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きっと誰かに教えたくなるポルシェの子話
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白馬旅行帰りの電車内からこんばんは
ポルシェと聞くと「スポーツカーメーカー」くらいのイメージしかない人もいるのでは。
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しかしポルシェには謎の拘りやエンジニアの意地が詰まっていて、知れば知るほどクセになるストーリーがたくさんあるんです。
そこで、ポルシェが生み出してきた知っていても役に立たないけど誰かに自慢できるかもしれない子話を一部ご紹介。
世界初のハイブリッドカー
「ハイブリッドカーはトヨタが始めた」
...わけじゃないのですよ。
100年以上前の1900年に、オーストリアの自動車会社ローナー社のフェルディナント・ポルシェ博士(ポルシェの創業者)が設計した「ローナーポルシェ」は、ガソリンと電気モーターのコンビ。
これが世界初のハイブリッドカーだった。
数々の先進テクノロジーを備え、今にも通じるコンセプトが満載だったこの車。
しかし当時の技術では製造コストやメンテコストなどが実用には遠く、商業的に成功したとは言えないものだったそうな。
もしかしたら「実験用オモチャ」状態で、博士のただの好奇心だったのかもしれない。。
けども、常に革新を求める探究心と野心を感じられるポルシェの出発点であることは間違いない。
911のデザイン「ずっとほぼ一緒」
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そんな野心的なポルシェ博士がフォルクスワーゲン・ビートルを設計したところからRR(リアエンジン・リアドライブ)レイアウトが生まれ、911の駆動レイアウトはそれにルーツを持つというのはよく知られた話。
それとは違うデザインの切り口で、特徴的な「ポルシェ911の顔」について。
1963年からずっと変わらず続くこのデザイン、実は「変えない美学」が大事にされている。
なので911デザインの進化は「劇的ではなく、じわじわ」が合言葉。たぶん。
そしてその特徴的な911のヘッドライト配置は「カエル顔」とよく言われているのだけど、ノーズ(車のフロント部分)を低くするためのエンジニアリング的理由で結果的にあのカエル顔になったというのは有力な説。
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かわいい🐸
元々ポルシェのエンジニアたちは重心を低くすることを優先してデザインしてたから、エアロダイナミクス的にも前をできるだけ低くして安定性を高めようとした。
ところが低くしすぎるとフロントサスが入らない。
なのでフロントタイヤの上には高さが必要だった。
結果として左右のフロントライト部分は高くなり中央部分は低いという「カエル」に見えるような愛嬌が出た。
エンジニアリング上の必然から生まれた愛嬌ある顔と考えると面白い。
可愛いから好き。
跳ね馬エンブレムの由来
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@アリゾナの車屋
デザインといえば避けて通れないのが有名なポルシェのエンブレム。
これは、そこ描かれている「跳ね馬」の話。
フェラーリと混同する人もいるけど、ポルシェのはドイツ・シュトゥットガルト市の市章が由来。
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ポルシェのエンブレムは、創業の地であるドイツ・シュトゥットガルト市の紋章からきていて、そこに描かれている「馬」を採用してる。
シュトゥットガルトは馬の産地として有名だった歴史もあって、その象徴をポルシェのエンブレムに使うことにした。
地元愛溢れるエンブレムなのです。
ちなみにこの跳ね馬を備えたエンブレム全体のデザインは、ポルシェ博士の息子さん(フェリー・ポルシェ)がニューヨークのレストランで紙ナプキンに描いたものというのも有名な話。
一方、フェラーリの跳ね馬はポルシェとは違う経緯で生まれている。
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フェラーリの「カヴァリーノ・ランパンテ(跳ね馬)」のシンボルは、元々イタリア空軍のエースパイロット、フランチェスコ・バラッカの戦闘機に描かれていたマークだった。
