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勇気の一歩、そして…… 友達編2


「もう知らない!」
昨日、ハルカは親友のミナと大ゲンカをしてしまった。

きっかけは、帰り道の何気ない会話だった。

「それ、ちょっと違うと思うな。」

ハルカの一言に、ミナの表情がピクリと変わった。

「ハルカはいつもそう!自分が正しいって思ってるんでしょ!」

「そんなつもりじゃ……!」

お互いに引けなくなり、気づけば大声で言い合いに。

「もういい!絶交だから!」

ミナは怒ったまま走り去り、ハルカも悔しくて、涙をこらえながら家に帰った。

次の日の朝。

(学校、行きたくない……。)

布団の中で丸くなりながら、ハルカはため息をつく。

もし教室で目が合っても、無視されたら?
もし、ずっと仲直りできなかったら?

考えれば考えるほど、胸がギュッと締めつけられる。

「……もう仲直りできないのかな。」

そうつぶやいたとき——

「ハルカー!遅れるよー!」

お母さんの声に押され、しぶしぶ家を出た。



登校途中、ハルカはふと、公園のジャングルジムの上に小さな男の子が座っているのを見つけた。

「……降りられないのかな?」

心配になって近づくと、男の子は涙目で小さく震えていた。

「怖くて、降りられない……。」

その言葉に、ハルカの胸がドキッとした。
——私と同じだ。

「大丈夫、ゆっくりでいいよ。私が下で見てるから。」

ハルカが声をかけると、男の子は不安そうな顔をしながらも、少しずつ降り始めた。

——あと一歩!

「頑張れ!」


ハルカの声に背中を押され、男の子は最後の段から思い切って飛び降りた。

「……できた!」

男の子の顔がパッと明るくなった。

その瞬間、ハルカの胸にも温かい気持ちが広がる。

「一歩踏み出せば、きっと変わる。」

そう思ったら、ミナに謝る勇気が湧いてきた。

「私も、一歩踏み出してみよう。」



教室に入ると、ミナは席に座ったまま、ハルカをちらりとも見なかった。

——怖い。やっぱり話しかけるの、やめようかな。

でも、ジャングルジムの男の子の笑顔が頭に浮かんだ。

(このままじゃ、何も変わらない。)

ハルカは勇気を出して、ミナの席の前に立った。

「ミナ……昨日、ごめん!」

ミナがゆっくり顔を上げる。

「……私こそ、ごめん。」

その一言に、ハルカの目が潤んだ。

次の瞬間——

「ハルカ、後ろ!」

ミナが急に驚いた顔をした。

「え?」

ハルカが振り返ると——

ドサッ!!

誰かが勢いよくハルカに抱きついた!

「きゃっ!?」

「ハルカー!!!」

見覚えのある顔。なんと、公園のジャングルジムで助けた男の子が飛びついてきたのだ。

「わあっ、どうしてここに!?」

「学校で会えるっておねえちゃんが言ってた!」

「……おねえちゃん?」

ハルカが不思議に思っていると、ミナが笑いながら言った。

「この子、私の弟だよ!」

「ええっ!?」

まさかの展開に、ハルカは目を丸くした。

「昨日、帰ってきた弟が『優しいおねえちゃんに助けてもらった!』ってずっと話してたんだよ。まさか、それがハルカだったなんて!」

ミナがくすくす笑う。

「なんか、運命感じるね。」

「……うん!」

ハルカも思わず笑った。

その瞬間、昨日のケンカなんて、すっかりどこかへ吹き飛んでいた。


放課後、ハルカとミナはいつものように並んで歩いていた。

「弟が『おねえちゃんとまた遊びたい!』って言ってたよ。」

「ふふっ、じゃあまた会いに行こうかな。」

ハルカが空を見上げると、雲の隙間からまぶしい太陽の光が差し込んでいた。

「勇気って、ちょっとした一歩なんだね。」

「そうだね。でも、ハルカはもう一歩踏み出してるよ。」

「え?」

ミナがにっこり笑う。

「だって、ほら。今、私と並んで歩いてるでしょ?」

「……!」

そう言われて、ハルカはびっくりしたあと、ふっと笑った。

——そうだ。私は、ちゃんと一歩踏み出せたんだ。

仲直りの一歩、そして、新しい未来への一歩を——。

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