少女漂泊~Monologue by HARUKA σ
はるかの反乱、その2
あたしと叔母を乗せて、
タクシーは木屋町筋の「綾」の前に着いた。
「へぇ~・・、素敵なお店だねぇ・・。」
叔母は店構えを見て感心したようにつぶやいた。
「うっちーの伯母さんのお店だよ。」
ってことは、センパイと村野叔父との間には、
綾さんも含めて何か関係があるんだろうか。
まぁ、センパイのおかんは当時の「PTA」だしね・・・。
「あら~、おいでやす。」
綾さんが、上品な面持ちであたしたちを迎えた。
奥に村野の叔父さん・・。
なんだか独酌でできあがっているようだった。
「おう!、こっちこっち・・。」
隣に、誰かの飲みさしの料理があった。
たぶん、うっちーか、おかんか
どっちかなんだろうなぁ・・。
何の話をしていたんだろう。
あたしは綾さんの方をちらっと見たが、
いつも通りの綾さんだった。
「純センセ、この方は奥様だすか?」
綾さんは、叔母の方を見てそう言った。
「はい、村野飛鳥といいます」
「あんたが咲ちゃんの妹はんなんだすね・・・。
うん、似てますな。雰囲気が。」
あたしは、ちょっとこの言い方が気に障った。
叔母を見ると、やはり同じようだった。
つくづく考えるに、「あたしのママの『浦上咲』って、
どういう存在だったのだろう・・。
で、あたしは、両親の「お墓」の存在すら知らない・・。
その理由もはっきり知らされていないからだ。
まだ、あたしは「作られた浦上はるか」でしかないのだろうか・・。
今、この大人たちはわかっていながら、
あたしだけが知らないこの空間に対する
「違和感」の嵐にあたしは飲み込まれていた。
「たった今まで、ここで内海の母親と話をしていたんだ。」
センセーがおもむろに切り出した。
「せんせー、どういうこと?」
「うん、飛鳥には、東京で話そうと思っていた事だが、
まぁ、手間が省けた形になった。」
叔父は、酔いもあったのか、いささか饒舌だった。
「この女将の妹、内海あゆみは、
おれと、はるかの父親の耕作とは、旧知の仲だ。」
ママがこのお店に来て、あの怪しいお坊さんと
知り合いって事はわかってたけど、
そうか、この店には、あたしにとっては
結構縁が深いって事なのか。
綾さんを見ると、相変わらず菩薩のように微笑んでいる。
「堪忍な、あゆみ、敵前逃亡しはった。
・・はるかちゃんの顔見るのつらいって・・。」
「・・・え?・・・」
なんだかわかんないな、センパイのおかん。
叔父はちょっと咳払いをしたあと、
あたしの方を見て言った。
「内海が桜新町の家で、はるかと初めて会ったときのことだ。
彼は妙なことを言った。」
「・・・妙なこと?・・。」
「うん、まずはるかの歳を聞いた。確か高校1年生くらいだったか?」
「中学生だよ、中3だった。」
「ああ、そうだったな、確かこっちの大学受験で家に転がり込んだんだった。」
飛鳥おねえちゃんもそれに反応した。
「ああ、そうだそうだ、覚えてる。
彼は東京に住むうえでの戒めを
おかんからもらったんだって・・・。
で、はるかの歳を聞きたがっていたんだ。」
「へぇ、どんな?・・」
あたしはなんとなく興味津々な気持ちになった。
「東京には、あんたの腹違いの妹がいるかも知れないから、
そのくらいの年齢の女の子には、
絶対ちょっかい出しちゃダメ。」
「・・・はぁ・・?」
あたしは目を丸くした。
・・・バッカじゃないの?
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