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はるかが・・繫ぐ  ζ (dzeta)

 久しぶりに飛鳥も混じっての夕餉となった。壁にはいつの間にかはるかの両親の写真が飾られていた。

「ねぇ、はるか?」
飛鳥はワインを傾けながら、はるかに話しかけた。
「なぁに?」

 飛鳥はこっそり耳打ちするように聞いた。
「あんた、なんだかんだ言って、彼氏出来たでしょう?」
「カレシぃ?」
はるかは驚いた目を飛鳥に向けて、強く言った。

「いないよ、カレシなんか。・・それにぃ・・。」
はるかはまた、少し複雑な表情を見せた。

「ねえ。あんた、内海君と時々逢ってるでしょ?あの子はカレシじゃないのか?」
「・・・うっちーか・・・。」

 はるかは視線を下に落として考え込んだ。飛鳥はやっぱりという顔を浦上に向けた。

「・・うーん、カレシって感じじゃないんだなぁ・・。あの人は。」
「じゃ、何で逢ってるの?」
「逢ってるって言うより、ライブ見に行ってる感じだよ。うん・・。なんか、懐かしいっていうか。あの人。」
「懐かしい?・・それにライブって、あの子音楽やるの?。」
「うん、ガード下とか地下道で、ギター弾いて歌ってるんだ。」

  飛鳥はいかぶしげにはるかを見た。
 ふざけて言ってるのではなく、はるか自身は、きわめて真面目に考え込んでいることは十分わかっていた。
 だから飛鳥は、からかうと言うより、なぜ夫の村野純が反対するのか手がかりをつかみたかったのだ。

「どんな人なんだ?はるか、その内海君って男性は。」

浦上がゆっくりとはるかを見ながら言った。

「うん、あのね、あたしのパパってこういう人なのかナー?って思わせる感じなんだ。っていうかー、カレシと言うよりお兄ちゃんみたいな感じなの。・・なんか・・お兄ちゃんとも言えるし、ただのファンだとも言えるし・・。」

「お兄ちゃんねぇ・・。」

「っていうか、パパの写真あるでしょ?ママと写ってる。あれ、そっくりだからかな。」
「名は体を表すのかな。たしか耕作って名前でしょ?」
「そうだよ、飛鳥お姉さん。」
「ふぅーーむ、謎だな。ひょっとしたら咲ねえに似てるはるかに、耕作義兄さんによく似てる上に、名前まで同じ内海耕作が近寄ることが許されないんかな?うちの旦那は・・・。いわゆるジェラシーってヤツ?

「何でそうなるんだ?飛鳥。」
浦上は不思議そうに飛鳥に尋ねた。

 飛鳥はそこでくすくす笑った。

「学生の頃、咲ねえに一目惚れしたんだって。あの人。」
「へぇー、マジで?・・・・『鬼の村野』の隠された秘密ってカンジ?いわゆる黒歴史。」
「そうそう、だから秘密よ。おまけに、咲ねえには、こっぴどく振られたようだけど。・・・だって、ラブラブの二人に横恋慕だもの、ふふふふ。」
「へぇ、そんなことがあったんだ。」
「だからさ、そんなお姉の服着てると、もしかしたら、旦那に言い寄られるかもな、はるか。」

「やだー、死んでもイヤ。」

「おいおい、人の旦那、そんなに嫌うなよ。あたしがあんたくらいの時に心から好きになった人なんだぞ。・・・・・・そういえば、内海君って、70年代の若者然って感じだしなぁ・・。あの薄汚さ・・。」
「うんうん、わかる!」

 浦上は笑っていたが、そうかな?という顔で言った。
「まさか、村野君ほどの男がそう言う事で反対はするまい。やはり、何かあるのかもしれんな・・。」

  玄関のチャイムが鳴った。母の裕子はは小走りに玄関へ向かった。
「噂をすれば、何とやら・・・よ。」

玄関から入ってきたのは村野純だった。

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