情報流通プラットフォーム対処法の省令案・ガイドライン案を前提とした大規模プラットフォーム事業者の対応

1 はじめに

2024年12月19日、改正プロバイダ責任制限法(情報流通プラットフォーム対処法、以下「情プラ法」といいます。)の施行に伴う省令案及びガイドライン案が公表されました。
同省令案及びガイドライン案に対するパブコメ期間は、2024年12月20日~2025年1月23日となっています。

このnoteでは、公開された省令案及びガイドライン案を前提とした場合、情プラ法で新たに追加される規律の適用対象となる大規模プラットフォーム事業者においてどのような対応が必要になりそうかを検討してみました。

公表された省令案及びガイドライン案については、本noteでは以下のように略します。

● 特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律施行規則の一部を改正する省令案
→省令案/施行規則案
● 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン案
→ガイドライン案
● 特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律第26条に関するガイドライン案
→違法情報ガイドライン案

省令案、ガイドライン案及び違法情報ガイドライン案並びにパブコメの要領は、以下のウェブサイトで公開されています。

以下では、情プラ法で追加された大規模プラットフォーム事業者に対する規律の全体像を概観した上、対象事業者における初期的な対応として主に想定されるものを考えてみました。
現時点の個人的見解を思うままに書いただけなので、実際の対応は確定した省令およびガイドラインを踏まえて各社でご検討ください。

2 情プラ法の大規模プラットフォーム事業者に対する規律

情プラ法で追加された規律は、以下のとおりシンプルです。

誹謗中傷等のインターネット上の違法・有害情報に対処するため、
⼤規模プラットフォーム事業者に対し、
対応の迅速化、②運⽤状況の透明化に係る措置を義務づける。

対象は「大規模プラットフォーム事業者」、
規律の目的は「対応の迅速化」と「運用状況の透明化」の2つです。

上記の2つの目的を達成するために、それぞれ以下のような規律を大規模プラットフォーム事業者に課しています。

① 対応の迅速化
 ・ 削除申出窓⼝・⼿続の整備・公表 ・
 ・ 削除申出への対応体制の整備(⼗分な知識経験を有する者の選任等)  ・ 削除申出に対する判断・通知(原則、⼀定期間内)
② 運用状況の透明化
 ・ 削除・アカウント停止基準の策定・公表(運⽤状況の公表を含む)
 ・ 発信者への通知(削除した場合)

以下では、情プラ法の施行当初において、上記の規律の対象となる大規模プラットフォーム事業者において想定される対応を、以下のようにカテゴリ分けして見ていきます。

● 報告・指定・届出
● 基準・窓口の整備・公表
● 運用オペレーションの準備・確定
● 年次の運用状況等の公表

3 報告・指定・届出

⑴ 報告・指定・届出の流れ

情プラ法の施行当初は、まずは総務大臣から自社が提供しているサービスの発信者数等について報告を求められ(20条3項)、その報告を受けて、総務大臣が情プラ法の規律の適用対象となる「大規模特定電気通信役務提供者」を指定し(20条1項)、指定を受けた大規模特定電気通信役務提供者は指定を受けた日から3か月以内に届出(21条1項)をすることになると思われます。

情プラ法に追加された大規模特定電気通信役務提供者に対する規律は、上記の「届出」をした時点から適用されます(22条1項参照)。

⑵ 報告

大規模特定電気通信役務提供者の指定の前提となる月間の発信者数などは、原則として特定電気通信役務提供者からの報告により、総務大臣が把握することになります(20条3項)。

実際には、指定の閾値(平均月間発信者数が1,000万以上又は平均月間延べ発信者数が200万以上)の9割に相当する、①または②のいずれかに該当する場合、添付書類とともに所定の様式で報告をしなければなりません(20条3項・施行規則案9条1項)。

