アニソンは作曲家で聴け!♯4「八木沼悟志(fripSide)」
一昨日fripSide -phase II-から南條愛乃が卒業されることが発表されました。
naoがボーカルだった頃から知ってる身としては
ついに来たか……という感想がほとんどだと思います。
けしてなくはなかった未来、されど南條色があまりに適しすぎていたために
できればずっとこのままでいてほしかった、
その意見も痛いほどよくわかります。
おそらく八木沼悟志が引退しない限りは続くプロジェクトだと思うので
3rd phaseを楽しみにしつつ、現体制最終公演まで駆け抜けましょう。
fripSideとの出会い
ちょうど同人音楽にハマりだした頃です。
その昔、Muzieというインディーズ音楽配信サイトがありまして
LagunaやAsrielの音源を探し求めて辿り着いたその秘境では
まだ駆け出しの作曲者がしのぎを削っており
そこには試聴用の、またはフルサイズの音源がDLできる
作曲者を志す者、または若い才能をいち早く察知したい消費者にとって
当時としては夢のようなサイトだったのです。
サブスクのサの字もないような時代に、ですよ。
なんとなくDTMがにわかに盛り上がりだして、
こういった下地があってボーカロイドに火がついた可能性もあります。
fripSideはそこでものすごく人気でですね……
一聴して、浅倉大介みたい!好き!ってなって以降
音源を探し求めて、私が秋葉原で買い物した初めてのアーティストだったんじゃないかな。
八木沼が「よくJ-POPを早送りで聴いてました」というくらいなので
どの曲もBPM高め。
それが私の琴線をビンビンに震わせるのです。
Red -Reduction Division- / fripSide
第1期fripSideといえば、で挙げる方も多いでしょう。
ゲームは微塵も知りませんが
やたらと静止画M@Dで使われていたのを覚えています。
ゴシックの要素も微かに含まれておりエレガントです。
an evening calm / fripSide
秋の曲でも取り上げたこちら。これPVあったんだ。笑
naoのハイトーンが輝くミドルテンポの楽曲で
上記REDと合わせてツートップの人気を誇ってたんじゃないでしょうか。
こういう切ない曲も強いのが一筋縄では行かない証です。
また、インディーズユニットらしく他者とのコラボにも積極的で
ことごとく自分が好きになるユニットと組むのが面白かったですね。
今も共同制作者として名を連ねる新井健史はこの頃からの関係者です。
velocity / fripSide+vin-PRAD
この出だし……!って思うんですが共感する人いませんかね?
後に大ヒットする楽曲の香りをここで感じてしまいます。
Muzieで大人気同士だったコラボも、当時はお祭り騒ぎになってましたね。
melody / reset+fripSide
resetの人気も当時ものすごかったんですよ。
この切ないシンセの音は、I'VE出現以降流行りだすのですが
それをいち早く取り入れていた印象があります。
そういう音に八木沼も馴染みが深かったことから、
あのタッグも実現したんでしょうね。←後述します。
この様にちょうど知った頃に2枚組BESTアルバムを発売するということで
もしかしたらこのどんぴしゃなタイミングのせいで
fripSideの沼に落ちたのかもしれません。
あれも!これも!ほしかった曲が全部入ってる!