彼が第一次大戦に散った後、その家族がエンツォ・フェラーリ(フェラーリの創業者)に「この馬を使うと幸運が訪れる」と言って、エンブレムを託されたのだとか。
これはエンツォ・フェラーリが出ていたレースで、エンツォの姿に息子のフランチェスコを重ね合わせたお母様が、これを使ってほしいとエンツォに跳ね馬を託したという説。
つまり、ポルシェとフェラーリの馬はそれぞれ異なる理由でエンブレムに採用されたけど、偶然にも「馬」、しかも「跳ね馬」を象徴として取り入れた形になっている。
ポルシェとフェラーリのロゴが並ぶと、ちょっとした運命的なつながりを感じられるのも面白い。
好き。
鍵穴位置の秘密
ここからはやや変態性が上がるこだわりに関する話。
ポルシェの鍵穴が運転席側の「左」にある理由(左ハンドルの場合)。
もちろん他のメーカーでも同じレイアウトの車はあるけども、ポルシェにはレースにまつわるストーリーがある。
それは「ルマン・スタート」からきている。
世界三大レースのひとつであるルマン24時間レース。
昔のルマンでは、スタート合図とともにドライバーが車に駆け寄り、一斉に発進する方式だった。
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昔のスタートでは、このように並んだ車に左側からコースを横切って駆け寄り、エンジンをかけてスタートしていた。
※現在の世界耐久選手権でもそのオマージュとして、スタート前に一度斜めに並べている。
このときポルシェのドライバーが最速で飛び出せるよう、左手でエンジンをかけ、同時に右手でギアを入れる流れが作られた。
今ではルマンを含む耐久レースのスタート方法は変わったけど、ポルシェはその名残を大切に残していて今でもそうなっている。
こういうストーリー性があるものってすてき。
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右ハンドルだと右にあるらしい
ほとんどの車がこうなってる気もするが、
ランボルギーニのカウンタックは右にある
ぱっと見でドリンクホルダーが無い
911はぱっと見でドリンクホルダーがない。
実はここにも、速さに賭けるマインドを運転スタイルに反映するストーリーが。
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かつて、ちょっと古いポルシェにはドリンクホルダーが存在しなかった。
スポーティさを追求するあまり、ドリンクを持ち込むこと自体が「邪道」とされていた。
ポルシェのエンジニアたちの間では、「運転中に飲み物を扱うなんて運転に集中していない証拠」と見なされていたという話もあったとかなかったとか。
なので一見してドリンクホルダーが見当たらないようにしているのは、おそらくその名残というか拘りを継いでいるのだと思う。
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細かすぎる拘り。
すき。
911のネーミング経緯
今度はまたちょっと視点を変えて、名前について。
“ポルシェ911”は車好きなら誰もが知る名前。
これ実は、911は901という名前になるはずだった。
さてその経緯は。
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超レア車で、今では全く廉価ではない
1963年9月に356の後継モデルとして901が発表された。
ところが901のように3桁番号の間に”0”を入れるネーミングはフランスのプジョー社が商標登録済みで、ポルシェは使うことができないという悲劇が。(101から909まで登録していたとか)
商標を盾にプジョーに噛みつかれたポルシェは泣く泣く911と名を改めたのだけど、これが今に続くスポーツカー界で最も有名なモデルとなったのだから面白い。
ちなみにフェラーリには308というモデルがあった。なんでそれOKだったの?にも諸説あるのだけど、それはまた別の話。。
ポルシェ社の正式名称
最後に、会社としてのポルシェについて。
ポルシェ社の正式名称は「フェルディナント・ポルシェ名誉工学博士株式会社」
みんなポルシェポルシェと呼びますが、正式名称には偉大すぎる博士の名前を冠しているのです。
偉大。
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...このように、まだまだ色々あるのだけど変態レベルのこだわりや子話が随所に散りばめられているポルシェ。
ただの車じゃなくて色んな意味でエンジニア魂の結晶ということで、これからも車オタクたちの夢を背負い続けていくことを期待したい。