平均月間発信者数:900万以上
平均月間延べ発信者数:180万以上

そのため、特定電気通信機務提供者としては、提供している特定電気通信役務に該当するサービスにおける1年間の平均月間発信者数と平均月間延べ発信者数を算出する必要があります。
平均月間発信者数とは、特定電気通信役務における1年間の発信者数と投稿者数の1月間における平均数のことをいいます。
そのため、1年分の投稿者数と利用者数(リアクションをした者や閲覧者を含みます)の合計数を、サービスごとに算出した上、1月間の平均を算定することになると思います。
このあたりは、ログ等を元にユニークな投稿者数と利用者数を事業・開発部門において算出した後、実際に総務大臣に報告を行うまでの社内フローやオペレーションを施行までの間に整備しておくのがよいと思います。

⑶ 指定

報告された数値を元にして、総務大臣が大規模特定電気通信役務提供者を指定します(20条1項)。
指定の対象は、「大規模特定電気通信役務」を提供する特定電気通信役務提供者です。
そのため、指定するためには対象となる事業者が提供するサービスが「大規模特定電気通信役務」に該当する必要があります。
20条1項では、「大規模特定電気通信役務」に該当するためには以下の①~③のいずれの要件も満たす必要があるとしています。

① 一定規模を超えること
② 送信防止措置を講じることが技術的に可能であること
③ 権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務以外のものであること

①の「一定規模を超えること」とは、対象となるサービスの規模が一定規模以上であることをいいます。
具体的には、以下の①又は②のいずれかの要件を満たす必要があり、これらは原則として、事業者から報告された数値をもとに要件該当性が判断されます。

① 1年間の平均月間発信者数が1,000万を超えること
② 1年間の平均月間延べ発信者数が200万を超えること

報告義務の有無・指定対象該当性との関係のイメージは、以下のとおりです。

総務省
「情報流通プラットフォーム対処法の 省令及びガイドラインに関する考え方」(令和6年11月)
https://www.soumu.go.jp/main_content/000978031.pdf

大規模特定電気通信役務提供者に対する規律は、①削除対応の迅速化、②運用状況の透明化を図るためのものであり、事業者において削除等の送信防止措置を講じることが前提となっているため、「送信防止措置を講じることが技術的に可能であること」という要件②が求められています。

また、「権利の侵害が発生するおそれの少ない特定電気通信役務」は、大規模電気通信役務提供者に対する指定を構成する要素のうち、権利侵害情報を速やかに削除する必要性が類型的に欠けるため、対象外とされています(要件③)。
詳細は省令に委ねられており、省令案では以下のとおり定められています(施行規則案8条6項)。

① 不特定の利用者間の交流を主たる目的としたものでないもの
② 不特定の利用者間の交流を主たる目的としたものであって①の特定電気通信役務に専ら付随的に提供されるもの

①の具体例は、ECサイト、検索サイト、アプリストア等です(ガイドライン案2頁)。
②の具体例は、ECサイト等のコメント欄、ゲーム内のチャット機能等です(ガイドライン案2頁)。

⑷ 届出

大規模特定電気通信役務提供者に指定された場合、指定日から3月以内に添付書類とともに所定の様式で、以下の事項を総務大臣に届出をする必要があります(21条1項・施行規則案11条)。

● 氏名・名称、住所、法人の場合には代表者の氏名、電話番号、メールアドレス(外国法人等の場合には、国内代表者等の氏名・名称、国内の住所、電話番号、メールアドレス)
● 侵害情報送信防止措置の申出を行うための方法の公表方法(インターネットを利用した方法の場合には、ウェブサイトのアドレスを含む)
● 削除・アカウント停止基準の公表の方法(インターネットを利用した方法の場合には、ウェブサイトのアドレスを含む)

届出の際には、削除申出の申出受付窓口の公表方法や削除・アカウント停止基準の公表方法、それらのURLなども届出が必要となっており、このタイミングでこれらの方法の適法性について評価される可能性があるため留意が必要です。

