泰然自若

今夜の月は「スーパームーン」といって、月が地球に近づいていて、普段よりも大きく見えるらしい。外に出て頭上を眺めてみたものの、普段との大きさの違いは判らなかった。
ただ、空は黒く澄んで、光る翠緑の石は幻想的に浮かんでいた。

今、社会は大混乱を極めている。局地的な事柄で言えば、もっと大きな混乱はあっただろう。だけど、世界規模でここまでの騒動というのは、少なくとも僕が覚えている限りでは、無い。

それなのに、月は何事もなかったかのようにそこに佇み、いつものように光を放っている。あの月が発する淡い光は、地表を覆う大気を透過して僕の頭上に降り注いでくるけど、その間には例のウイルスだって透過してきているかも知れない。今回の件だけじゃなくて、人類が気付いていない未知の脅威が含まれているかも知れない。
結局のところ、その問題を問題として認識している人間だけが、この地球上で大騒ぎしている。

こんな騒動があろうとなかろうと、月は普段と変わらず、悠然と空に浮かんでいる。月の光の色は、昔も今も変わりないはずだ。月と地球が形を成した太古の昔から、世界は存在していたわけで。

混乱が過ぎ去って、また以前のように穏やかな気持ちで、あの月を眺められる日が戻ってくることを願おう。


テレビドラマを見ながら食事をしている家族を乗せて、地球は自転している。
(森博嗣 「君の夢 僕の思考 You will dream while I think」)

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英丸
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