『前のめりで行く』久保利英明×山田秀雄×菊間千乃
久保利英明×山田秀雄(弁護士)×菊間千乃(弁護士)
対談 Vol.4
久保利「次の世代にどういうメッセージを贈りたいか。どんな弁護士になってほしいか」
山田「まず、弁護士に対するネガティブキャンペーンみたいなことは絶対にするべきではないし、多様性のあるたくさんのテレビチャンネルを同時に見れる楽しさって、弁護士以外の仕事ではあまりないと思うんです」
久保利「ないね」
菊間「そうですね」
山田「自分がタフで、人の心に対して優しさを持っていれば、70、80になってもやれる仕事ですしね。それは後輩に伝えていかなくちゃいけないし、古曳先生が言ってた心躍る職業なんだということを教えたいですよね」
久保利「なるほど」
山田「年次によって、60代70代になると、知識とかパワーは少しは落ちてきます。だけど、経験からくる知恵に関しては、弁護士の仕事ってかなり経験主義の部分があるので、これはやっぱり継承していかなくちゃいけない。マニュアルだけ作って「はい、これ見てやっておいて」という、大量処理、大量生産のところもある。批判するわけじゃないけどそうなってくると、弁護士の仕事はどこかやっぱり職人仕事的なところがあるので」
久保利「そうね」
山田「その職人仕事的な部分を、匠の技みたいな部分を伝承していくということは、やっぱりface to faceで、マンツーマンでやっていかないとダメなんです。マニュアルでは絶対できないので、そこを伝承していきたいなと思います」
久保利「なるほどね。そういうことだそうですよ、菊間さん(笑)」
菊間「うーん」
山田「彼女はもうバリバリの当事者感覚だから」
久保利「僕は山田先生に継承してもらうほど立派なものは何もないと思うけど」
山田「いやいやいや、背中を見て」
久保利「ただ、走ってるだけで良いというなら(笑)後ろから追いかけてくるやつが、あいつまだ倒れずに走ってるぜという、それがインスパイアする元になるなら」
山田「ものすごくそれは強いですね」
久保利「走ってましょうという感じですね」
山田「元気さを見せ続けてくれる存在って、やっぱりすごく貴重だし」
菊間「そうですね」
山田「もうそろそろね。ゆっくりされたいんだというのはありだと思うし、そういう方もたくさんいますよね。それを否定するわけではないんだけど」
久保利「それはもちろんね。そういう人はそういう人で」
山田「こんなに頑張ってる77歳って」
久保利「(笑)」
山田「多分日本でもそう数いないし」
菊間「うん」
久保利「誰もやってないから、世の中がきっと求めているんだろうと思う」
菊間「うん」
山田「一方でプライベートでは、世界170何か国」
久保利「170ヶ国。当分おしまいなんですよ」
山田「ただ仕事だけじゃないじゃないですか。そこはやっぱりスーパーだし、羨ましいなと思う。仕事ももちろんすごく重要だけど、そういったね、ワークライフバランスの中で、自分のプライベートな生活の中の充実というのもやっていきたいんですけど、その調和がとっても難しいよね」
菊間「そうですね」
山田「ついつい忙しくなっちゃうと仕事のほうに引っ張られちゃうし、年取って名誉職的なものが増えると、それでやたら時間をとられるとかですね」
久保利「だから勲章はいらないとかさ、名誉職やらないとか」
山田「そうですね、はっきりしないとダメですね」
菊間「うーん」
久保利「はっきりしてるほうがいい」
山田「捨てることの大切さ」
久保利「もう持たないこと、捨てること」
山田「捨てることがなかなか難しいな」
久保利「(笑)」
菊間「久保利先生はいつ会っても、新しいことやってますよね、何か」
山田「そうそうそう」
菊間「何か。またそんなこと」
久保利「また始めた(笑)」
菊間「YouTube始めたとかね」
山田「びっくりしちゃう」
菊間「びっくりしちゃうというか、なんかこういくつになっても新しいことを始めていくという、それを見て、私たちは頑張らなきゃいけない」
山田「そういうことなんだよ」
菊間「日々の忙しさなんかに流されてちゃいけない」
山田「そうなのそうなの」
菊間「って、すごく思います」
久保利「頑張ってるんじゃなくてさ、目の前にそういう」
山田「楽しい」
菊間「そう、楽しい」
久保利「面白いものが落ちてるんだからさ。これ遊ばないでどうするっていう。真剣にやればきっと世の中の役に立つ」