B'zに興味を持ち出した中学生にPleasueという爆弾を落とされた
そんな当時の自分を思い出します。
何かに導かれるように都合よく情報が目の前に現れてくれる、
その不思議な引力って存在すると思うんですよ。
だって、そのあとメジャーデビューを発表するんですが
なんとプロデュースが志倉千代丸。
もう拾い上げてくれてありがとうという感情しかなかったです。
しかもべらぼーにかっこいい。
そりゃそうだ、この曲(flower of bravery)だけ志倉作曲だもの。
そのせいで未だに第2期で歌われてない楽曲だったりするんだろうけども。
(たぶん。うたってたらスルーで)
しかし、その直後に初代ボーカルnaoの卒業が発表され
多くのエロゲソングマイスターが悲しみに暮れます。
メジャーデビューしていきなり脱退劇なんて、いったい何があったんだ……
思えば八木沼はそこそこ我が強い、というのは
ここでも現れていたかもしれませんね。
(ライブで物議を醸した発言もありましたが、
私はヲタ芸に関しては八木沼・LiSA等と同意見です。)
並々ならぬ事態にその動向に注目が集まります。
――なのに八木沼悟志は止まらない。
渦中にもかかわらずなんと新曲を発表します。
spiral of despair -resurrection- / Rita
これまでの楽曲の中で一番浅倉大介(のソロ)っぽい!笑
Ritaもエロゲソング界隈では既に、もしかしたら一番古株かもしれません。
多分Muizieで人気を二分していたMintJam繋がりだとは思うんだけど。
曲の長さも含めてですがバッリバリにトランスで
めっちゃ攻め攻めだなぁと当時思ったものです。
naoにもかなりイケイケな印象を持っていたので
自己主張の強い二人だから道を分かったのかなと推測してしまいます。
伝説が積み上げられる瞬間を見た
そして、新ボーカルに南條愛乃を迎えて再デビューします。
only my railgun / fripSide
なんだこの爆発力。
【とある科学の超電磁砲】という大型タイアップもそうなんですが、
この曲がここまでのアンセムに成り上がったのは
まさにアニメに寄り添って、尚且ユニット単独曲としても成立する
その絶妙なバランスの成せた技巧だと思います。
マジンガーとかガンダムとか、昔からアニソンといえば
そのタイトルを冠に添えるのが古き良き伝統だったりしますが
逆に言えばそれが枷となって歌い手のイメージを固定させがちです。
railgunって単語に【とある】を感じずにはいられないのに
曲自体はそのメージを壊さない程度に、
同時にただのfripSide、八木沼悟志でしかない音。
こんなに双方を取り持てるボーカルが存在するのか!?
南條愛乃はそれを唯一果たせたボーカルということになります。
声優だった、というのがある意味正解だったのかもしれませんね。
役者という職業柄、自分を作品に溶け込ませることに最も適した存在。
今では有名声優に数えられるジョルノですが、
当時はまだ無名だったということもあって、
パブリックイメージがついてなかったのも功を奏したのかもしれません。
(以前の実績に関してはあえてここでは触れません、あしからず)
奇しくもμ'sも同時期にプロジェクトが始動しています。
彼女にとっても最大の転機だったでしょうね。
とにかく、T.M.Revolutionで言えばINVORK、水樹奈々ならETERNAL BRAZE
といったような、アニソンライブやDJイベントに於いて
fripSideは演れば必ず盛り上がる、必殺の武器を手に入れました。
その後も八木沼は才能の枯渇を微塵も感じさせない多産ぶりで
毎期アニメのタイアップを獲得。聴かないクールが思いつかないほどです。
fripSideのコラボ芸
こうして着実に人気アーティストの仲間入りを果たすと同時に
彼にとっておそらく夢の一つであった、
音楽的ルーツの原点となる小室哲哉との共作の機会に恵まれます。
これも90年代を過ごしてきた私にはぶっ刺さりましたね。
eternal reality / fripSide
Aメロが八木沼節、サビが小室色、と感じるのは自分だけでしょうか。
混ざりあうというよりはどっちも食材の主張が激しいです。笑
インディーズの頃のたましい百まで。
こうして他者との関わりを絶やさないのも好感でした。
そんな折、やはり第1期ボーカルのnaoと共演したときは
古参は燃えましたよね。
fripSideが売れてから一番見たかった姿かもしれません。
Decade / fripSide×nao
初代と二代目でトゥギャザーしようぜ!