2 基準・窓口の整備・公表

⑴ 主な準備事項

基準・窓口の整備・公表に関する主な準備事項としては以下の2つが考えられます。

① 削除基準の策定・公表
② 削除申出の申出受付窓口の整備・公表

いずれも前述しました「届出」のタイミングで義務が課されるため、「届出」までの間に準備が必要です。
①(削除基準の策定・公表)については、サービスの利用規約に包含されている場合には、社内手続・稟議や事前周知など、「削除基準」のテキスト自体が確定した後にも一定の期間が必要となることが想定され、早めに準備しておくのがよさそうです。
②(削除申出の申出受付窓口の策定・公表)についても、受付フォームの新規設置・修正など、新たな開発を行う場合には、一定の工数を要することが想定されるため、必要な要件を社内で早めに確定させた上、開発や事業といった関係部署との調整を早めに開始するのがよいと思います。

⑵ 削除・アカウント停止基準の策定・公表(26条)

ア 法令の定め
削除・アカウント停止基準の策定・公表を定める26条は、以下の4つを規定しています。

● 削除・アカウント停止基準の策定・公表(1項)
● 基準の要件(2項)
● 基準の変更義務(3項)
● 参考事例集の作成・公表(4項) 

イ 実際の対応
基準の要件を定める26条2項を踏まえた上、違法情報ガイドライン案を参考にしながら「送信防止措置の実施に関する基準」を策定するのが大切です。
その上で、指定後に届出を行う際には、当該基準を掲載したページのURLも届出事項に含まれているため(21条1項・施行規則案11条2項4号)、このタイミングまでに基準を確定して情プラ法及び民法上の「定型約款」に関する規律を踏まえた公表・周知を済ませておくのがよいと思います。
なお、ここでいう「送信防止措置の実施に関する基準」には、いわゆる削除・非表示といった措置を講じる場合の基準のみならず、アカウント停止措置を講じる場合の基準も含まれます(2条9号)。

「送信防止措置の実施に関する基準」の要件を定める26条2項は、かなり細かく要件を規定しているので注意が必要です。
具体的には、基準の策定にあたり、以下の①~④の要件に適合するよう努めることを求めています(26条2項)。

① 情報の流通を知った原因別に削除・アカウント停止の対象情報を定めること
② アカウント停止基準を具体的に定めること
③ 容易に理解可能な表現を用いること
④ 送信防止措置の実施に関する努力義務を定める法令との整合性に配慮すること

①は、事業者として情報の流通を知った経路(自主的モニタリング、被害者からの通報、公的機関からの連絡など)ごとに、誹謗中傷、海賊版、自殺といった世間一般で用いられる表現カテゴリ別に明快に記述することを求めるものです(ガイドライン案6頁)。
カテゴリ分けについては、総務省より違法情報ガイドライン案が公表されているので、これが参考になると思います。
③については、ガイドライン案ではわかりやすい日本語で記載することを求めています(ガイドライン案6頁)。
④の努力義務を定める法令の具体例は、ガイドライン案に掲載されています(ガイドライン案6頁)。

実際には、可能な限り、経路別・カテゴリ別にわかりやすく記載した上で、一定のバスケット条項を置く形にならざるを得ない気がします。
なぜならば、義務的な送信防止措置を除き、原則として、事業者が定めた「送信防止措置の実施に関する基準」によらなければ送信防止措置を講じることができないこととされているためです(26条1項)。
もっとも、緊急の必要により送信防止措置を講じる場合であり、対象情報の種類が通常予測できないものであり、基準に明示されていない場合には例外的に26条1項3号を根拠として送信防止措置を講じることは可能です。この場合、以後は当該送信防止措置を講じた情報について送信防止措置の対象となることがわかるように基準を変更する必要があります(26条3項)。

基準の策定後は、実際に送信防止措置を講じる日の14日前までに公表する必要があります(26条1項・施行規則案17条)。
なお、情プラ法の規律とは別に、当該基準が民法上の「定型約款」に該当する場合には、民法上の規律に従い、情プラ法が定める14日よりも前の時点から周知が必要になる場合もあると考えられ、この部分は事業者ごとに検討が必要になると思われます。

なお、おおむね年1回は「送信防止措置の実施に関する基準」に従って送信防止措置を講じた情報の参考事例集を作成・公表する努力義務がありますので(26条4項)、後述する「措置の実施状況等の公表」(28条)と併せて検討する必要があります。

