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あるある仮説トンデモ仮説(1) -トヨタのクルマがカッコ良いと思えなくなったのはなぜ?-

クルマのデザインの好き嫌い

 自動車、特に乗用車のデザインの良し悪しとは何だろう。工業製品なので最終的にはたくさん売れたクルマのデザインは良かった、ということになるのだろうが、それとは別に個人的に好きか嫌いかというのはやはりある。同じメーカーでも昔は好きだったが、今のはどうも好きになれないというのもある。
 自動車評論家のスタイル論議というのも当てにならない。良くもないデザインをやたらに評価するちょうちん持ち的なのは論外としても、一人の人が車の操縦性の論評とデザインの論評が両方得意とは限らない。それにフェラーリやポルシェのようなスポーツカーならともかく、毎日の足として使う乗用車のデザインがユニークである必要は必ずしもない。これらを同じ土俵で評価すること自体がどうかと思う。ここでは、一般的な乗用車のエクステリアデザインについて個人的独断と偏見でメーカーによる違いなどについて述べてみたい。

昔は好きだったトヨタ車のデザイン

 昔は好きなデザインが多かったが、最近はどうも、というメーカーの代表がトヨタだ。昔のトヨタのクルマは80点主義とか言われたが、全体としてはグッドデザインのクルマが多かったと思う。初代セリカ、初代カリーナなどはあの時代のクルマの中では良いデザインだった。2代目カローラも地味に良いデザインだった。トヨタのクルマのデザインは往々にして初代××という車に良いのが多く、世代を重ねるにしたがってダメになって行く傾向があると私は感じる。初代セリカも良かったが、FF化された初代コロナ、同じく初代FFカムリもケレン味のないグッドデザインだった。同様に初代セルシオも良かったと思う。初代プリウスも何の変哲もないデザインだったがそれゆえに今見ても古臭くない。総じて昔のトヨタ車には、これは話にならないというようなデザインのクルマはほとんど無かったと感じている。センチュリーのデザインなど今でも初代のキープコンセプトだ。

 対して、ニッサンは昔から出来不出来のダイナミックレンジが大きなメーカーだ。510ブルーバードはBMW流の四輪独立懸架を含めて素晴らしいデザインだったが、そのあとのブルーバードUというのはひどいデザインだと感じた。あの頃の「後席のプライバシーを重んじる」とかいうデザインポリシーは私には値打ちが分らない。同様に初代サーフィンラインの愛のスカイラインは良いデザインだったが、次のケンとメリーのスカイラインは私には駄作にしか思えない。あの車がどうしてあんなに人気があったのか、いまだに理解できないでいる。

乗用車のデザインの良し悪しとは

 私の考えでは乗用車というものは毎日つきあうものである。だから毎日見ても見飽きないデザイン、出来れば見るたびに良さを再発見できるようなデザインが良いデザインだと思っている。初めてみた瞬間に「スゴイ!」「カッコ良い!」と感じるようなデザインは、概して毎日見続けていると飽きがくるものが多い。逆に最初はなんとなく慣れないと感じるデザインが、毎日見続けているうちに味が出て来て惚れ直すという、するめのようなデザインもある。もちろん、毎日つきあう乗用車のデザインは後者の方が好ましいのは言うまでもない。

 最近の乗用車は燃費を良くするために空気抵抗を減らす必要からだろうが、どのクルマも似たようなデザインに収斂してしまい、昔に比べてますます面白みが無くなっている。昨今のSUVブームは面白みのないデザインに面白みを取り戻そうとするレコンキスタ運動のような一面もあるのではないかと感じている。

近頃のトヨタ車はカッコ悪い?

 そういう中で、私には最近のトヨタのクルマがカッコよく見えないのである。私だけの偏見かと思っていたのだが、フェイスリフト前のプリウスは格好良くないと豊田章夫社長ご自身がおっしゃっているし、事実プリウスの顔の評判はかなり賛否両論があったらしいから、プリウスのデザインがカッコよくなかったというのは私の個人的感想だけではないようだ。私に言わせればプリウスだけではない。カローラやアリオンやサイもCH-Rもどこか画一的で精彩がないと感じるし、クラウンのデザインも過ぎたるは及ばざるがごとしの趣がある。最近のトヨタ車で少しカッコ良いと感じたのはカムリくらいなものだ。
 しかし、日本のメーカーでR&Dに一番金をかけているのはトヨタのはずだ。当然デザインワークのためのCADが一番進んでいるのもトヨタだと思われる。そのトヨタの作る車がなぜカッコ悪いと感じるのか、これはかなりのナゾだと言わざるを得ない。
 反対に日本で一番そういう方面に金をかけそうもない自動車メーカーはどこだろう。スズキではないかと私はひそかに思っている。実際にスズキの鈴木修会長自身が「オレは中小企業のオヤジだ」と言っているし、従業員の給与水準も自動車会社の中では低い方だから、一概に勝手な思い込みではないような気がしている。ところが、最近のスズキのクルマのデザインは意外に私好みなものが多い。納車1年待ちといわれているジムニーもそうだが、軽自動車のアルトやハスラー、ワゴンR、スイフトやSX4なども悪くないデザインだ。アルトやハスラーなど街で見るたびに「良いデザインだなぁ」と思うくらいだ。

トヨタ車とスズキ車のデザインの違いの理由は?

そこで、デザインにおけるトヨタとスズキの違いってどこから来るのだろうということになる。ここから先は、私の勝手な想像だ。私の考えでは、デザインワークに使用しているCADツールの先進性がトヨタのクルマをカッコ悪くしている最大の原因なのではないかという疑いを抱いている。私はトヨタのクルマの顔つきはコンピュータの画面上で作られたのではないかという印象を非常に強く受けるのだ。トヨタはまずCADでデザインをし、後からクレーモデルを作っていたりしないだろうか。一方のスズキはそれほど優れたツールを持っていないので、人手中心でクレーモデルを作ってそこから得られたデータをCAD入力しているのではないだろうか。その結果、コンピュータの中で作られるトヨタのデザインは無機的な面白みのないものになり、手作りの味のあるスズキのデザインはなんとなく温もりを感じさせるものになる。というのが私の妄想したデザインの違いが生まれる理由である。皆さんも一度トヨタ車とスズキ車のデザインを見比べてみてほしい。当たっているかどうかは別として、両社のデザインの方向性の違いを説明するストーリーとしては、なんとなくもっともらしいと思えてくるはずだ。

まとめ

 トヨタは設計環境が進んでいるがゆえに、出来上がったデザインがつまらなくなっているということはないか。スズキは設計環境が遅れているのが返って幸いしている可能性はないか。これが、トヨタとスズキのクルマのデザインを見比べながら私の立てた根拠のない仮説である。スズキのデザインはヨーロッパ起源というウワサもあり、世の中そう単純でないということは百も承知しているが、たまにはこういう妄想をしてみるのも楽しいものである。


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