『私のネイティブが多様性』久保利英明×クリスティーナ アメージャン
久保利英明×クリスティーナ アメージャン(一橋大学 大学院 経営管理研究科 教授)2021年3月対談 vol.1
『(初対面は)すごい怖い先生来てる』
久保利「アメ―ジャンさんと、結構、僕、古いんですよね」
アメ―ジャン「古いです」
久保利「最初にお目にかかったのは、エーザイの」
アメ―ジャン「そうそうそう」
久保利「社外取締役におなりになってた頃に、お会いしたのかなあと思います。さすがエーザイこう来たかと」
アメ―ジャン「あはは(笑)」
アメ―ジャン「よく覚えてます。いやあ、すごい怖い先生が来てるとはじめ思ったんですけど」
久保利「(笑)」
アメ―ジャン「話聞いたら、ほんとにロジカルで面白くてすごく良かったんです。コーポレートガバナンスのこと、こんなにロジカルで面白い話ができる」
久保利「ふふ(笑)」
アメ―ジャン「先生は初めてで。そのときからすっごい尊敬してます」
久保利「日本という国を選んでくれて、社外取締役をやろうなんて、ディスペレートな話じゃないですか」
アメ―ジャン「(笑)」
久保利「日本って大体変化はしないわ、多様性はないわ、外ものっていうかよそ者を嫌がる雰囲気があって、自由闊達に色んな事をいろんな会社でおやりになってることが素晴らしい。
今一緒にJPXっていう日本取引所グループで社外取締役やってるけども、多様性でないとまともな組織じゃないよねっていうのを、アメ―ジャン先生は自ら示してらっしゃるっていう」
アメ―ジャン「ははは(笑)」
『多様性は意識していない』
久保利「多様性って多分あんまり意識されてないんじゃないですか、アメ―ジャンさんは」
アメ―ジャン「意識、やっぱり」
久保利「意識しない」
アメ―ジャン「エーザイの取締役会を覚えてます。広い部屋があるでしょう。ドア開けて入ったら、もう男ばかり」
久保利「男ばっかりでね(笑)」
アメ―ジャン「で、本当に黒い髪の」
久保利「(笑)」
アメ―ジャン「これは大丈夫かなって(笑)入ったら帰りたく、、」
久保利「なった(笑)」
アメ―ジャン「なった(笑)ほんとに大丈夫かなと。これは、無理だと最初思ったんですけど」
久保利「うん、うん」
アメ―ジャン「そのときコー・ヤン・タンさん、アメリカンチャイニーズの弁護士の先生とかもいらして大丈夫だったんです。他の会社もやっぱり、楽しい。社外取締役」
久保利「うん、うん」
アメ―ジャン「あの、だから全然、結構、ま、三菱重工は、最初、結構、、大変だったですけど(笑)でも、楽しい」
久保利「うん」
アメージャン「6ヶ月の赤ちゃんの頃からはアメリカにいたんですけど、父はアルメニア系、母の方はスウェーデン系、父のGrandparents' Houseはアルメニア語ばっかり。で、母の方はスウェーデン語、食べ物もswedish、父の方の食べ物はArmenia」
久保利「アルメニアね」
アメ―ジャン「小さい時から、異文化すっごく慣れてました。みんな私と同じは経験したことないし、小さい時からやっぱり、多様性慣れています。多様性がないとおかしいっていうか、へん」
久保利「ですよね。たぶんそれがネイティブとしての多様性になってるんですよね」
アメ―ジャン「私のネイティブが多様性かな」
久保利「それがね、もう本当にこう天の配剤というかね、いい場所にポジションにいらっしゃって、
たとえば、アメリカ人だから、外人だからいいとか、女性だからこうだっていうのじゃなくて、やっぱりね、もちろんその真っ黒けのおじさん達の集まりっていうのは多様性のかけらもないんだけども、でもほんとうは、よく見てるとその人達一人一人は実は結構、多様な人だったりするしね」
アメ―ジャン「そうそう」
久保利「その多様を活かしていこうっていうかそこを一歩越えられない、日本人って、すぐにこう同調圧力に負けちゃうんですよね」
アメ―ジャン「三菱重工のいいところは、世界中飛び回って出張とか、このおじさんたちってひどいよ(笑)おじさんたちと仲良くなって、みなさんのバックヤードと
か、趣味とか考え方聞いたら、結構面白い。多様性があった」
久保利「なるほど」
アメ―ジャン「昔の日本みたら、すごい多様性があった国じゃないですか」
久保利「ありますよね」
アメ―ジャン「着物の世界でも、明治時代とか、この沖縄の、沖縄も場所によって違うんでしょう」
久保利「違います。ちょっと離れた奄美大島だってこんな感じになります」
