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福祉事業所見学 ~就労支援サービス~ 「まなぼう会」島原半島にて、有志で福祉を学ぶ団体の活動レポート

長崎県の島原半島にて、障がい福祉を学ぶことをテーマに集う「まなぼう会」2004年頃から活動を始め、講師を招いた研修を行ったり、会員同士の親睦を深めたり、時には県外へも事業所見学に行くなど、福祉を学びたい人達が法人の垣根を越えて有志で運営しています。今回で195回目の開催となります。

私も、まなぼう会は初期頃から参加させていただいており、現在は企画係として運営のお手伝いをしています。


まなぼう会の福祉事業所見学

今回のまなぼう会では、福祉事業所の見学を行いました。コロナ以前は県外の事業所見学にも出かけることもありましたが、コロナ禍においては感染予防の観点から事業所見学を控えていました。

しかし、コロナが五類に移行したことにより、他法人の取り組みを見学することも学びにつながるよね。との意見が企画会議で出ました。
相談支援事業所の相談支援専門員は、サービス利用計画の作成やモニタリングなどで他法人の事業所を訪問する機会は多いですが、生活支援員や職業指導員などの支援員は他法人の事業所を見学する機会が少ないのが現状です。そこで、法人の垣根を越えた交流と意見交換の場とするべく、事業所見学を再開することにしました。

今回の見学では就労系事業所を2ヶ所巡ります。午前中に①合同会社VITA 障がい者就労支援センター 南島原コミュニティ (Instagram)を見学しました。
午後からは、私たち②社会福祉法人悠久会の地産地消のおむすびカフェ「島原むすびす」を見学し、むすびすのお弁当を食べながら昼休憩を行いました。その後、きらり作業所(Instagram)を見学し、最後に見学会のまとめを行いました。

合同会社VITA 南島原コミュニティ 見学

南島原コミュニティ外観

南島原コミュニティは長崎県南島原市西有家町にあり、就労継続支援B型事業のサービスを提供しています。

Vitaに込めた意味

~Vitaとは"人生"という意味です。働くことを通じて自立し充実した人生が送れるよう、その将来設計のお手伝いが出来ればとの思いをVITAという社名に込め設立しました。~ 

運営方針

~"働きたい"という1人1人の思いを大切にする事業所です~
障がいの種別や程度を問わず、自分の意思と選択で自立した自分らしい生活が送れるようにお手伝いします。

南島原コミュニティでの就労支援の取り組み

就労継続支援B型事業所では、利用者さんが働くことを支援しています。利用者さんは、作業の対価として工賃を受け取ることができます。利用者さん達は職員と共に、事業所内で様々なお仕事に取り組んでいます。以下に、実際の作業内容を紹介いたします。

【主な作業内容】
・製麺加工など
・布、縫製、製作、販売
・施設外就労(清掃作業・在庫チェック)
・その他(受注に応じ対応)

作業所内の様子
餅ふみ用ぞうり

南島原コミュニティでは、一歳のお誕生日のお祝い用に、餅踏み用布ぞうりも製作・販売も行っています。

また、就労支援では最終目標として一般就労も目指しており、一般就労を目指すための様々な支援を行っています。

【就労支援内容】
・履歴書、職務経歴書作成指導
・職業マナー指導など
・ハローワークへの登録
・職場実習調整など
・関係機関との連携など

憧れの一般就労を目指す利用者さんに対しては「本人の夢を応援する支援」として、具体的なアドバイスを行ったりすることもあるそうです。

製麺加工などの様子

南島原コミュニティでは、様々な障害を抱えた人が働いていますので、様々な工夫をしているそうです。

例えば、片麻痺がある方には数を数える確認作業をお願いしたり、治具(じぐ)を用意して片手でも作業が行える工夫を行っています。

片手でも袋詰めができるように作成したオリジナルの治具

他にも、自閉傾向のある方は製品の完成度に対する良い意味でのこだわりを発揮されているので、製品チェックの担当をお願いすることも。

また、本人の作業能力を見極めながら、できる作業を担当してもらい、しっかりと作業能力のアセスメントを行っているそうです。

さらに、食品を扱う仕事でもあるため、衛生管理には十分に気を配り、箱折り作業においても手袋を着用するなど、納品物の品質を高める努力をされています。

以前は、作業も職員が担当しなければ対応できない工程も多かったのですが、現在では利用者さん達の作業能力が高まり、大部分の工程を利用者さん達が担当することができるようになりました。

作業所の見学後は、質疑応答の時間を設け、様々な質問が行われました。

社会福祉法人悠久会「島原むすびす」の見学

地産地消のおむすびカフェ「島原むすびす」

社会福祉法人悠久会が運営する「島原むすびす」は、長崎県島原市片町にあり、島原駅の裏手にあるパレットビルの1階に店舗を構えています。
パレットビルは、放課後デイサービス「スマイル」、相談支援事業所「あいりす」、障がい者就業・生活支援センター「ぱれっと」、企業主導型保育園「いろは保育園」などの様々な福祉関連の事業所が入っているビルです。

島原むすびすのコンセプト

「島原半島の美味しいをむすぶ、人と人との笑顔をむすぶ」を理念に掲げ、地産地消をコンセプトに、島原半島の食材を活用した独創的なおむすびを提供しています。
島原むすびす創業ストーリーはこちらからご覧ください。

島原むすびすの商品

島原むすびすの代表的な商品には、火山の恵みを活かした「火山弁当」があります。こちらの弁当は九州駅弁グランプリで優秀賞を受賞しました。
おむすびのラインナップとしては、雲仙ハムおむすび、黒米雑穀おむすび、じてんしゃ飯おむすびなど、島原半島の食材を活かしたおむすびを多数販売しています。

