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【書籍】ベトガーに学ぶセールス成功の秘訣と自己変革の力ー田中真澄氏

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)のp326「10月13日:ベトガーに学ぶセールスの極意(田中真澄 社会教育家)」を取り上げたいと思います。

 田中氏は社会教育家として、成功を収めるための重要な要素として「一引き、二運、三力」の概念を提唱しています。これによれば、どんなに個人の能力が高くても、他人からの援助や「引き」がなければその能力を発揮する機会は訪れにくいと説いています。人生で成功を収めるためには、まず周囲から支持を得ることがスタートラインになるとの考えです。この点で、ベトガーの人生と彼が示した成長の道のりは非常に示唆に富んでいます。

独立以来、私が強く感じているのは、人生とは「一引き、二運、三力」であるということです。どんなに腕があっても、まずは「あなを使ってあげる」と、人様に引っ張り上げてもらえる機会を得なければ、永遠に能力を発揮することはできません。そういう“引き"の機会をどうつくるか、それが人生の勝負です。

『1日1話、読めば心が熱くなる365人の仕事の教科書』(致知出版社、2020年)p326より引用

 ベトガーはもともと内向的で人付き合いが苦手な性格だったにもかかわらず、その後の人生で大きく変貌します。若い頃はプロの野球選手を目指していましたが、その夢が断たれた後は、非常に失望し、その結果として販売外交員の道を歩むことになります。
 しかし、この職での成功も当初は容易ではありませんでした。彼の転機は、デール・カーネギーが主宰する話し方教室に参加したことでした。カーネギーの情熱的で人間味溢れる話し方とその教えに心を打たれ、ベトガーは自らも情熱を持って積極的に生きることを決意します。この経験が、彼の内面だけでなく、その後の職業生活においても大きな変化をもたらすこととなります。

 また、ベトガーが影響を受けたもう一つの重要な文献が『ベンジャミン・フランクリン自伝』です。フランクリンはアメリカ独立宣言の起草者の一人として知られるだけでなく、自己改善と社会貢献においても模範とされる人物です。彼の成功は、「フランクリンの十三徳目」※に代表される徹底した自己管理と自己改革によるものでした。
 ベトガーはこの十三徳目を自らの生活に取り入れ、そのうち六項目をフランクリンの原則に従い、残り七項目を自分の仕事や生活に即した内容に置き換えました。これには、秩序を保つこと、他人の利益を考えること、効果的な質問をすること、問題の本質を見極めること、誠実さを保つこと、自分の事業に関する深い知識を有することなどが含まれています。

13の徳目
 私が読んできた本のなかには、さまざまな「徳」のことが書かれていた。だが「徳目」の数は本によって異なった。ひとつの徳目にさまざまな意味をもたせている場合もあれば、少ししか意味をもたせていない場合もあった。
 たとえば、「節制」という徳目がある。ある著者はこれを「飲食」に限定しているが、別の著者は、飲食に限らず肉体的・精神的なあらゆる欲求を含めて論じている。私は各項目をできるだけシンプルにしたかったので、徳目の数を多くして、意味は狭い範囲に限定した。私がつくった徳目の数は全部で13になる。その13の徳目のなかに、当時の私にとって必要な、あるいは望ましいと思われた徳がすべて含まれている。また、それぞれの徳目には短い戒律をつけた。それらを読めば、私が13の徳目にどのような意味をもたせたかがはっきりとわかるだろう。
 それぞれの徳目の名称と戒律は次のとおりだ。
1 節制
飽きるまで食べないこと。酔うまで飲まないこと。
2 沈黙
自分と他人に無益な話をしないこと。むだな会話は避けること。
3 規律
物は場所を決めて置くこと。仕事は時間を決めてすること。
4 決断
やるべきことがあればやろうと決心すること。決心したことは必ずやりとげること。
5 倹約
有益でないことに金を使わないこと。つまり浪費をしないこと。
6 勤勉
時間をむだにしないこと。常に何か有益なことをして、むだな行動はすべて断つこと。
7 誠実
嘘をついて人を傷つけないこと。無邪気かつ公正に考え、話すときも同じようにすること。
8 正義
他人の名誉を傷つけたり、自分の義務を怠ったりと、不実な行いをしないこと。
9 節度
極端を避けること。腹を立てるに値するような侮辱を受けてもじっと耐えること。
10 清潔
身体、衣服、住居の不潔を許容しないこと。
11 平静
ささいなこと、よくある出来事、避けがたい出来事に取り乱さないこと。
12 純潔
性交は、健康あるいは子づくりのためにのみ行うこと。快楽に溺れて頭を鈍らせたり、健康を損なったり、自分と他人の平穏や信用を傷つけたりしないこと。
13 謙虚
イエスとソクラテスを見習うこと。

