[物理雑学]重さの校正と一次標準(その2);☆一般に普及させるために☆

皆さん、こんばんは!!

昨日に引き続き、やや重いタイトルの記事を投稿します(笑)
しかし、きっと読みやすい内容になっていますので、最後までよろしくお願いします!

(その1)をもしご覧になっていない方は、先にそちらをよろしくお願いします。


いそれでは、前回の簡単なまとめから見てみましょう。

前回のまとめ

・家の体重計が壊れた→捨てました
・標準からのズレを調べ、調整することを「校正」と呼ぶ
・フランスの科学者により、メートルやキログラムといった単位が作られる
・質量の1Kgの定義は水からキログラム原器という分銅へ変わった

つまり、キログラム原器を作ることで正確な1Kgを持つこと出来たので、それを社会に還元するためのシステムが必要。そうゆうことですね。

一次標準は正確だが使いにくい

皆さんは一次標準という言葉を聞いたことがありますか??

簡単にいうと、最も精度の良いものです。
質量においてはキログラム原器です。

(その1)の導入で、体重計が正しい値を指しているか確認するためにダンベルを乗せるという例を出しました。
5Kgのダンベルを乗せた時の体重計の表示が5Kgであれば、体重計はズレがないと言えます。

しかし、これは、ダンベルの重さが、体重計の正確さよりも高い場合にのみ有効です。

つまり、正確さには順位があるということです。(ダンベル > 体重計)

そして国の中で最も正確な基準、それを一次標準と呼びます。
(キログラム原器>>本当に超えられない壁>>ダンベル > 体重計)

科学者がその時代に持てる最高技術を使い、これ以上は上がらないところまで精度を追求して作ったものなのですね。

例えば1Kgの基準であるキログラム原器は、1Kgからのズレが0.000001g程度です。

これって、改めて考えると凄すぎる精度ですよね、、、

そして、この精度を保つには、厳重にガラス内で保管する必要があります。
傷や酸化(錆びること)によって、重さが変わったら、国の重さの基準が変わってしまい、大変なことになります。

キログラム原器

村上衡機製作所のキログラム原器のレプリカ

したがって、頻繁にキログラム原器を用いて、一般の物質の質量測定を行うことは出来ません。
では、キログラム原器は何をするのでしょうか??

一次標準はラスボスであり、簡単には出てこない!

「ザーボンさん、ドドリアさん、やってしまいなさい!!!」

これはかの有名なフリーザ様のセリフです。

このセリフから証明されるように、本当に強い人は、必要に迫られるまで出てきません。自分よりも弱い手下を戦わせるのです。

質量に関しても同様で、キログラム原器は、階級が一つ下のランクを校正し、それがさらに下のランクを校正する。

校正の流れ

この流れを作ることにより、キログラム原器は他のランクの低い標準に働いてもらい、1年間のほぼ全てをガラスの中で過ごします。

この校正の流れを作ることで、一般家庭などにも必要な精度の機器を届けることが出来ます。
(体重計の精度はせいぜい0.1Kgの桁があっていれば良いので、ランクの低い標準による校正で十分です。)

国際キログラム原器と40個の複製

ここで、少し歴史に戻ってみましょう。

フランスは、諸外国との貿易を活発化させるために、世界中の単位の統一を目指しました。

次第に水による定義が難しくなったため、合金から成るキログラム原器を基準にしたいと考えるようになりました。

ですが、ここで問題が起きます。
新たな基準となるキログラム原器が世界でただ一つ、フランスにしかないとなれば、各国は校正をキログラム原器で行うのが難しくなります。

そこで、フランスは、40個のキログラム原器の複製を作り、日本を含む諸外国に配布することを決めました。

その際、自国の物を「世界の中で最も上位の重さの基準」と定め、国際キログラム原器と名付け、複製の物と区別をしました。

そして、各国に、
「自国での校正は複製を用いて行ってもよい。しかし、40年に一度フランスに全てのキログラム原器を持ち寄り、お互いの変化を確認することで校正を行う」
と決めました。

複製を渡した各国がしっかりキログラム原器の精度を保ててるか、
国際単位を生み出した国であるフランスが、わざわざ確認してやる!といった具合です。

定義が物である世界の限界

ではその結果どうなったのでしょうか。

以下のグラフは、国際キログラム原器を基準として、各国の複製の重さとの差を測ったグラフです。
過去に3回にわたって40年ごとに測定し、プロットしています。
(1889年のプロットは配布時なので、すべての重さが統一されている状態です。)

キログラム原器の各国の推移

計量標準PDF

約80年間でそれぞれの国の重さは大きく変化してしまいました。
スペインなどは、約50μg(0.000005g)も変化しています。
国の重さの基準と考えていたものが50μgも変化しているなんて重大な事実です!!!
フランスにしっかり調べてもらえてよかった。


本当にそうなのでしょうか?

このグラフ、上記に記述しましたが、国際キログラム原器との差が何gあるかというグラフなのです。

一部、ハンガリーやイギリスは国際キログラム原器よりも軽くなっていますが、ほぼ全ての国において重くなっています。

これって本当に他の国が重くなったのでしょうか??

国際キログラム原器がすり減りなどで軽くなったのではないでしょか??

しかし、国際キログラム原器は、質量の中で最も精度の良いもの(と定義されているもの)です。

そのため、フランスの国際キログラム原器の重さの変動など疑っても、ほかの国はどうしようもありません。

導入の例にも出しましたが、体重計2つに乗って、両方の値がズレていた時、少なくともどちらか一方がズレていることはわかっても、ずれているのが、どちらかわかりませんよね。
大体の場合はしょうがないので、値段が高いほうを信じるのです。

【補足】
読まれている方の中では、そもそもなぜ比較なのかと疑問を持たれているかもしれません。電子天秤などで、数値を記録すればよいのではないかと。
しかし、その電子天秤などは、キログラム原器より精度のランクが低いものです。
キログラム原器という分銅より、精度の良いはかりはないため、最高精度の者同士、お互いの値を比較するしかないのです。



さて、どれがあっているかわからない、
けれども、決めたことだから、国際キログラム原器の値を信じる。

長い間使われてきた定義が改訂される時が来ました。

そして、新しい定義へ

2018年に、単位の定義の改正が行われました。

これは、ニュースになったので、ご存じの方もいらっしゃるかもしれません。

日本も重さの改訂に関して大きな貢献をしました。

新しい定義では、物質を使うのはやめ、プランク定数という物理量を用いた数式で定義をしました。

ここに関しては、また機会があればnoteで投稿しようと思います。

詳しく気になる方はぜひ調べてみてください!

まとめ

いかがでしたか??

キログラムという単位がどのような考えから生まれ、現在まで続いてきたのかについて見てきました。

最初は水から定義を決め、精度を求め、キログラム原器を作ったのでしたね。

定義という重荷から解放されたキログラム原器ですが、まだ現役で活躍しています。

定義より、一つランクが下がっただけで、これからも重さの精度を保ち続ける役目がありますから。


非常に長い文章になりました。

最後までお付き合いくださり、本当にありがとうございます。

また次回もよろしくお願いいたします。


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