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【商店街とまちづくり】トークイベント ~油津商店街の事例~
本日は【商店街とまちづくり】をテーマにしたトークイベントに参加してきました。
私どもの社会福祉法人悠久会も「福祉とまちづくりとSDGs」をテーマに様々な活動を行っているため、非常に興味深い内容でした。
島原市の商店街も空き店舗問題や中心市街地活性化を目指していますので、まちづくりのヒントになることを期待し、楽しみに聞かせていただきました。本記事では、そのトークイベントの内容を紹介いたします。
・テーマ:商店街とまちづくり
・日時:2024年7月27日(土)10:00~11:30
・場所:水脈 mio
・登壇者:木藤亮太
・モデレーター:佐々木翔(INTERMEDIA代表/水脈 代表取締役)
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登壇者:木藤亮太さんプロフィール
木藤亮太さんのプロフィールについては、下記のイベント案内をご参照ください。
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木藤さんは、宮崎県日南市の油津商店街(かつて「猫さえ歩かない」と言われた)の再生事業に取り組み、商店街を活性化させた事例をお持ちです。
木藤さんのnoteのプロフィール
まちづくりの方向性の変化
商店街活性化の前提の話として、まちづくりの方向性について説明されていました。
第1世代:高度成長→その破綻時代(1970年代)
第2世代:都市計画→まちづくり世代(1980年代)
第3世代:大震災→市民参加・ワークショップ時代(1990-2000年代)
第4世代:人口減少・地方格差→地方創生時代(2010年代)
第5世代:コロナ禍→どう変わる?(2020年代)
「まち」はつくっていくものではなく、勝手に歩いていくもの。
このトークイベントの前日には「はみ出せ島原!高校生共創プロジェクト」にも、木藤さんが参加されていました。現在の高校生世代は、2014年に「まち・ひと・しごと創生法」の成立した時には、すでに物心がついており、地方創生についてニュースなどで耳にする機会が増えたため、地方創生やまちづくりに興味関心が高いという印象を感じたそうです。
確かに、私たち大人世代が学生時代には地域活性化に興味も乏しく、話題にも上りませんでした。多くの学生が「早く地方を出て都会に行きたい」と考えていたのではないでしょうか。
今の10代の若者は、ある意味で「地方創生ネイティブ世代」と言えるのかもしれませんね。
油津商店街での取り組み
333人の書類選考、9人の公開プレゼンを勝ち抜いて日南市のテナントミックスサポートマネージャーに選ばれた木藤さん。
成功の要因について自ら分析してみると
・市長、マーケティング専門官、商店街マネージャー全てが30代
・通うのではなく「住む」こと、描くだけでなく「動かす」こと
上記が要因だったのではと語っています。
木藤さんは、最初の1年目から拙速に成果を求めるのではなく、まずは土台作りと地域との信頼関係作りが重要と考え、商店街の人達と対話を重ねることから始めたそうです。
ABURATSU COFFEEの開業
空き店舗誘致を進める中で「よそから来たので、途中でいなくなるのでしょ?」と思われるのが嫌で、地域に根付いた活動をする姿を見せたいと決意した木藤さん。古くから商店街の憩いの場であった喫茶店「麦藁帽子」を改修し、「ABURATSU COFFEE」(Instagram)を自ら経営することにしました。
銀行から800万借り入れてリノベーションを行い、自ら商店街で商売を始めることで、商店街の人たちと同じ目線に立てたことも良かったと語っています。
株式会社 油津応援団
ABURATSU COFFEEを開業すると同時に株式会社 油津応援団という会社を設立しました。3名で30万ずつ出し合い、小さく法人登記するところから始め、最終的には47名の出資者から約1,600万円を調達することができました。
商店街の空き店舗活用
ABURATSU GARDEN
商店街の空き地に6つのコンテナを用意し、小さくお試しで商売を始められるスペースを提供。
油津Yotten
