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宿主とスマホなるものの、どうでもよい関係

吾輩はチョロである

 さて吾輩は、宿主が妙な機器を持っているのに気がついた。
なにやら、長方形の薄っぺらいものを指でするするなでているのだ。

 なんでも、「スマホ」というものらしい。

 この奇妙な機械は、宿主だけではなく、
この家に訪れる者がみな一様に使っているので、
おそらく彼らの生活の中において、
欠かせぬものなのであろう。

 しかし、吾輩には何の関わりがないと思うが、
時々このスマホなる機械を使う者どもは、
吾輩たちに妙な目玉のようなものを向けて、

「カシャ」

という不快音とともに、
意味もなく、はしゃいでいるのが、
まことにあほらしい気がしていることは確かである。
そして、きわめて不愉快でもある。
それゆえわざわざ尻尾を振っているというのに、
これがわからない人間どもは、まことに愚かな存在だ。

 先日、このスマホなる機械を巡って、
吾が宿主と来訪者がつまらぬ議論をしていた。

「センセイは、なんでガラケーとスマホ持ち歩いてるんです?」
「いやいや、スマホっていわゆる電話じゃないだろう。」
「はぁ?センセイってLINEとか使ってないんですか。」
「使わないねえ・・。だいたいスマホってコミュニケーションでは使わんよ。」
「ああ、だからガラケーか、ははは。」

宿主はこの来訪者の発言で、少し不機嫌になったようだ。

「スマホっていうものは、いわばネットの端末だろう。」
「まぁ、そりゃそうですが、コミュニケーションツールですよね。」
「そこだよ、わしとキミとの考えの違い。」
「センセイは、スマホってどう使ってるんですか?」
「まぁ、うちのパソコンのネット環境の子機、そして、決済ツールだ。あと、記録写真機」
「うわ、徹底してますね。」
「わしは、電話っていうものは、そもそも好かない道具なのだ。」
「何でですか?」
「通話の時間は、相手の時間を独占するではないか、そういった傲慢が気にいらんのだ。」
「へぇ、そんなもんですかね。」
「うむ、そんなものだ。」

吾輩は、こういったくだらないやりとりは、
いい導眠剤だと、常日頃思っているのである。

continue


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