
#4 論文執筆のリアル③:自力で横断的調査ってこんなにムズいの?!
こんにちは!
今回は、先日アクセプトされた論文の執筆過程についてお話しします。この研究は、日本のスキーリゾートを対象に、地域住民とインバウンド観光の関係性を解き明かすものでした。ここで、研究を通じて直面した課題や得られた学びを皆さんに共有したいと思います。
苦労の連続だった調査依頼
この研究では、日本全国のスキーリゾートが所在する自治体を調査対象としました。スキーリゾートの国際化が地域社会に与える影響を調べるため、住民アンケートを実施するうえで自治体へアンケート実施の確認が必要と考えました。しかし、ここでひとつの壁が立ちはだかりました。それは、「行政協力の打診」です。
例えば、調査対象とした地域の中には、外国人観光客が多く訪れるところとそうではないところがありました。そのため、調査に対しても「なぜうちなんですか?」と聞かれたりしました。以前よりコミュニケーションがとれていた自治体はスムーズに話が通りましたが、はじめて連絡する自治体からは断られたところもありました。このプロセスを通じて「研究者自身が地域社会と深く関わること」がデータ収集にとって重要であると気づきました。とはいえ、ほとんどの自治体が快く協力していただき、関係性のないところからのスタートでもスムーズに調査を実施できました。誠にありがとうございました。
さらに、今回は全国の自治体を対象としたため、北海道から長野県まで何度も足を運びました。交通費だけでもいくらかかったのかは想像したくないですね・・・(笑)途中ではホワイトアウトするほどの大雪な日もあったりとスキーリゾート研究調査は過酷です・・・

データ分析で明らかになったこと
調査結果からは、外国人人口比率が高い地域ほど、住民同士の関係性が「流動的」になりやすいという傾向が見られました。この「関係流動性」というのは、新しい人との関係を築く可能性の高さを示す概念です。外国人観光客の存在が地域社会に新しい交流の機会をもたらし、それが地域の開放性につながっている可能性が浮かび上がりました。
一方で、興味深かったのは、北海道出身者が他の地域出身者と比べて、もともと関係流動性が高いという点です。これには、北海道の開拓史に根ざした「開放的な精神」が影響しているのかもしれません。
研究を通じて得た学び
この研究を通じて、「観光と地域社会は単なる経済的な結びつきではなく、社会心理的な側面でも深く影響し合う」ことを再認識しました。また、地域外からの人々を受け入れる態度が観光地の発展に不可欠であることも明らかになりました。観光産業が成長するだけでなく、地域住民が観光客とともに学び合い、成長するための土台が必要です。

最後に
この論文が完成するまでには、多くの試行錯誤がありましたが、そのすべてが私自身の成長につながったと感じています。これからも、観光地と地域社会の未来をより良いものにするための研究を続けていきます。次回はさらに面白いエピソードをお届けできるよう、頑張ります!
