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爺さんの思いで話、治療をするとは?

爺は、人の治療をするようになって50年以上経つ。
そこで色々思い出すことを話してみたい。

アメリカに来て鍼灸を教えるようになったけど、
アメリカ人や学生から、ツボって何?
経絡って何?
どうしてツボに特殊な働きがあるって証明できるのか?
ストレートな質問を浴びせられた。

そこで、考え込んだ。
日本人ならツボという言葉自体に馴染みがあって、疑問を持っていない。
アメリカ人には、何の根拠があるのかって問われる、
俺は信じてやるよ、みたいな人もいるし、
反対に、東洋文化は神秘なんだと、そのままそっくり信じ込む人もいる。

このアメリカ人学生に、違う説明をすることにした。
生命体は、常に自分を監視しているし、自動的に反応するシステムを持っている。
ちょっと何かにぶっつかると、皮膚が赤くなる、
指圧、マッサージは、皮膚の外から刺激して筋肉の血行を良くする。
鍼灸の場合は、皮下にまで鍼を指す。
無菌の鍼だから、傷にならないし、大丈夫なんだけど、
体反応としては、細菌感染したり、皮下まで怪我したと同じような反応を起こす。
つまり、鍼をした場所に、新しい血液を送って免疫反応で修理しようという反応が起こる。
この反応を利用して、必要な部位にだけ、新しい血流と免疫反応を起こさせる技術だ、必要な部分だけに自然治癒反応を起こせるハイテクだと説明した。

筋肉に疲労が溜まって硬くなると、凝りを感じる。
そこに鍼を打つと、身体は反応して血行改善と免疫反応で修理しようとするのだ。
この説明でアメリカ人は、納得してくれた。

そうやって50年経ってみると、
う〜む、それだけじゃ不十分だと思うようになった。
健康な人なら、筋肉が凝らないし、凝っても治療で治る。
しかし、治療をしても治らない人もいる。
頑固に痛みを何年も抱える人もいる。
何故なんだ?
人間には血流を良くしたり免疫反応で体を修理する機能が自然に備わっているのに、なぜ治らないのか?

そこで、気が付いたことがある。
人間の脳と心だと!
脳が疲れていると、自然治癒力が衰える。
単に脳を使って疲れているだけじゃなく、
心のストレスでで脳が動かなくなる場合もある。
脳が疲れていると、病気の状態や痛みを抱えたままになる。
例えば、家族が亡くなったりすると、そのショックで心身ともに弱ってしまう。
心を閉ざしていると、身体も機能しなくなる。
じゃ、どうやって、脳と心が機能するようにできるのか?

治療家というのは、不思議な立場なんです。
患者にお金を払ってもらいながら、人間を勉強させてもらっているのです。
名前がついた病気だけじゃなく、人の心も理解できないと、人を助けられません。
変な話ですが、治せない患者に出会うと、治療家として成長して行きます。
なぜ、治らないのかと自分に問いかけることで、成長します。
治らない病人がいても、統計的に何パーセントは治らないなどと誤魔化すと、それはビジネスですね。

患者も病気を通じて、何かを学び成長します。
治療家は患者を通して勉強させてもらえる恵まれた立場なんです。

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