アメ―ジャン「着物の多様性をみると、ナショナル、なんていうんだろう、national traditional、多様性な国はないんじゃないですか。日本は、そういうみんな同じという国じゃない。日本の良さ、多様性から来たんじゃないかなと思います」
久保利「なるほど」
久保利「女性といったって一色じゃないし、男性といったって一色じゃない。こういうね当たり前の話がみんなできない。変な思い込みですよね」
アメ―ジャン「(笑)多様性」
久保利「みんなで、ドーッと、そっち行くんですよね。多様性と言ったら、みんな多様性だって言う。多様性の何たるかも知らずしてね。僕は、今日は楽しみだったなあ。っていうのは、一人で多様性をたくさん持っている先生とね」
アメ―ジャン「そう、中にたくさん(笑)多様性が」
久保利「目の付け所が。色んな経験を踏まえてじゃないですか。学者でもあるし、日本企業でお茶汲みっていうか、灰皿洗いまでされちゃったという話もありますし」
アメ―ジャン「はい(笑)」
久保利「いろんなことをおやりになって、で、嫌なこともあったでしょうけれども、でも、それを真面目に取り組んでますよね。灰皿なんか洗うの、いい加減にもう今は日本の企業ではないですけど、しかもあれ、個人で灰皿持ってきてたんでしょう?で、この灰皿は誰の灰皿かっていうのを」
アメ―ジャン「そう、覚えなきゃいけない」
久保利「覚えておかないと怒られちゃうっていうね」
アメ―ジャン「はい、ははははは(笑)」
久保利「そういうことをね、やらせる会社もすごいもんだなと思うけど」
アメ―ジャン「あはは(笑)」
久保利「やる人もすごいなと僕は思いました」
アメ―ジャン「やっぱり、昔から、研究だと思ったんです」
久保利「ああ」
アメ―ジャン「取締役会も」
久保利「研究」
アメ―ジャン「おじさんも、みんな、研究(笑)」
久保利「(笑)」
アメ―ジャン「たぶん、日本人だったら多分違うと思います」
久保利「違うでしょうね」
アメ―ジャン「すごく腹立つと思いますけど、これは面白いね」
久保利「(笑)面白いねって」
アメ―ジャン「すっごく面白い」
久保利「研究の対象と思えば、別に怒りを込めなくてもやれる、面白いなあというふうになる」
アメ―ジャン「はい、そうですかっていう(笑)」
久保利「アメ―ジャン先生の個性なのかな。いつも明るいじゃないですか」
アメ―ジャン「そんなことないんですけど」
久保利「へたってるという姿をあんまり、どの取締役会に行っても見たことないんだけども」
アメ―ジャン「一橋大学の教授会。見たことないから、私の暗いところ」
久保利「(笑)暗いの。だってもうディーン(dean)なんでしょう?」
アメ―ジャン「いまは、ディーンじゃないんですけど、今は普通の」
久保利「教授」
アメ―ジャン「教授なんですけど。ちょっと態度が違うんです」
アメ―ジャン「取締役会はおもしろいし」
久保利「取締役会はね」
アメ―ジャン「役に立ってるし、すごい責任を感じてるし、本当に面白いし、生き生きしてますけど、教授会はなんでここにいなければならないかっていう」
久保利「教授会ってほとんど動かないしね」
アメ―ジャン「そう、意味ない」
久保利「(笑)」
アメ―ジャン「取締役会は昔はそうだったかもしれない、今はそうじゃないですね」
久保利「違いますね」
アメ―ジャン「すごい変化じゃないですか」
久保利「寝てる暇ないじゃないですか」
アメ―ジャン「寝てる暇ないし寝たら大変なことに」
アメ―ジャン「やっぱり多様性ですね」
久保利「(笑)」
アメ―ジャン「多様性あると変なことできない」
久保利「できない」
アメ―ジャン「できなくなるんですね(笑)」
久保利「一言で多様性って言うけど、結局は個性を発揮すれば、いいですよね」
アメ―ジャン「そうですね」
【Christina L. Ahmadjian(クリスティーナ・アメ―ジャン)PROFILE】
一橋大学大学院経営管理研究科経営管理専攻教授
アルメニア系アメリカ人の父と、スウェーデン系アメリカ人の母を持つ。
ハーバード大学卒業。日本企業での勤務経験を経て、
スタンフォード大学ビジネス・スクール経営学修士課程修了。
カリフォルニア大学バークレー校ハース・スクール・オブ・ビジネス博士課程修了。
現在、日本取引所グループ、住友電気工業、アサヒグループホールディングス等、複数の企業の社外取締役を務める。
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