ひでGのこだわり映画館11
今年の夏映画ベスト3
第1位 僕の家族と祖国の戦争
この映画は観る者に突きつけてくる。
あなたはどう捉えますか?どちらの立場に立ちますか?
監督のアンダース・ウォルターさんはインタビューの中でこう答えている。(公式ホームページから)
「どちらか一方を非難するのではなく、人と人との対立を探求する映画です。
ドイツ難民の物語は、私たちの総体的な物語や意識の中で、いまだに書き残されていない章だと言えます。」
第二次大戦について、たくさんの映画ができたが、この視点から描いた作品は僕は初めて観た。そうか、こういう視点があったのか。
多面的で、歴史的な出来事を描きながら、今日的な視点を持った素晴らしい映画なのに、あまり目立たず、ひっそり公開されているのがもったいない。
もっと多くの人に観て欲しい。
デンマークの物語。小国であるデンマークは、1939にナチスドイツに降伏し、市民はレジスタンスとして地下に潜り抵抗をしていく。
1945年4月、デンマークの市民大学の学長は、ドイツ司令部から、大学構内にドイツ難民を受け入れるように命令される。
難民の引き取りに駅に向かった学長ヤコブは、約束の10倍の500人の難民に途方に暮れる。
体育館を難民の避難場所にし、学生や職員に納得してもらう。
しかし、すぐに問題は起きてくる。避難場所に感染症が蔓延してしまい、多くの子どもに感染し、死者も出てきてしまった。
ヤコブは妻と共にその対策を講じようとするのだが、、
前述したとおり、今まで多くの第二次大戦ものを観てきたが、ドイツ人の難民については初めてだし、今まで考えたこともなかった。
時は1945年春、ナチスドイツの降伏は、
1945年5月7日なので、もう降伏直前、ドイツ国内にも戦争により家を失った人々はいたのだ。それらが隣国にも流れてきたのだが、きっとどこでも受け入れる気持ちに
はなれなかっただろう。
ヤコブの立場がとても微妙だ。デンマークはナチスに占領させていて、移民受け入れにNOとは言えない。
しかし、大学を支えるデンマークの市民は
敵国ドイツに来て欲しくない、当然ドイツ人を助けることはナチスに協力する、自国への裏切りなのだ。
板挟みに苦しむヤコブは、ついにある決断をする。それは祖国を裏切り、家族を窮地に追い詰めることになるのだが、、
どの決断が正しいかは分からないし、戦争が終わって70年以上経った今だから、
人権的な対応を!なんてヒューマンな立場から見ることもできるだが、あの場、あの町にいたとしたら、自分はどんな考えを持っただろう。
移民を「肥溜めから来た国民」なんて決め付けるあの国のリーダーを狙っている酷い輩グループは論外としても、各地で難民移民への対応で国内が真っ二つに分かれている国も多い。
調べてみると、今のデンマークは、人口の10%もの難民を受け入れているとのこと。
きっと、第二次大戦末期のこの問題は、今に通じる、いや、今のデンマークの最も重厚な課題なのだろう。
素晴らしい映画だが、唯一、注文?を言うとしたら、
邦題何とかならなかったかかな。
原題は「解放」という意味なのかな。もう一工夫、、難しいけどね、、
最後に再びお願いです。地味に終わってしまいそうな作品ですが、とても重厚で志の高い映画です。多くの方に観て頂きたいです。
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