山田「ちょっと大谷選手みたいなところあるんですよ」
久保利「はあ」
山田「大谷ってあれだけのことをやっていても、努力してるとか辛そうにしてるのが見えない」
久保利「見えない」
山田「何か楽しそうに、投げて打って走ってる。苦労の跡とかね、それが見えないですよね。天才的なとこもあるんだろうし、努力もしているんだろうけど」
久保利「見せないんでしょうね」
山田「久保利さんもね。なんか俺、辛い辛い、だけど頑張ってるっていう感じじゃないんだよね」
菊間「そうねえ。私は、接点はあるけれども事務所が違うから、側で久保利先生を見ていないので、一週間ぐらい久保利先生を見てみたい」
久保利「(笑)」
菊間「ずっと。どんなふうにしてるんだろう」
山田「生き物を観察するみたいな(笑)」
菊間「そう」
久保利「美味しいものを食わないと、やっぱり元気出ないよね」
山田「美味しいお酒も」
久保利「酒もそう」
菊間「食欲落ちません?平気?」
久保利「いや、落ちる落ちる」
菊間「落ちます?やっぱり」
久保利「落ちるというか、量がね。たとえばステーキ400食ってたのがね、もう200でいいやという感じにはなりますよね」
山田「でも十分食べてますよ」
久保利「(笑)」
菊間「すごい」
山田「相当食べてる方だと思いますよ。昔が大変だったもん(笑)」
菊間「たくさん食べられるとね。人生楽しいですよね」
久保利「大事なことですよ。特にどこが悪いということもなくてね、顔と根性だけ悪いぐらい言われてさ、やってる分には(笑)いいですよ」
菊間「(笑)早くそういうときに戻りたいですね」
久保利「ねえ」
山田「ほんとうそうだね」
久保利「長いお付き合いの中で、僕に聞きたいこととか、言っておいてやりたいこととか、お説教したいこととかありませんか。はっはっ(笑)」
山田「40年前から久保利さんを見ていて、常に尖って最先端で、休まずに走り続けてるトップランナーというイメージが強くて、それがあるがゆえに、私もその背中を見ながらやれてきたというところは、本当に特別に感謝してます」
久保利「(笑)」
山田「人間100まで生きる人はいますけど、久保利さんがどこまでね、尖り続けて新しいことをやり、我々に刺激を与え、啓発をしてくのかというのを、絶対見届けたいなと思ってますし、自分も体が元気でね、やれる限りはやっぱり、ついていきたいなという思いがあります」
久保利「なるほど」
山田「久保利修練の第一期生ですから」
久保利・山田「(笑)」
久保利「そうなんだよね」
山田「そうなんですよ」
久保利「新しいことを切り拓いていくという点では、セクハラとか」
山田・菊間「はい」
久保利「誰も弁護士が取り上げない時代にセクハラということをやって、そのあとパワハラになってきて」
山田「はい」
久保利「コンプライアンス上、大きな問題になってるじゃないですか」
菊間「はい」
久保利「その第一人者という地位をね」
山田「いや、最初にやったからですよ」
久保利「えらいもんですよ。だから最初が大事というわけ。ね」
菊間「久保利先生にお聞きしたいのが、どういう心持ちで日々いらっしゃって、新しいことを、こういうことをやってみたいという方向にアンテナを広げていらっしゃるのかをすごく知りたいです」
久保利「うん。知らないことわからないことって、人によってはヘジテイトする人もいるけれども。たとえばいま僕、コインチェックというところの社外取締役をやってるんですけど、コインチェックって500億円ハッカーに盗まれて」
菊間「はい」
久保利「で、申し訳ありませんでした。と言ってみんなに500億円払ったんだよね」
山田「ほお」
久保利「ようするに1000億円、金があったということだよ」
山田・菊間「うーん」
久保利「上場もなにもしていない、仮想通貨といわれた、その会社がどうしてそんなに儲かるんだろうか。なんか秘密があるのかなぁと。その状況の中で社外をやってくれませんかというふうに言われたら「面白そう、やるやるやる」という感じじゃないですか」
菊間「うーん」
久保利「でもみんなに聞くと、そんな危険なものはやらないと思うよというふうに頼んだ方の側でも思っていて「いや、やりましょう」と返事が来たんで驚いたと。なんで驚くのかわからない。わからないことだらけで、どんなふうに通貨とか経済が金融が化けるか、分からない最先端にいる。そのチャンスに社外取締役やらしてくれるって、ありがたいって思うじゃないですか」