ベンジャミン・フランクリン『すらすら読める新訳 フランクリン自伝』(サンマーク出版、2023年)p177より引用

 ベトガーはこのように自己を律することで、次第に自分自身の可能性を開花させ、最終的にはセールスの分野で大きな成功を収めます。彼の成功物語は、単なる業績の向上にとどまらず、人間としての成長や変化をも示しており、多くの人々にとって大きな鼓舞となっています。

 田中氏はベトガーの例を通して、どんな困難な状況からでも自らを変えることのできる力を持つこと、そしてそれには自分から積極的に行動を起こし、継続的な努力をすることが必要だと強調しています。また、他人からの支援や機会を引き寄せるためには、情熱を持って自分の目標に取り組むことが重要であるとも述べています。このような考え方は、多くの人々が直面する様々な挑戦に対して、前向きな姿勢で取り組むための指針となるものです。

人事として応用すること

 人事として、個人や組織の成長に関わる重要な要素を把握することは極めて重要です。「ベトガーに学ぶセールスの極意」を通じて、人事管理の実務においても活用できる内容を考察します。ベトガーの人生と変革のプロセスは、多くの教訓を含んでおり、これらは人事領域においても非常に有益です。

ベトガーの変革への取り組み

 ベトガーはセールスマンとしてのキャリアを通じて、多大な成長を遂げた人物です。彼の初期の挫折とその後の成功転換は、個人の潜在能力を最大限に引き出すための環境と支援の重要性を示唆しています。デール・カーネギーの影響を受け、彼は自身の人間関係とコミュニケーションスキルを大きく向上させました。この変化は、人事部が従業員一人ひとりが持つ潜在能力を理解し、それを引き出すためにどのような支援を提供すべきかという視点を強調します。

人生の「一引き、二運、三力」

 ベトガーが語る「一引き、二運、三力」という概念は、人事管理における機会の提供、能力の開発、運の活用の重要性を教えてくれます。これは、従業員が成功を収めるためには、ただ単に能力が高いだけでなく、適切な機会が与えられ、その機会を活かす準備が整っていることが不可欠であるということを意味します。人事部は、適切なタイミングで適切な人材に機会を提供し、彼らがその機会を最大限に活かせるようにする役割を担います。

情熱の重要性

 情熱は、ベトガーがカーネギーから学んだ最も重要な要素の一つです。彼の話は、情熱が人々をどのように動かし、前進させるかを示しています。人事部は、従業員が自分の仕事に情熱を持てるような職場環境を作ることが求められます。情熱は、従業員のエンゲージメントを高め、組織全体の生産性向上に直結します。したがって、人事戦略においては、従業員が情熱を持ち続けるための条件を整えることが重要です。

フランクリンの十三徳目とその応用

 ベトガーが取り入れたベンジャミン・フランクリンの「十三徳目」は、個人が自己改善を図る上で非常に具体的な指針を提供します。人事部はこれをモデルに、従業員が自己のスキルと能力を段階的に向上させるためのプログラムを設計することができます。例えば、組織内での継続的な学習と成長を促すためのメンターシッププログラムやスキル開発ワークショップを定期的に提供することが考えられます。

まとめ

 ベトガーの経験は、従業員の個々の成長を支え、組織の目標達成に貢献するための重要な教訓を含んでいます。人事も、従業員が自身の職務に情熱を持ち、能力を最大限に発揮できるような環境を提供することが求められます。また、適切な機会の提供と個々の能力開発が組織全体の成功へとつながることを理解し、それを実現するための具体的な戦略とプログラムの実施が重要です。ベトガーのように、困難を乗り越え、変革を遂げた事例は、人事がどのように従業員を支援し、組織全体をリードすべきかの示唆に富んでいます。これらの学びを活かし、組織と従業員双方の持続可能な成長を目指すことが、現代の人事に求められる役割です。

内向的な個性から成功し自信に満ちたセールスマンへと変貌を遂げるベトガーの変革の旅を描いています。左側から右へと進むにつれて、彼の人生の重要な瞬間が映し出され、個人的及び職業的な成長を象徴しています。野球のボールや本、販売ブースなどの要素が彼の過去の野望と現在の成果を反映しています。このビジュアル・ナラティブは、困難を乗り越え、粘り強さと変革を通じて成功を収めるベトガーの物語の本質を捉えています。


1日1話、読めば思わず目頭が熱くなる感動ストーリーが、365篇収録されています。仕事にはもちろんですが、人生にもいろいろな気づきを与えてくれます。素晴らしい書籍です。




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