fripSideといえばPVに謎のミスマッチ大物有名人とコラボするのが通例となっています。意味がわかりません。面白いけど。
angelaとの共演は記憶にも新しいですね。
アニソン男女ユニットといえば?で名前の上がる二組だと思います。
The end of escape / fripSide×angela
というか、このコラボ。
T.M.Revolution×水樹奈々に触発された気がしてならないんですよね。
サウンドも併せて浅倉大介の影響がちらつくのが私にとってはたまりません。
もう一つ、忘れてはならないのがALTIMAの存在。
fripSideは、悪く言えば同じような曲調で占められていて
それこそPVでくらいでしか"遊び"を入れられないほど
完璧な世界観を保っているプロジェクトなのです。
B面、を意味するfripSide。
リード曲とそうでない曲の垣根を作らない、そんな理念は
見事成功してると言えるでしょう。
南條の歌に八木沼が厳しくディレクションしていると
記事で読んだ記憶もあります。
これまで欠片もラップが入ってなかったのも
世界観を保つという裏付けと言ってもいいかもしれません。
Burst The Gravity / ALTIMA
既に一定の評価を得ていた黒崎真音と、
トランスミクスチャーの先鋭的ユニットm.o.v.eのMOTSUという
fripSideよりもアッパーな方向性を持つ異色ユニット。
きっと八木沼がはっちゃけるのはこっちのウェーイ系で
fripSide nao project!のような電波系ではなかったんだろうなぁ。笑
どっかの記事でfripSideにはfavorite blueを感じると書きましたが
今調べてみたらがっつりt-kimura(moveのプロデューサー)も
彼のルーツに含まれていました。
八木沼さんそういうところに遠慮がないですね。楽しい。
そして絶対親和性を感じないわけがないI'VEとも交友を続けます。
→unfinished→ / KOTOKO
黒崎真音もI'VEとは関わりが深いので必然ではありました。
KOTOKOほどデジタルサウンドに適したボーカリストはいないとすら思ってます。
修正要らずのピッチキーパー、とは誰が評したか。
(余談ですがどのアーティストも早送り等の編集を加えるとKOTOKOの声になるという逸話があったり)
この少し前には作詞:KOTOKO 作曲:八木沼悟志で話題に。
このプロジェクトのおかげで日笠陽子が
渋っていた音楽活動に興味を示すことになるので感謝しかありません。GJ
その他、数少ないながら
IKU、ELISA、井口裕香、飯田里穂、Spoon等へ楽曲提供しております。
いずれも紛れもなく八木沼サウンドなのでニヤニヤできるでしょう。
Afterword
というわけで、八木沼悟志及びfripSideの歴史を浚ってみましたが
これまで紹介した3人とは違って
基本的にfripSideというものを軸に
コラボという形で他のアーティストと関わることが多いです。
あと今回は「またおまえか」がない。笑
だって八木沼悟志はプレイヤーだからぜんぜん隠れてないんだもん。
そんなに楽曲提供に積極的なわけでもないので
微妙に「アニソンは作曲家で聴け!」のコンセプトに合わないのですが
一昨日このニュースを見つけたときは今書かねば、と思ってしまいました。
……ほんとは昨日上げる予定だったんですがまぁ体調が芳しく無く。苦笑
なんにせよ安定感抜群のfripサウンド。
ジョルノが抜けるのは寂しいですが彼女はソロも並行して行っていたので
今度はそれこそ"楽曲提供"でまたこの組み合わせが聴ける日が来るかもしれませんね。
なにより、
この知名度にまで至ってもこんなに長く在籍してくれたことに感謝ですよ。
声優と音楽活動を並行してる方は多いですが、ソレに加えて
こんなにも人気音楽ユニットとしても活動が目立つのはそうそういません。
ちなみに、
初期から聴いてる私ですが、一番好きな曲はmemory of snowです。
シングルではway to answer。
どうしても初期衝動が勝りがちな我々の音楽の趣味ですが
fripSideはそこを更新してきたんですよねぇ。稀有な例。
もちろんRedやan evening calmが大切な曲なのは変わりません。
この2つは南條歌唱Verも存在してますが、
どうしてもnaoボーカルの方が思い入れが強くなってしまいますね。
キーがジョルノに合わせて下げられているのが要因かもです。
ただcrossroadsはそれはそれでめちゃくちゃ楽しい良盤。
Black Bulletで魅せた変化球も見事でした。音楽に貪欲。
これでもっと好きになったところもあります。
アニソン界にfripSideあれ。ですよ。
アニソンに興味持ったなら、ここに最適解があります。
南條愛乃さん、12年間お疲れさまでした!
八木沼悟志さん、これからも貴方の作り出すサウンドを楽しみにしています!