多世代交流スペースとして使えるイベントスペースや、ダンスレッスンなどの貸しスペースを整備。
あぶらつ食堂
屋台村形式の食堂で以下の5店舗が出店しています。
・麺処くら家
・居酒屋ダイニングYAKIYAKI
・中華料理瑚喃
・魚匠和さび
・pizza bar &T
fan - aburatsu bar & hostel -
大学生が起業して作ったゲストハウス。2月には広島カープが日南に春期キャンプに訪れることから、広島カープファンで満室になるそうです。
商店街活性化での様々なエピソード
人と人がつながる仕掛け
油津Yottenは、ガラス張りで扉1枚で空間が隣り合っているため、ダンスを踊る子ども達と、自治会などの会議を行う大人世代のとの交流が偶然に生まれたりしたそうです。
商店街アイドル(かつおアイドル) ボニート×ボニート(Instagram)
油津商店街生まれのアイドルで、日南市公認のふるさとPRアイドルです。
彼女たちも、一度は街を離れてしまうかもしれませんが、商店街で作った思い出は大切な財産であり、いつの日か戻ってくることを期待しているとのこと。
大学生が起業したゲストハウス fan - aburatsu bar & hostel -
県外の大学生がビジコンをきっかけに「商店街に宿を作る!」という提案を実現しました。大学を1年間休業して資金を集め、宿を始めました。
商店街に宿を作った前例がないため、賛同を得にくかったそうです。最終的には「商店街の時代を担う若者の起業を応援しよう」という機運が生まれ、応援してもらえるようになったそうです。
IT起業が商店街に進出
若者が都会に出る理由の一つが、地元にやりたい仕事がないこと。コロナ禍前からテレワークなどの新しい働き方を模索していた中、東京のIT企業が商店街に。
この出来事は商店街に大きな変化をもたらしました。13社、120名の雇用が生まれたことで、商店街でランチや夜は宴会で消費が増え、地域の伝統行事(お神輿)の担ぎ手確保にもつながりました。祭りの担い手の高齢化に悩んでいた、おじさん達の負担軽減にもつながりました。
商店街活性化について
商店街は再生しません。
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木藤さんのこの言葉、私は、すごくインパクトがあると感じました。
彼の意図は、昔の良かった時代の商店街に戻りたい。と考える世代がいることが一つの壁になりうるということです。
人口減少下での地方の商店街では、昔に戻ること(=再生)を目指すのではなく、「この時代に適した商店街の姿は何か?」を模索し「時代のニーズに合わせた新たな商店街の姿を実現することが大事です」と語っています。
木藤さんは「再生」を目指すのではなく、「生まれ変わる」ことを目指すしているため「再生」という言葉は使わないそうです。
また、「商店街の課題を解決する」のではなく、「地域の課題を解決する」ことが重要だと考えています。商店街の関係者のメリットだけを考えるのではなく、地域全体、市民全体のメリットを提示することが、応援してくれる人を増やすことにつながると考えたそうです。
まちの活性化とは?
まちの活性化とは「お店が増えること」なのか「人通りが増えること」なのか。木藤さんは、まちに関わる皆が考え、行動することが大事だと語ります。
「大事なのは、小さな変化の積み重ね」
「量(KPI)を目的にするのではなく、コトが起きたことを評価する」
と強調しています。
まとめ
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今回のトークイベントでは、木藤さんが商店街活性化の実践事例をわかりやすく解説してくれました。
まちを活性化するためには、大きな変化や大きな資金を投じることだけが手段ではなく、若い世代がチャレンジしたいと思えるような雰囲気作りや、小さくても成功事例や盛り上がっている様子を見せることで多様な人達から応援してもらい、巻き込むことが大切だと学びました。
社会福祉法人悠久会でも、花ぞのパン工房が商店街で訪問販売を行うなど商店街との関わりを持っています。私たちも商店街の活性化に貢献できればと考えています。
社会福祉法人悠久会は「まちづくり」に積極的に取り組んでいます。その取り組みに興味がある方は、下記の記事をご参照ください。