現実と仮想現実の「境目」が溶け合い、なくなっていく世界
はじめに
最近、メタバースというキーワードが世間を騒がせています。
メタバースとは「現実世界とは異なる3次元仮想空間」を指しますが、ここでは「現実」と「仮想空間」の境目が曖昧になっているという点で整理を試みます。
現実と仮想現実の「連続性」
デジタル技術の進化と深化に伴い、最近は、現実空間ではなく仮想空間の世界が急速に拡大しています。さながら、SFの世界のように感じますが、仮想空間上に生きる「ヒト」がリアリティを持って生きられる時代は、もうそこまで来ていると思うこともあります。
ただし、実際のところ、「世の中の人すべてがある日突然仮想空間上に暮らす」などということは起こることがないでしょう。むしろ、現実と仮想現実の両方向から融合した世界になっていくでしょう。
現実と仮想現実の空間は、明確に分けられるものではなく、両方向から染み出されていくように、その「境目」が曖昧になっていく…このような概念は1990年代から真面目に検討されていました。たとえば、以下の図は1997年に発表されたもので、現実ではない世界としての仮想現実(バーチャルリアリティ)、そして現実と仮想現実の中間に、複合現実(MR)と呼ばれる領域があることが示されています。
ここで、
現実環境:自然の摂理で成り立つ現実世界。五感五体で感じ、振る舞える世界。
複合現実:現実世界の上に仮想データが重ね合わされた融合世界。あるいは、各種デバイスを活用して、仮想データを五感で感じ、操作できる融合世界。
仮想現実:あらゆる経験を可能にする仮想世界。肉体は不要で、意識だけが残る世界。
という定義がそれぞれあります。
現実と仮想現実の「融合」
上述の通り、現実と仮想現実の空間は両方向から染み出していき、融合していくわけですが、その方向性は大きく、以下の2つがあります。
AR (Augmented Reality):現実空間上に仮想現実の情報を重ね合わせる。あくまでリアル世界が“キャンバス”。リアルなヒト or 空間に投影することでデータをより直感的に理解したり、操作が可能になることが価値。
VR (Virtual Reality):仮想現実上で現実空間のような体験を与える。バーチャルにしか存在しないモノ/カタチをリアルに触れられることでデータをより直感的に理解可能になることが価値。
「魔法」が扱えるようになる世界
このような現実と仮想現実が溶け合い、融合したセカイでは、これまでの現実世界とは全く違う、提供しえなかった価値が提供できるようになると考えています。さながら、
これまでは「魔法」としか思えなかったことが実現できる世界
になっていくわけですが、それは具体的にはどのようなものか? 今後いくつか記述していこうと思っております。
(つづく)