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職位とコミュケーション能力の関係は?

さて、今回のテーマは、
「経営者は、コミュニケーション能力において、一般管理職と何が違うのか?」です。
これは私がコーチングと研修の組み合わせで提供している「経営者のコミュニケーションワークショップ」を実施している際に、複数の方から頂いた質問です。
グッドクエスチョンです!


コミュニケーション能力は一生もののスキル

結論から申し上げれば、コミュニケーション能力の位置づけににおいては、一般管理職も、経営者も大きな違いは無いと考えます。

しかし、それは対人能力、対人影響力、という視点であって、発揮される領域や状況は、経営者と一般管理職では異なってきます。

コミュニケーション能力が職位に関係無く大切なものであることを、
私が研修講師としてよくスライドに表す図でご説明します。

左下を社会人1年生、右上を社長として、キャリアを積んで(横軸)職位が上がっていく過程(縦軸)で、どの様なスキルを発揮することが必要か?
ということを極端に表した図です。
(新入社員が全く考えなくてよい、ということはありませんからね)

職位があがっていけば、発揮されるスキルの割合は変化していきます。
自分で「出来るスキル」は次第に減り、人も含む「リソース」を活用するための「考えるスキル」が増えてくるわけです。

中間管理職はこの両方を発揮しなければならないので、厳しい立場にあり、社長だってスタートアップや中小企業であれば「出来るスキル」を発揮して陣頭指揮にあたるのは当然と言えますから、これはあくまでも職位とスキルの割合を極端に表現したものとご理解ください。

ところが、ここに別のスキルの存在があります。
それがこの図です。

このスキルは新入社員から社長まで、職務年数を重ね、職位が上がろうが、一定の割合で必要になる。しかも、かなり大きな割合で必要なスキルを占めるものです。

実はこれが対人スキル(Human Skill)すなわち、コミュニケーション能力と言われるものです。

つまり、コミュニケーションはどの様な立場でも必要となる
スキルであり、別の言い方をすれば、
一生使える、また使う必要があるスキルと言えます。

経営者に求められるコミュニケーション能力とは

この様に、コミュニケーション能力は職位にかかわらず、必要なスキルですが、一般管理職と異なる、経営者に特有の?という、冒頭の質問への回答となると、以下の様にまとめられます。

  • 自らのビジョンを伝える
    経営者は、自らがもっている、会社のビジョン、目標、価値観を明確に、伝達し、ステークホルダー(利害関係者)を一つの方向に導く必要があります。これには必ずしも「雄弁さ」が必要とは限りません
    わかりやすいストーリーとして語ることで、聴くものの行動を促進するのです。経営者の著書で共感を覚えるものは、このビジョンが
    上手く語られているものだと思います。

  • 感情的な知性(EQ)の発揮
    従業員を鼓舞し、顧客、金融機関、投資家などに信頼を得るために、ポジティブな影響を与えるための感情的な知性(EQ:Emotional intelligence Quotient)が求められます。
    理屈一辺倒、理論中心だけでは、人は動かないということです。
    心の知能指数と言われるEQについては、一般管理職も同様に求められるものなので、別の機会にお話をしたいと思います。

  • 説明能力
    経営者は日々、事業の成否にかかわる重要な意思決定をしていますが、
    その決定の背後にある理由や論理を明確に伝達することが求められます。
    そして、これらの決定が従業員や他のステークホルダーに与える影響についても理解し、共感を示すことが大切です。

  • リスクマネジメント
    経営者は、会社が危機的な状況に遭遇した場合、透明性、迅速性、正確性をもって、冷静に対応することが求められます。それが、社内外に対して信頼を維持するためのコミュニケーションとなります。
    また、平常時にあっては、リスクの原因となり得るコミュニケーションに
    配慮する必要があります。ハラスメントはその最たるものと言えます。
    「そんな意味で言ったのではない」の弁解は通用しません。
    リーダーが率先し、手本となることが望まれます。

  • 多様性をもつステークホルダーとのコミュニケーション
    経営者は、お客様、従業員、マネジメントチーム(取締役会)、金融機関、投資家、取引先、メディアなど、様々なステークホルダーと良い関係性を構築し、維持することが求められます。
    それぞれの領域に、多様性と様々な価値観や期待が存在することを理解し、それに適したコミュニケーション方法を普段から考えておく必要があります。

以上の様な、コミュニケーション能力を駆使して、
事業目標の達成、企業文化の形成、ステークホルダーとの良好な関係構築に努め、変化への対応、成長と持続的な成功を実現することが、経営者の特有のコミュニケーションと言えるでしょう。

コミュニケーションの「べからず」

もうひとつ考えなければならないのは、企業リーダーとして、注意すべきコミュケーションです。
ハラスメントに類するものがNGであることは明確なので、ここでは省きますが、ひとつ心得ておくべきでことがあります。
それは、

「欠点、弱点探しから入ること」

です。
この図を見て、皆さんは最初にどこに目がいきますか?

殆どの方が、この欠けている部分、足りないもの、欠けているものに意識が向かうと思います。これは「ゲシュタルトの円」と呼ばれているもので、人の認知の特徴を表しています。

こうした意識が働くのは、完全な円の姿、すなわち理想のイメージが下敷きになっているからです。もちろん、足りないもの、欠けているものに気づくことは、成長の礎として必要ですが、これに先に目が行って、不安や不満を覚えるのは順序が違います。

先ずは、あるもの、足りているもの、出来ていること、満足なもの、ここにもバランスよく焦点を当てた上で、不足、欠落の要素を考えていくことが大事です。
この順番で考えると、もしかすると、欠点と思っていたものがそうではないと気づくことになるかもしれません。

これは私のクライアントの中小企業経営者からのまた聞きですが、ある社長さんが、後継者と決めた息子さんを学校を卒業した後すぐに自社に入れず、社会勉強のために他社へ就職させたそうです。そこは同業界の大手企業でした。

5年程が経過し、そろそろ自分の手元に呼んで次期社長としての準備を始めようか、と考えました。まだ若いし、自社での仕事の経験を積んでもらいたい、と初級管理職(主任)の地位で採用しました。

ところが、この息子さん、性格はけっして悪くないのですが、自分が5年間勤めた大手企業と社員数100人に満たない父親の会社を比較し、先ず「不足しているもの、欠けているもの」に視点を当てて考えてしまいます。
どうしても理想の完全な円形のイメージが頭にあるわけですね。
ネガティブな発言や、評論家的な言動が目立つ様になります。
その発言、振る舞いに対し、周囲の社員は憤りを覚えながらも、社長の息子さんということで、言いたいことも言えず、社内の雰囲気は凄く悪くなったと。

伺ったエピソードはここまでなので、その後その息子さんがどの様に後継者としての道を歩まれているのか?まではお聞きしていません。
私の研修サービスを、是非ご紹介してもらうようお願いはしましたが(笑)

「欠点探し、不足探しから入るコミュケーション」は、一般管理職においても、「べからず」ですが、中小企業では社長もそれをやりがちということです。

自社の強みは何か?
活かせるリソースは何か?

という発想から入れば、「きめ細かい対応ができること」
「フットワークが軽く、迅速なサービスが提供できること」
「地域密着で、自治体のサービスとコラボレーションできる」
等々、色々出てきますよね。

そしてもう一つ、このエピソードで気づくことは、周囲の人がその息子さんに「言いたいことも言えず」という企業文化だということです。
これは現社長の責任でもありますね。

今日のお話はここまでです。
最後までお読み頂きありがとうございます。

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