重要性も強調しています。社会的な交流や活動に参加することで、多様な脳番地を使うことになり、脳の柔軟性が保たれると説明しています。社会との接点は、人間を精神的にも知的にも豊かにすると同時に、脳の健康を維持する上で効果的な手段であるとしています。

 定年については、社会が設けるものであり、脳には存在しないと主張しています。彼は、定年が来ることによってこれまで日常的に使っていた脳の領域が使われなくなり、それによって脳の衰退が進むと警告しています。そのため、定年後も社会と関わり続けることが脳の活性化につながると述べ、定年後の生活においても新しいことに挑戦し続けることの重要性を説いています。

 これらのポイントを通じて、加藤氏は脳の持続的な成長と活性化が個人の充実した人生に不可欠であると結論づけています。彼の理論は、脳科学の知見を生活全般に応用する方法を提案しており、読者にとって実用的なガイドラインを提供する一方で、科学的な根拠に基づいたアプローチを強調しています。

人事の視点から考えること

 加藤氏が述べる「脳にベクトルを持つ」という概念は、個人の成長と成功のために極めて重要な考え方です。これは個人だけでなく、組織全体にとっても重要なポイントであり、特に人事戦略を考える上で、この考え方をどう取り入れるかが鍵となります。

企業の人事戦略と脳の活性化

 企業の人事部門が、従業員の能力開発やモチベーション向上を目指す際に、明確な目標設定は必要不可欠です。それぞれの従業員に適切なキャリアの目標を設定し、それに向けた具体的な行動計画を支援することが求められます。これは従業員一人ひとりの「脳番地」、つまり得意とする思考や行動のパターンを最大限に活用し、個々の能力をフルに発揮させるために重要です。

1. 目標設定の具体化

 目標設定において重要なのは、個々の従業員が実感できる、具体的かつ達成可能な短期および長期の目標を持つことです。これにより、従業員は自分の仕事の意義を理解しやすくなり、モチベーションの向上が見込まれます。SMART原則を応用した目標設定は、明確で測定可能、かつ適切な時間軸で設定されるべきです。

2. 継続的な学習機会の提供

 継続的な学習は脳の新しいエリアを刺激し、個人の成長を促します。これにはオンラインコース、社内研修、外部セミナーへの参加など、多様な方法が考えられます。組織がこれを支援することで、従業員が新しい知識とスキルを獲得し、自己の専門性を高めることができます。

3. 定期的なフィードバックとコーチング

 フィードバックは従業員が自身のパフォーマンスを理解し、必要な改善点を認識する上で不可欠です。コーチングにより、従業員は目標に向かう過程での課題を乗り越える手助けを受けることができます。これは自己認識を深め、脳の自己調整機能を強化する効果があります。

4. キャリアパスの明確化

 明確なキャリアパスを提供することで、従業員は自身の将来を具体的に描くことが可能になります。これにより、職業的な目標に対する取り組みが活性化され、組織全体のパフォーマンス向上に寄与します。キャリアパスは従業員の能力、興味、そして企業の需要を考慮して設計されるべきでしょう。

定年後のキャリア継続と脳の活性化

 加藤氏は、定年後も脳を活性化し続けることの重要性を強調しています。企業としては、定年を迎える従業員がその知識と経験を生かし続けられるよう、適切なプラットフォームを提供することが重要です。例えば、シニアのアドバイザーとして若手のメンタリングを行う制度や、定年後もプロジェクトベースで働けるようなフレキシブルな働き方をサポートすることが考えられます。

 その意味で、私は定年には断固NOを言いたいのです。脳には定年がありません。社会が定年を決めているだけです。脳の見地から言えば、定年はいままでやってきた脳の使い方から離脱することと言えます。
 それまでは、会社に行くだけで、それに必要な脳番地が働き、脳が鍛えられていました。会社を辞めると、それが全く使われなくなります。楽になったと思うのはわずかな間で、しばらくすると、それまで簡単にできていたこと、得意だったことがうまくできなくなり、その状態を放っておくと、数年で惚けてくるのです。

 定年で会社から離れ、社会的な活動が激減した人が、それまで以上に脳を使うことは大変なことです。定年後も脳の伸びるエネルギーを維持していくためには、それなりの工夫と努力が必要になってきます。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p332より引用

神経科学者のオフィスでの瞑想的な瞬間を描いた横長の絵画です。このシーンでは、神経科学者が脳の模型をじっと考えながら見つめている様子が、本に囲まれた柔らかく光る部屋の中で表現されています。この静謐で内省的な作品は、脳の機能と個人の成長との深いつながりを強調しています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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