植物の複利成長法則とマーケット戦略

植物には、複利的な成長法則がある。
苗が小さいときは、ゆっくり葉が展開して少しずつ植物が大きくなる。
ある程度、植物が大きくなると葉の展開速度は速くなり、葉のサイズも大きくなる。
一定の大きさまで大きくなると成長スピードは一定を保つようになる。

何故か。
光1%理論という理論がある。
光が1%増えると生産性が1%向上する理論のことである。
植物体の光を受ける量、受光量は葉面積で決まる。
植物体が小さな頃は、受光できる葉面積が限られるため、生育スピードは緩やかである。
生育が進むにつれて、葉面積が増えることにより、受光量が増え複利的に生育スピードが増加するという訳である。
一定の葉面積まで拡大すると、受光量は飽和して、頭打ちになるため、生育スピードが一定になるという訳である。

具体的な、面白い試験がある。
森からとれた菌を苗の根元に摂取してあげると、菌が養水分を運んでくれ、生育が早くなる。これは、単に菌の活躍だけでなく、菌が養水分吸収を助け、初期の葉面積獲得に寄与することで、複利的に生育が早まったと考えられる。
地下部の生育が地上部を大きくし、そしてさらに地下部も大きく、、、といった具合に、生育を早めていることが示唆される。

ポント・リャーギンの最大化原理という法則がある。
簡単に言えば、植物は先に栄養器官(葉や茎、根)などを大きくしてから、生殖器官(花や果実)を大きくする方が生産性を最大化できる。と言った理論である。
(トマトやキュウリなどの果菜類は実質的に生殖成長と栄養成長が同時に進む作物ではあるが)
マーケットをとるために、初期に葉面積を拡大してから、後から成長の果実を分配するという考え方と通ずるものがある。
しかし、実際のところ、急成長をするあまり同化物の行き場がなくなり、樹が暴れてしまう(栄養成長過多)という歪みもありうる。初期管理で生育促進のために窒素をあげて葉面積にとりにいくという戦略は、時によってば、成長の果実が得られなくなるという、逆効果があることを考えなければならない。何事もバランスが大事と言ってしまえば、それまでである

植物には背ぞろい現象という法則がある。
植物は赤色光と遠赤色光の比で、陰を感知して、陰の割合が高いとより光を受けようと草丈を伸ばすという習性がある。
有名な研究で、15cmのキュウリ苗と30cmのキュウリ苗を互い違いにならべると時間が経つにつれて同じ背丈になる傾向が得られた試験がある。

光を受けて生産量を高めるために、早くマーケットを取りにいこうとする姿勢が伺える。光獲得競争にさえ勝てれば、複利法則により、勝ち負けがはっきりするからである。

しかし、果菜類などで見落としてはいけない点がある。

過度な密植栽培は、光獲得競争が激しくなり、折節だけが伸びて花が咲かないような徒長状態を招く原因になる。
この状態では、確かに草丈は伸びるけれど、土台がないひょろっこもやしっ子になってしまうのである。

レッドオーシャン状態での過激な戦いは、植物においてもいい土台をつくることが出来ないので、適度なマーケットサイズ(栽植密度)に整えてあげることが重要という訳である。


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