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「希少部位・パンの耳」

パンの耳ってありますよね。
時々近所のパン屋さんで「アウトレット」として安く売ってたりします。これはいわゆる「余り物」で、食パンを作るときに出る端っこや、サンドウィッチを作るときに切り落とした耳の部分です。
子どもの頃は固くてモサモサしていて好きじゃなかったけど、ある時期からこの部分がかなり好きになりました。今はバゲットなんかも端っこの固いところがご馳走だと思っています。
子どもの頃、よく母がサンドウィッチを作った時に出た切れ端でお菓子を作ってくれました。油で揚げたパンの耳に砂糖をかけただけのもので、油と砂糖と炭水化物と言う、昨今ではあまり歓迎されないものだけで構成されているこの食べ物でしたが、これがなかなかおいしかったんです。

「考え方で、物事は変わる」

これって考えてみると「希少部位」と言ってもいいんじゃないでしょうか。
高級な焼肉屋さんなんかに行くと、よく「牛一頭から〇〇グラムしか取れない」なんてやつがあるけど、パンの耳ってそういう視点で見れば食パンやサンドウィッチを作る工程でわずかしか取れない「希少部位」なんじゃないかと。

もちろんふわふわの白いところもおいしいけれど、小麦の甘みや香ばしさが凝縮された端っこには、この部分でしか味わうことが出来ないものがあります。

 そんなわけで、たまにパン屋さんで見つけるとつい買ってしまう食パンの端。そのままケチャップを塗ってベーコンやチーズ、玉ねぎなんかを乗せて焼くと、何とも言えない食感があっていいんです。
サンドウィッチから切り離された細いスティック状の部分も、そのまま焼いてパスタのソースや煮込み料理につけて食べるととてもおいしい。

そんなことをしていたら、真っ白でふわふわのおいしいパンのサンドウィッチを食べた時、ああ、このパンの耳はどうなったのかなあ、と想像してしまいます。

物事の価値観があらゆる場面で急速に変化していく時代、ちょっと視点を変えてみると、感じられる素敵なことがたくさんあるような気がします。

今日は鶏ひき肉で作ったミートボールのトマト煮込みに、強めに焼いた希少部位をスティック状に切って添えてみました。かわいかったし、おいしかったー。



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黒沢秀樹
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