⑶ 削除申出の申出受付窓口の整備・公表(22条)

ア 法令の定め
削除申出の申出受付窓口の整備・公表を定める22条は、以下の2つを規定しています。

● 削除申出の申出受付窓口の整備・公表(1項)
● 窓口の要件(2項)

イ 実際の対応
窓口の要件を定める省令及び22条2項を踏まえて、被侵害者からの削除申出の申出受付窓口を整備し、公表することが重要です。
申出受付窓口のURLは届出事項になっているため、指定後に総務大臣へ届出を行うまでのタイミングで窓口は整備しておく必要があります。
なお、22条1項の削除申出の申出受付窓口を通して被侵害者から申出があった場合、遅滞なく調査する義務が課せられています(23条)。

窓口の要件は、省令(施行規則案13条)と22条2項に規定されています。

省令では、申出方法公表方法について、以下の2つの要件のいずれも充足する必要があることとされています(施行規則案13条)。

● 申出方法:被侵害者が日本語による申出を行うことができるものであること(1項)
● 公表方法:インターネットを利用することにより、公表されるものであること(2項)

また、22条2項では、申出受付方法は、以下の3つの要件に適合することを求めています。

● 電子情報処理組織を使用する方法(1号)
例:ウェブフォーム
● 申出者に過重な負担を課すものでないこと(2号)
● 申出受付日時が明らかであること(3号)

申出者に過重な負担を課すものでない場合の具体例としては、ガイドライン案では、以下の①~⑤が掲げられています(ガイドライン案3頁)。

① トップページから少ないクリック数でアクセスできる等、申出フォームが見つけやすいこと
② 文字制限のない文章記入欄が設けられている、証拠が添付可能である等、十分に情報提供が可能な申出フォームとなっていること
③ アカウント非保有者であっても申出を行うことができること
④ 申出先以外の第三者との関係で、申出者のプライバシー等の権利・利益の侵害を生じさせない形で、申出を行うことができること
⑤ 申出を行ったことを理由として、申出以後のサービス利用に当たって不利益を受けないこと

3 運用オペレーションの準備・確定

⑴ 主な準備事項

運用オペレーションの準備・確定(被侵害者や発信者への通知など、一部対外的な部分もあります)における主な準備事項は、以下のとおりです。

① 削除申出への対応体制の整備(24条)
② 削除申出に対する判断・通知(25条)
③ 発信者への通知(削除した場合)(27条)

①(削除申出への対応体制の整備)については、届出後に直ちに義務がかかるため、実務的には届出前に準備しておき速やかに侵害情報調査専門員に関する届出も行うことになると思われます。
②(削除申出に対する判断・通知)及び③(発信者への通知)については、申出から調査・評価・判断を行い、通知を行うまでのオペレーションを整備するとともに、通知方法やドキュメントなども準備しておく必要があるでしょう。

⑵ 削除申出への対応体制の整備

ア 法令の定め
削除申出への対応体制の整備を定める24条は、以下の3つを規定しています。

① 侵害情報調査専門員の選任(1項)
② 専門員の人数(2項)
③ 専門員の選任・変更に関する届出(3項)

イ 実際の対応
ガイドライン案を踏まえた適格な専門員を少なくとも省令が求める人数を満たすよう準備した上、侵害情報調査専門員に関する届出を行うことになります。

情プラ法が求める「侵害情報調査専門員」は、自然人でなければなりません。
また、ガイドライン案においては、削除等のコンテンツモデレーションを実施する他の職員が判断に迷った際に、当該職員からの上申を受け、より専門的な調査を行うこととなり、その業務の性質上、大規模特定電気通信役務提供者が提供するサービスの特性を十分に理解するとともに、我が国の法令や文化的・社会的背景に明るい人材である必要があるとされ(ガイドライン案3頁)、その具体例として、法令の知識又は文化的・社会的背景の理解の観点から、弁護士等の法律専門家や日本の風俗・社会問題に十分な知識経験を有する者が該当しうるとされています(ガイドライン案4頁)。
なお、権利侵害情報該当性の調査は、法律事務に当たり得るため、弁護士以外の者を「侵害情報調査専門員」に選任する場合には、弁護士法72条との関係に留意する必要があります。