島原半島の火山の恵みを活かした火山弁当
島原半島のソウルフード「雲仙ハム」のおむすび

島原むすびすの利用者支援

就労継続支援A型事業所である島原むすびす。A型事業所として、利用者さん達の平均的な作業能力は高いものの、精神障がいの方は順調そうに見えても体調に波があり、出勤が安定しないこともあります。また、身体に障がいのある方を補助する仕組みや作業工程の工夫も行っています。

~先輩が後輩を育てる文化と向上心~
島原むすびすでは、先輩が後輩を育てる文化が根付いており、向上心のある利用者さんも多いため、商品の全工程にほぼ対応できるスキルを身につけているそうです。

見学者からは以下の質問がありました。

Q:利用者さんにとって、難易度が高い作業は?
→包丁を使う仕事が難易度が高いです。例えば特別支援学校の新卒者の場合は調理未経験のことも多いため、ゆっくり少しずつ、本人のペースに合わせて慣れてもらうようにしています。

Q:商品開発はどのようにしている?
→季節の食材や旬の食材を活用してメニューを考案しています。新商品を出す場合は、皆で試食も行います。

Q:おむすびが売り切れている時は、その場で作ってもらえるのか?
→島原の特別な具材を使っている場合は対応できないこともありますが、サイドメニューなどは柔軟に提供可能です。午前11時にオープンするのですが、早い時は11時30分頃には売れてしまうことがあるので、お早めのご来店、または電話で事前にご注文いただくと取り置きも可能です。

店内の様子
シェイクなどのアイディアは利用者さん達が考案することも

島原むすびすの弁当の実食(昼休憩も兼ねて)

昼休憩の時間に見学先の島原むすびすのお弁当をいただきました。

チキン南蛮BOXと豚しぐれ煮おむすび、塩昆布 柚子胡椒おむすび

私はチキン南蛮BOXとおむすびを2個セット注文。700円でした。昼休憩中は初対面同士の方もいましたので、自己紹介などアイスブレイクを行いました。

社会福祉法人悠久会「きらり作業所」の見学

続いては島原市新田町にある「きらり作業所」(Instagram)の見学に。島原むすびすからは徒歩で5分もかからない位置関係です。

きらり作業所の外観

きらり作業所は就労継続支援B型事業と生活介護の多機能型で運営されています。

きらり作業所での作業内容

きらり作業所では様々な仕事を行っています。島原市の公式ゴミ袋を年間約200万枚ほど製作したり、農作業(野菜の収穫)、野菜の袋詰め作業、島原市が管理する公有地の清掃(足湯やヘリポート)、Fab事業(デジタル工作機械でのモノ作り)、島原名物のかんざらしの白玉作りなど、アナログからデジタルまで幅広い作業が特徴です。
様々な作業があることで、利用者さんの適性にあった仕事を提供しやすいこというメリットがあります。

Fab事業:3Dウッドターニングマシンの説明
3Dウッドターニングマシンの作例と、しまばらんスプーンの製作の様子
島原市のゴミ袋を製作しています
島原名物「かんざらし」の白玉作り

島原の伝統的スイーツ「かんざらし」
白玉粉で作った小さな団子を「島原の湧水」で冷やし、蜂蜜、砂糖等で作った特製の蜜をかけたもので、口の中でとろけそうな上品な甘さと喉越しのよさが人気の島原のスイーツです。
(観光情報:かんざらし

島原市

きらり作業所での就労支援

きらり作業所では就労継続支援B型として利用者さん達の作業の対価として工賃を支給しています。しかし、B型での定着を最終目標とするのではなく、B型→A型→一般就労とステップアップを目指した就労支援を行っています。実際にステップアップし、一般就労につながるケースもあるそうです。

ステップアップを希望する利用者さんには集中的な支援を行い、モニタリングの頻度を高めて適切な目標設定支援と課題の洗い出しを行います。また、企業や他の就労継続支援事業所を見学し、モチベーションを高め、具体的なイメージを高める取り組みも行っています。

【見学者からの質疑への応答】

Q:きらり作業所の現状の課題は?
→おかげさまで利用者さんが増えてきており、少し事業所が手狭になってきています。増築するか、作業所を別に建設することで、ニーズに応えられるため、今後の事業計画として考えています。

Q:利用者さんはどこから通ってきていますか?(生活拠点)
→在宅が8割、入所施設やグループホームから残り2割の方が通ってきています。

Q:付加価値をつけた商品作りについてどう工夫をしていますか?
→どこで売るかも重要だと思います。例えば「しまばらんのスプーン」を販売していますが、100円均一のお店に置くと100円でしか売れません。しかし、島原は観光地であるため、お土産物屋さんで売ると高く売ることができます。当然、値段が上がる分、品質の向上は求められますが・・・
(※「しまばらん」とは?)

まとめ ~見学者からの感想~

・就労支援事業所を見学することで、利用者さんの将来の進路先を選ぶ際のポイントをつかむことができました。
・他の法人の事業所を見学する機会が少なかったので、いい刺激になりました。今日学んだことを自分の事業所に活かせればと思います。
・身体障がいの方に対して、道具を作ったり工夫することで、参加できる作業の幅を広げている点が勉強になりました。
・コロナ禍で、他法人の見学ができなかった中、久しぶりに良い機会をいただきました。支援者の皆さんが穏やかな雰囲気で支援をしていると感じました。
・作業所内が整理整頓されていたのが印象的でした。
・商品の付加価値の付け方について考えさせられる機会になりました。

参加者からは、コロナ禍で途絶えていた事業所見学に久しぶりに参加したことで、刺激を受けたり学びを得る機会となったとの感想をいただきました。

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