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ピアノロールに疲れたあなたへ：トラッカー記法の魅力を探る

Hideki Saito

この記事は、現在音楽制作を行っていない人や、作業がなかなか進まず挫折を感じている人に向けたものです。また、ピアノロール形式での制作に馴染めず苦労している方や、新しい音楽制作方法を模索している方にも役立つ情報をお届けします。すでに現行の環境で快適に作業できている方には必ずしも必要ではないかもしれません。しかし、トラッカーをあまり使ったことがない方には、ぜひこの機会に新しい可能性を探ってみてください。

ピアノロールの課題

一般的なDAW（デジタルオーディオワークステーション）では、ピアノロールという視覚的なインターフェースが採用されています。このピアノロールは、音符を横軸に時間、縦軸に音程として配置する形式です。例えば、和音を構成する際に複数の音符を同時に配置することが求められるため、初心者にはどの音を選べばよいのか判断が難しい場面もあります。
このピアノロールは、楽器、とりわけ鍵盤楽器に馴染みのある人には直感的で分かりやすいものです。しかし、楽器の演奏経験がない人にとっては、和音の構成やリズムをピアノロール上で理解するのは一筋縄ではいきません。さらに、各ノートの長さや配置から感覚的にリズムを読み取ったり、音の構成を直感的に把握するには、かなりの熟練とセンスが必要とされます。
また、音符を一つひとつマウスで配置していく作業は、時間と労力がかかり、音楽制作初心者にとっては「苦行」となりがちです。さらに、ピアノロールでの入力は、MIDIキーボードなどのデバイスを前提としているため、機材がない場合は手間が倍増します。そもそも鍵盤を演奏できない場合、MIDIキーボードなどのデバイスを導入しても、ピアノロール形式では課題の解決にならないこともあります。
特に最近では、ピアノロール以外のワークフローが解説されるケースが少ないため、他の方法があることに気づきにくい状況もあります。これらの理由から、ピアノロールに馴染めない人にとっては、別のアプローチを試してみることが重要です。

トラッカー形式とは？

こうした課題を解決するために試してほしいのが、トラッカー記法を採用したシーケンサーです。トラッカーは1980年代に登場し、縦方向に進むインターフェースで音楽を入力していくスタイルが特徴です。この形式では、音符や音量、エフェクトのパラメータを数値や簡略化された記号で入力します。例えば、スネアドラムの音を再生する命令や、特定のパターンでエフェクトを適用する命令を行ごとに記述することで、複雑なサウンドを簡単に実現できます。
一見すると表計算ソフトのような見た目ですが、この形式は楽器演奏の経験がなくても直感的に音楽を「プログラム」することが可能です。ピアノロールが「演奏」を模倣するインターフェースであるのに対し、トラッカーはどちらかというと音楽を「コーディング」する感覚に近いと言えます。この違いは、楽器に馴染みのない人にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。
ただし、トラッカーにも短所があり、数値や記号で入力するスタイルは、視覚的に直感的な操作を好む人には馴染みにくい場合もあります。ピアノロールとトラッカーのどちらにも長所と短所があるため、自分に合ったワークフローを見つけることが重要です。

モダンなトラッカーの進化

トラッカー形式のソフトウェアは長年進化を遂げており、その一例がRenoiseです。このソフトウェアはトラッカーの伝統を守りつつ、モダンなDAWが提供する機能も数多く取り入れています。たとえば、VSTプラグインを通じて多彩な音源を使用したり、サンプル編集やエフェクトの調整も簡単に行えます。

その他にも、例えば無料で利用できるSunVoxやOpenMPT（Open ModPlug Tracker）など、初心者から上級者まで幅広いニーズに応えるトラッカーソフトが多数存在します。これらのソフトウェアは、それぞれ特徴が異なるため、自分に合ったものを選ぶことが重要です。これらのソフトウェアは、それぞれ特徴が異なるため、自分に合ったものを選ぶことが重要です。
かつてトラッカーはEDMやチップチューンの制作に特化していると思われていましたが、実際にはそれ以外のジャンルにも応用することができます。特にコード進行やリズムパターンの試行錯誤が容易であり、音楽制作のプロセスをシンプルかつ効率的に進めることができます。例えば、特定のコード進行をトラッカー上で数値として入力し、それを複数のパターンでコピーや変更して比較することが簡単にできます。これにより、初心者でも短時間でさまざまなアイデアを試せるのが魅力です。

トラッカーを試してみよう

もし、ピアノロールの操作が難しいと感じているなら、ぜひトラッカー形式のシーケンサーを試してみてください。最初はとっつきにくく感じるかもしれませんが、慣れてくると音楽を作る楽しさを新しい角度から味わえるはずです。例えば、Renoise公式サイトやYouTubeには初心者向けのチュートリアルが豊富に用意されており、それらを活用することで効率的に学べます。また、トラッカー特有のコミュニティも活発で、他のユーザーの作例やアドバイスを参考にすることができます。
音楽を「演奏する」のではなく「プログラムする」——この新しいパラダイムが、あなたの創作の幅を広げてくれることでしょう。

最後に

もしこの記事を読んでトラッカー形式に興味を持たれたなら、ぜひ一度試してみてください。まずは無料で試せるトラッカーソフトやチュートリアル動画から始めるのがおすすめです。慣れるまで少し時間がかかるかもしれませんが、新しいツールを手にすることで、音楽制作がさらに楽しくなる可能性があります。
トラッカー形式のシーケンサーは、ピアノロールでは得られない新たな視点を提供します。この記事が、あなたの音楽制作の新たな一歩を踏み出すきっかけとなれば幸いです。ぜひ、次の音楽制作の冒険を始めてみてください！