見出し画像

【書籍】限界を越える意志:安藤忠雄氏に見る挑戦の大切さ

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp50「1月23日:一度は死に物狂いで物事に打ち込んでみる(安藤忠雄 建築家)」を取り上げたいと思います。

 安藤忠雄氏は、1941年大阪の商人の家庭に生まれました。幼少期は、戦後の混乱期で経済的な困難を経験し、住まいも決して恵まれたものではありませんでした。学業成績も決して優秀ではなく、大学進学は叶いませんでした。しかし、彼は幼少期から建築に興味を持ち、独学で建築の道を志しました。

 中学時代、自宅を二階建てに改築する際に、昼夜を問わず働く大工の姿に感銘を受け、建築への思いを強くしました。また、情熱的な数学教師の影響で数学への興味も深まり、建築と数学の接点を見出しました。この経験が、彼の人生におけるターニングポイントとなりました。

 高校卒業後、プロボクサーとして生計を立てようとしましたが、後に世界チャンピオンとなるファイティング原田の圧倒的な強さを目の当たりにし、自分の才能の限界を悟り、ボクシングを諦めました。しかし、この経験を通じて、目標に向かって努力することの大切さ、そして自分の限界を知ることの重要性を学びました。

 その後、建築への情熱を再燃させ、昼はアルバイト、夜は建築の専門書を読み漁る生活を送りました。大学で建築を学ぶ学生が4年かけて学ぶ内容を、わずか1年で習得するという驚異的な集中力と努力を見せました。この経験は、彼の建築家としての基礎を築く上で非常に重要なものでした。

 建築士資格取得を目指し、猛勉強の末、一級建築士試験に見事合格。その後、独学で培った知識と経験を活かし、数々の独創的な建築物を設計し、世界的に高い評価を得る建築家となりました。彼の建築は、コンクリート打ちっぱなしのシンプルで力強いデザインが特徴で、「光の教会」はその代表的な作品の一つです。自然光を効果的に取り入れたデザインは、訪れる人々に深い感動を与えます。

 安藤氏は、自身の経験を通して、強い意志とたゆまぬ努力があれば、どんな困難も乗り越え、夢を実現できることを証明しました。彼の挑戦的な生き方と独創的な建築は、多くの人々に希望と勇気を与え続けています。彼の作品は、建築という枠組みを超えて、人間の可能性や生きる意味を問いかけるものであり、今後も多くの人々に影響を与え続けるでしょう。

「安藤は頭がおかしくなったんか」と冷たい視線を向けられたりもしましたが、おかげで両方とも一発で合格することができたんです。若い頃に、一度は死に物狂いで物事に打ち込んでみることが必要です。目標を定めたら何が何でも達成するんだという意志を持たないと。独学であっても強い覚悟と実行さえあれば道は開ける。これは私の実感であり、体験を通して掴んだ一つの法則です。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p50より引用

人事の視点から考えること

 安藤氏の型破りな経歴と、独学で世界的な建築家へと上り詰めた成功譚は、現代の人事戦略において多くの示唆を与えます。

学歴や職歴にとらわれないポテンシャル採用と育成

 安藤氏は、大学で建築を学んだわけではありません。しかし、彼は建築への情熱と独学の努力によって、そのハンディキャップを乗り越えました。このことから、人事担当者は、従来の学歴や職歴といったフィルターだけでなく、個人の持つ潜在能力、情熱、学習意欲、そして目標達成に向けた強い意志を重視する「ポテンシャル採用」の重要性を再認識すべきです。

 例えば、採用面接において、過去の経験やスキルだけでなく、応募者が何に情熱を燃やし、将来どのような目標を達成したいのか、そのためにどのような努力を惜しまないかといった点に着目することで、安藤氏のような「原石」を発掘できる可能性が高まります。

 また、入社後の育成においても、画一的な研修プログラムだけでなく、個人の興味や関心、強みに合わせた育成プランを提供することが重要です。社員が自発的に学び、成長できる環境を整えることで、安藤氏のように独学で能力を伸ばした人材を育成できる可能性があります。メンター制度や社内勉強会、外部研修への参加支援など、社員の自主的な学習を後押しする制度を導入することも有効です。

挑戦を奨励し、失敗から学ぶ組織文化の醸成

 安藤氏は、プロボクサーへの挑戦や建築の独学など、常に新しいことに挑戦し、失敗から多くのことを学びました。企業においても、社員が新しいことに挑戦し、たとえ失敗してもそこから学びを得て成長できるような組織文化を醸成することが重要です。

 例えば、新規事業提案制度や社内コンテストなどを実施し、社員が自らのアイデアを形にする機会を提供することで、挑戦意欲を喚起することができます。また、失敗事例を共有する場を設け、失敗を責めるのではなく、そこから何を学んだのかを議論することで、失敗を成長の糧とする文化を根付かせることができます。

 さらに、上司や同僚が互いにフィードバックを交換し、建設的な議論を交わすことができるような風土を醸成することも重要です。このようなオープンなコミュニケーションは、社員が安心して挑戦できる環境を作り、組織全体の学習能力を高めることにつながります。

目標設定と達成意欲を重視する人事評価制度の構築

 安藤氏は、常に明確な目標を設定し、それを達成するために死に物狂いで努力しました。目標設定と達成意欲は、個人のパフォーマンス向上に不可欠な要素です。人事担当者は、社員が自身のキャリア目標を明確にし、それを達成するための具体的な計画を立てることができるよう、定期的な面談やキャリアカウンセリングなどを通して支援することが求められます。

 また、目標達成に向けた努力を正当に評価し、適切な報酬や昇進といった形で報いる人事評価制度を構築することも重要です。目標達成度だけでなく、その過程における努力や工夫、チームへの貢献度なども評価することで、社員のモチベーションを維持・向上させることができます。

 さらに、目標達成を阻む障壁を取り除き、必要な資源やサポートを提供することも人事の重要な役割です。社員が安心して目標達成に集中できる環境を整えることで、組織全体の生産性向上にもつながります。

 安藤氏の経験は、人事担当者にとって、従来の採用・育成の枠組みを超えて、個人のポテンシャルを最大限に引き出すための新たな視点とアプローチを考えるきっかけとなるでしょう。彼の挑戦的な生き方と独創的な建築は、人事戦略においても多くの示唆を与えてくれます。

安藤忠雄氏の人生の旅路と業績のイメージです。左側には、大工の働きに感銘を受ける若き日の安藤氏が描かれています。中央には、ボクサーとしての限界を悟りつつも、努力の重要性を学ぶ彼の姿が見られます。右側には、成功した建築家としての彼が、代表作「光の教会」を背景に立っており、ミニマリストのコンクリート構造と自然光の演出が強調されています。この画像は、安藤氏の感動的で挑戦的な人生を、柔らかな色調で描き出しています。








1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




いいなと思ったら応援しよう!