山田「なるほど」
久保利「ようするに好奇心だよね」
菊間「ふーん」
山田「保身がないんですね、保身という発想がない」
久保利「保身といったって、殺されることはない。命までは奪われないというふうに思うけれども。まあ、奪われたってしょうがねえと「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」っていうね」
久保利「やっぱり知らないこと知りたいよねって。この世界どんなになってるんだろうかって。それを少なくとも社内取締役は務まらないけど、社外取締役として、ウォッチはできるという監視・監督が出来るというポジションを頂けるなら、これ勉強のチャンスだなと」
山田「同じなんですよね」
菊間「久保利先生ぐらいの歳でキャリアがあったら、こういう椅子に座ってこういう感じの人が(椅子にふんぞりかえる仕草をしている)」
山田「そう」
菊間「ほとんどだと思うんですけど、久保利先生っていつもかかとが上がってるっていうか」
久保利・山田「うん」
菊間「かかとが上がって」
久保利「前傾姿勢(笑)」
菊間「前のめりなんですよね」
久保利「前のめり(笑)」
山田「(笑)」
菊間「前めのりで、何かあったらぱっと行くみたいな。その態勢がおっしゃる通り好奇心だし、好奇心プラスフットワークですよね」
山田「うん」
久保利「ああ」
菊間「そこを本当に見習いたいといつも思ってます」
久保利「いや、誰でもできるんだと思うよ」
菊間「できないです。できない」
久保利「椅子変えたら良いんだよ」
菊間「(笑)空気椅子みたいなやつね」
久保利「僕なんか今さ、ゲーマーがやってるさ、ゲームが24時間その椅子で出来ますというやつに、秘書に頼んで変えてもらった」
菊間「そんなのがあるんですか(笑)」
久保利「あのね、なんていうのコンピューターゲームみたいな」
菊間「eスポーツの人たちが」
久保利「わーってこうやってるんだよ、ずっと」
菊間「へえ」
久保利「嫌なじじいだね(笑)」
菊間「いやいや、全然じじいじゃないから。そのまま走り続けてください」
久保利「やってらんないよ(笑)」
山田「坂本龍馬がね「どぶの中でも前のめりになって死にたい」とかいう有名なセリフがありますけど、久保利さん見てるとそんな感じね」
菊間「ほんとそう。そんな感じ」
山田「アームチェアにこう座ってっていうイメージはない」
久保利「いやあだから前のめりになって這い上がってくるんだ(笑)」
山田「(笑)」
久保利「どぶの中から、あいつ這い上がってきたわーっていう(笑)」
菊間「そう。だから久保利先生が這い上がってる後ろの方を、山田先生は近いけど、私はさらに後ろの方をこうやって這いつくばって(笑)」
久保利「ほふく前進してる(笑)」
菊間「久保利チルドレンが後ろでみんなほふく前進してついていってますから(笑)」
久保利「いやあ、面白い(笑)」
<撮影後>
菊間「素人じゃないから、この格好」
山田「久保利さんだからこの格好してきた。こんな格好で普通出てこないよ」
菊間「ねえ、目立ちますよ」
久保利「目立つよそれは。白黒コンビだもん」
山田「ボディガードなんで」
菊間「そういう感じ」
山田「久保利さんがね、真っ白のカシミアのコート着て、真っ黒の」
菊間「こういうマフラーしてね」
山田「昔、あれどこでしたっけ、神戸の有馬温泉」
久保利「神戸の有馬温泉」
山田「有馬温泉で新幹線乗ったらすごい混んでたんだけど、2人で歩いたら、ばーっと道がね」
菊間「人が」
山田「みんな見ないようにして目だけこう追ってるんだ」
菊間「すごいな」
【山田秀雄 PROFILE】
弁護士
1952年生まれ
慶應義塾大学法学部法律学科卒業
筑波大学大学院経営政策学部企業法学専攻科修了
1984年 弁護士登録
コメンテータとしても活躍
ハラスメントという言葉が浸透する前から
様々なハラスメント問題にも取り組んできた草分け的存在
【菊間千乃 PROFILE】
弁護士
1972年生まれ
早稲田大学法学部卒業
1995年 株式会社フジテレビジョン入社 アナウンス室配属
アナウンサーの仕事を続けながら
2005年に大宮法科大学院大学夜間コースに入り弁護士を目指す
2007年フジテレビジョンを退社
2009年大宮法科大学院大学修了
2010年司法試験合格 2011年弁護士登録