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アフターコロナでの産業再生は「社会のため」という信念から

6月10日 日本経済新聞 ジャック・アタリ氏の寄稿記事から


どの産業に関しても、コロナ危機以前の世界に戻ろうと夢見る人々が大勢いる。観光業も例外ではない。休暇には格安航空券を利用して外国旅行へ出かけ、自国には外国人の観光客が押し寄せる。観光地や繁華街などには、大勢の人々が訪れるというシナリオを思い描く。

しかし、我々はコロナ危機から得た教訓を忘れてはならない。新たな疫病のまん延を防ぎ、化石燃料の消費を減らし、文化遺産や自然環境を保護するには特に外国旅行を規制する必要があるということだろう。

自然環境の保護と産業について提言がされています。

自然環境については、コロナで人の動きが制限されたことによって観光地の自然環境が改善しているそうです。ハワイのホノルル 人気リゾートビーチハナウマ湾では透明度が60%以上も改善されたということです。



私は沖縄に4月に訪れ趣味のダイビングをしましたが、ガイドさん曰く沖縄も水質が良くなっていると体感できる、以前だったらみられない珍しい魚も見れるようになったといいます。

過去には環境保全のために、観光地を封鎖して改善をしたタイプーケットのピピ島やフィリピンのボラカイ島の例もあります。観光客が訪れすぎることで引き起こされる環境への影響(下水の処理能力や、ゴミ、船が砂浜への乗り上げんあど)を止めもとの環境に戻す措置。ボラカイ島では半年間の島の閉鎖で環境が蘇ったといいます。

1年を超えるコロナ禍で世界中の観光地が奇しくも改善される環境になっているかも知れません。アタリ氏の指摘通り、コロナ明けに一斉に観光客が押し寄せることで環境の悪化は懸念されて当然です。

観光を規制することによる観光産業への影響については、ホスピタリティーを他の産業分野で活かすべきだと提言しています。


観光業の未来は、(業態にとらわれず)自然および社会の環境に及ぼす影響を大幅に改善することにあると捉える政策もある。観光業が培ってきた(歓待や配慮、扶助といった)ホスピタリティーを、他の産業分野で活用することを目指す。

ホスピタリティーを発揮するには、サービスの提供者が持つ元来の人間性だけでなく、(日本文化が体現してきたように)長年にわたる特別な技術の習得が要求される。今後、こうした技術は観光以外の産業でも必要とされるため、存亡の危機にある観光業は新たな活路を見いだすことになる。

日本の観光産業は、2017年3月に安倍政権が観光立国政策として観光立国の実現に向けた「観光立国推進基本計画」が発表されました。2020年に訪日客4000万人の受け入れを目指していました。



2019年は4兆8000億円の訪日客による経済効果があったそうですから、コロナにおいての損失は甚大です。2019年当時は銀座線は日本人以上に外国人の姿がみられたこともありましたし、銀座や心斎橋での中国人の爆買いという現象もありました。


海外の人からみても日本という国は観光地や日本文化の魅力が高いのではないでしょうか。

ちなみに英誌エコノミストが毎年実施している「世界の住みやすい都市」に関する調査の2021年度版で、2位は大阪で5位に東京。ニュージーランドの最大都市オークランドが1位。


中国人にとって行きたい国の第一位が日本で日本ロスの代替として上海にある日本の書店に人が押し寄せているという。

このことから、日本に来訪してもらうカタチのインバウンド消費から我々が海外に出向きチャイナタウンならぬニッポンタウンを作ったり越境ECに活路があるかも知れません。

海外にでむきニッポンタウンを作るというのは単に日本製品を販売するということではなく、人と人の交流を図ることや食文化などを伝えて需要を喚起することも価値がありそうです。

また越境ECはデジタル化できるものを流通させるべきでしょう。言語の壁はありますが、noteをはじめとした日本国内だけで流通しているコンテンツを他言語化したりすることで、販路がさらに広がります。

大人数の移動を伴うことでのウィルスの拡散リスクや環境破壊のリスクを回避しつつ経済を活性化させる。これは本記事で編集委員 玉利伸吾氏が書かれている様に社会のためという視点に尽きるのではないかと思います。


戦前の日本でおよそ500社の会社の設立、運営にかかわった渋沢栄一は、約600の社会事業にも取り組んだとされる。ホテルの創立や病院の支援、社会福祉、教育にも力を注いだ。幅広い活動の底には「社会のため」という信念があった。産業の再生は、原点の再確認から動き出すのではないか。

大勢の人々が移動をして観光を行う、2019年ごろ日本の各地でみられた姿。中国人が退去して押し寄せるという様な観光産業のあり方は変わらざるを得なくなるのは間違いないです。



外国人の訪日を待つだけの産業は、内需に目を向けるかITを活用して海外でビジネスを行う方法にシフトしなければならない。そう考えさせられる記事でした。




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ジャック・アタリ氏の著書

「2030年ジャック・アタリの未来予測―不確実な世の中をサバイブせよ!」

何の対策も講じなければ2030年までに破局に至る。マネーでしか価値を判断しないような社会、一握りの個人だけが巨額の富を手に入れる社会。奇跡的なイノベーションが人類を救ったりすることはありえないという。解決策は、人類が倫理観を変化させて利他的なか集おうを行うことだといいます。

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