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【書籍】勝負よりも芸を磨け:藤沢秀行氏の仕事哲学

 『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp63「2月4日:勝負にこだわるな、芸を磨け(藤沢秀行 囲碁九段・名誉棋聖)」を取り上げたいと思います。

 藤沢氏について以前、『1日1話、読めば心が熱くなる365人の生き方の教科書』(致知出版社、2022年)の内容にても取り上げましたが、今度は「仕事」という観点で考えてみたいと思います。

 藤沢氏は、囲碁の世界で数々のタイトルを獲得した名棋士です。彼は、波乱万丈の人生経験を積み重ね、人間としての厚みを深めてきました。若い頃は酒やギャンブルに溺れた時期もありましたが、その後、名人のタイトルを獲得し、がんとの闘病も経験しました。

 藤沢氏は、勝負にこだわるのではなく、「芸を磨く」ことの重要性を説いています。囲碁は単なる勝負事ではなく、その人の個性や人生経験が反映される「芸」であると捉えています。盤上の361路に、自分の人生を表現する。そのために必要なのは、目先の勝ち負けにとらわれず、ひたすら芸を磨くことだと強調しています。

 この考え方は、囲碁の世界だけでなく、人生にも通じるところがあります。何かに挑戦する時、結果ばかりを気にして焦るのではなく、自分の技術や能力を磨き続けることが大切です。そうすれば、自然と良い結果がついてくるはずです。藤沢氏は、若い人たちにも「目先の勝負にこだわるな、まず芸を磨け」と繰り返し伝えています。

 また、藤沢氏は、勝敗に一喜一憂する必要はないとも述べています。負けたとしても、それは自分の芸が未熟だったからであり、相手の芸が勝っていただけだと考えるのです。勝ち負けは、芸の成熟度を測る指標であり、勝つためには、さらに芸を磨く努力をするしかないのです。

勝負は芸のもたらす結果だと考えると、勝ち負けに一喜一憂する必要はなくなる。負けるのは自分の芸が未熟だからであり、相手の芸が勝っていたという以外にはない。強い弱いというのはそのことで、芸が相手より勝っているか劣っているかです。では、勝ちたかったらどうするか。目先の勝ち負けを離れ、相手に勝る努力をして芸を磨く以外にはない、ということです。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p63より引用

 このように、藤沢氏の言葉は、囲碁だけでなく、人生における成功哲学としても深く響くものがあります。彼のメッセージは、何かに打ち込むすべての人にとって、大切な教訓となるでしょう。

人事の視点から考えること


 藤沢氏の言葉は、人材育成や組織文化の構築において、示唆に富む教訓を与えてくれます。

 まず、「芸を磨く」という考え方は、社員一人ひとりの能力開発を重視する姿勢を表しています。目先の成果に焦点を当てるのではなく、長期的な成長を促すためには、個々のスキルや知識を深めるための継続的な学習機会を提供することが重要です。研修制度の充実や、自己啓発を支援する環境づくりなどが考えられます。

 次に、「厚みのある生き方」という言葉は、人間としての成長を促す組織文化の重要性を示唆しています。社員が仕事を通じて、人間的に成長できるような環境を整えることは、組織全体の活性化につながります。多様な価値観を受け入れる風土を醸成したり、社員同士が互いに学び合えるようなコミュニケーションを促進したりすることが大切です。

 さらに、「勝負にこだわるな」という言葉は、結果だけでなく、プロセスを評価する人事評価制度の重要性を示唆しています。短期的な成果だけでなく、日々の努力や成長を評価することで、社員のモチベーション向上やエンゲージメント強化につながります。また、失敗を恐れずに挑戦できるような心理的安全性を確保することも重要です。

 藤沢氏の言葉は、人材育成において、長期的な視点で個人の成長を支援すること、そして、人間としての成長を促す組織文化を構築することの重要性を教えてくれます。これらの教訓を踏まえ、人事担当者は、社員一人ひとりが「芸を磨き」、組織全体が「厚み」を増していくような環境づくりを目指すべきです。

背景には囲碁盤があり、黒と白の石が配置されています。穏やかで思慮深い表情を浮かべ、囲碁に集中している姿が描かれています。周囲には静かな庭園や伝統的な日本の部屋があり、彼の人生経験をさりげなく示唆しています。柔らかい色合いと静かな雰囲気が、勝ち負けではなく技術や個人の成長を大切にするというメッセージを強調しています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。

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