そのため、基本的には、弁護士などの専門家を選任することになると思われます。

専門員の人数は、省令では大規模特定電気通信役務ごとに最低1人選任する必要があるとされています(施行規則案14条)。

事業者としては、必要な人数の専門員を選任した後、総務大臣に以下の①~③の事項を含めた届出を行うことになります(施行規則案15条)。

① 選任した専門員の数
② 選任した専門員の氏名、生年月日及び所属
③ 当該者を選任した理由

⑶ 削除申出に対する判断・通知(25条)

ア 法令の定め
削除申出に対する判断・通知を定める25条は、以下の2つを規定しています。

● 申出者に対する一定期間内の通知(1項)
● 例外事由に該当する場合の遅滞ない通知(2項)

イ 実際の対応
25条1項及び2項の規定並びにガイドライン案を踏まえて、22条1項により整備した削除申出の申出受付窓口経由で申出があった場合における調査・評価・判断や申出者への通知フロー・ドキュメントなどを整備する必要があります。

25条1項は、22条1項の削除申出の申出受付方法に従い申出があったときには、23条の調査結果に基づいて削除等の侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかを判断し、25条2項各号に該当する場合でない限り、申出を受けた日から7日以内に、申出者に対し、以下のいずれかを通知すべき旨を規定しています(25条1項・施行規則案16条)。

● 侵害情報送信防止措置を講じたとき:その旨
● 侵害情報送信防止措置を講じなかったとき:その旨及びその理由

また、25条2項は、以下の①~③のいずれかに該当する場合には、申出者に対し、7日以内に①~③のいずれに該当するか等を通知した上、侵害情報送信防止措置を講ずるかどうかを判断した後、遅滞なく、その判断に応じて、25条1項における通知事項を申出者に通知すれば足りる旨を規定しています。

① 発信者に対して意見の照会を行う場合
② 侵害情報調査専門員に調査を行わせる場合
③ やむを得ない事由がある場合

そのため、これらの25条1項及び2項の規定並びにこれらの規定に関する行政解釈が掲載されているガイドライン案を参考にして、事業者ごとにフロー、マニュアル、ドキュメントなどを整備していくことになると思われます。

⑷ 発信者への通知(27条)

ア 法令の定め
送信防止措置を講じた場合の発信者への通知を定める27条は、大規模特定電気通信役務提供者に対して、義務的か自主的かを問わず、その提供する大規模特定電気通信役務を利用して行われる特定電気通信による情報の流通について送信防止措置を講じたときには、原則として、遅滞なく、その旨及びその理由を発信者に通知し、又は容易に知り得る状態に置く措置を講じるべき義務を課しています。
 この場合、送信防止措置が26条1項の「送信防止措置の実施に関する基準」に従って講じられたものであるときには、その理由において、その削除やアカウント停止といった送信防止措置と当該基準との関係を明らかにしなければなりません。
 なお、以下の①又は②のいずれかに該当する場合には、これらの通知等の義務は適用されません(27条各号)。

① 大規模特定電気通信役務提供者が発信者であるとき
② 通知等の措置を講じないことについて正当な理由があるとき

イ 実際の対応
27条の規定及びガイドライン案に掲載された行政解釈を参考にして、削除やアカウント停止といった送信防止措置を講じた場合における通知等のフロー・マニュアル・ドキュメントなどの整備を行っていく必要があります。

送信防止措置を講じた「理由」については、「送信防止措置の実施に関する基準」(26条1項)の具体的項目への該当性が示されていることが求められるとされているため(ガイドライン案6-7頁)、通知内容にどのような記載をすべきかは事前によく検討した方がよいと思います。

