一杯のラーメン
NECと楽天が次世代通信規格「5G」の基地局の整備で協力するそうだ。
楽天がパートナーという組み合わせはNECにとっても願ってもないことのように感じる。相手が楽天なら、NECは自由に仕事ができる。
半世紀も前の話だが、NECという会社の性格を表わす小話として「一杯のかけそば」ならぬ「一杯のラーメン」という話があった。
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あるところに「どこよりもうまい」と評判のラーメン屋があった。
店の暖簾を掻き分けて覗いてみると良いにおいが漂っている。
うまい具合にカウンターの席が空いていたので早速腰掛ける。
「ヘイいらっしゃいませ。ご注文は?」
ラーメン屋のおやじの威勢の良い掛け声。
「ラーメンひとつ」
「ヘーイ!」
それから5分たった。まだラーメンは出来上がらないようだ。
10分待った。まだラーメンは出てこない。
ラーメンを打つところから始めている?
しかし、おやじは何をしている風でもない。
待てど暮らせどラーメンが出てこないうちに1時間がたった。
いい加減しびれが切れた。
「もう1時間たったよ。さっき頼んだラーメン、まだできないの?」
と思わず叫んだ。
ラーメン屋のおやじは怪訝そうな顔をしている。
「お客さん、まだお客さんの仕様を伺っておりません。」
「仕様さえ伺えば、どこよりもうまいラーメンを作ってご覧に入れられるんですが・・・・」
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この話はショートショート風のたとえ話だが、これとほとんど同じことが米国の電話会社とNEC幹部のやり取りの中で、約半世紀前に実際に起きたことだと聞いている。
この話は当時のNECの提案力が極めて乏しかったということ、そしてまた、国内市場では独占企業体であった日本電信電話公社が仕様決定に絶対的な力を持っていた当時の国内通信機ビジネスにおいては企業の提案力が育つ土壌がなかったことを示している。さすがに今ではこのようなことはないだろうが、企業文化、ビジネス文化というものはそう簡単に変わるものではない。今でも日本では仕様の決定において通信オペレータの力は通信機ベンダーのそれを上回っているように見える。
日本の通信関連メーカーのどこかでは、未だに上の小話と同様のことが起きていないだろうか。このような文化は日本国籍企業の3GPP対応にも表れているように感じる。
しかし、さすがのNECも楽天と付き合うのなら、楽天から仕様を示してもらえるとは考えないだろう。NECが商品・システムの仕様決定に主体性を持てる点で、このニュースは明るい兆しだ。