発信者に知らせる方法は、通知だけではなく「発信者が容易に知り得る状態に置く措置」によることも許容されており、当該措置には削除された投稿が存在した位置に削除の事実及び理由を掲載する方法も含まれるとされているため(ガイドライン案7頁)、どのような場合にどのような方法で発信者に知らせるかも検討が必要です。
なお、「発信者が容易に知り得る状態に置く措置」の掲出期間については、個別の事情に応じて判断されることになりますが、27条の趣旨が発信者に対する透明性の確保であることに鑑み、送信防止措置の実地に関する基準(26条)の周知期間(14日)と同じ期間であれば、措置を「講じ」たと言えるとされています(ガイドライン案7頁)。

4 年次の運用状況等の公表

⑴ 主な準備事項

年次の運用状況等の公表に関する主な準備事項は以下のとおりです。

① 措置の実施状況等の公表(28条)
② 参考事例集の作成・公表(26条4項)

①(措置の実施状況等の公表)については、大規模特定電気通信役務提供者において、投稿の削除やアカウント停止といった送信防止措置に関する毎年の実施状況を公表することになります。
②(参考事例集の作成・公表)は、「送信防止措置の実施に関する基準」(26条1項)を公表している大規模電気通信事業者は、おおむね年1回、参考事例集を作成・公表する努力義務が課せられており(26条4項)、上記①の公表事項に当該参考事例集の公表方法(URLなど)も含まれています。
そのため、実務的には、②の参考事例集を含める形で年1回、透明レポートのような形で①を公表するか、②は別ページとして作成した上、①の透明性レポートの中に②のページにリンクするURLを貼り付けるような形で対応することになるのではないかと思われます。

⑵ 措置の実施状況等の公表(28条)

ア 法令の定め
措置の実施状況等の公表を定める28条は、大規模特定電気通信役務提供者に対し、投稿の削除やアカウント停止といった送信防止措置に関する毎年の実施状況を公表することを義務付けています。

イ 実際の対応
年度単位(4月1日~3月31日)で、毎年度経過後2か月以内に、ウェブサイト等で公表することになります(28条・施行規則案18条1項、1条2項2号)。

施行規則案では公表事項がかなり細かく定められているため、漏れがないよう注意が必要です。アウトプットをイメージした上、届出を行うまでの間にどのようなログ、データなどを利用して数字を算出し、ドキュメントを作成するかを検討しておいた方がよいと思います。

また、「自己評価の基準」も事業者自ら設定した上、自己評価の結果とともに公表事項として公表する必要があるので留意する必要があります(28条6号・施行規則案18条7項、28条5号・施行規則案18条6項)。

省令に規定されている公表事項は以下のとおりです(28条・施行規則案18条)。

総務省
「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する 法律における大規模特定電気通信役務提供者の義務に関するガイドライン(案)」
https://www.soumu.go.jp/main_content/000982824.pdf

なお、違法情報ガイドライン案では、「28 条に基づく措置の実施状況等の公表に当たり、申出理由等の別に応じて区分の上公表することを求められている公表項目については、可能な限り本ガイドラインの分類に基づいて区分するよう対応されたい」とされており、カテゴリ分けについては、違法情報ガイドライン案を参考にすべきでしょう。

⑶ 参考事例集の作成・公表

ア 法令の定め
参考事例集の作成・公表を定める26条4項は、「送信防止措置の実施に関する基準」(26条1項)に従って送信防止措置を講じた情報の参考事例集を作成・公表すべき努力義務を課しています。

イ 実際の対応
参考事例集の作成・公表の努力義務は、「送信防止措置の実施に関する基準」のみでは利用者にとって具体的な適用場面が想起しづらいことも想定されるため、利用者に対する予測可能性も含めた透明性を確保する観点から設けられたものであるため、利用者にわかりやすいドキュメントを作成した上、目につきやすい方法で公表すべきでしょう。
例えば、参考事例集のウェブページを作成し、適宜更新しながら、公表のみならずユーザーに対して定期的に通知をする方法も考えられます。
また、前述しましたとおり、措置状況の公表事項として参考事例集の公表方法(URLを含む)が含まれているため、こちらとも連携する必要があります。




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