Introduction
とある友人( https://note.com/kishibe )から「ひでさんの文章が好きで、何か共作できたら良いなと思ってるので一緒にnoteやりましょうよ」と言われて、おだてに弱い僕は調子に乗って3分後にはアカウントを作成していた。
しかし、これといって創作意欲があるわけではない。彼のような流麗な言葉を紡げるわけでもない。僕は子供の頃から文章を書く行為が本当に苦手だった。
特に読書感想文の課題が嫌いだった。小一の時だ。課題作品を読んだ僕は「面白かった」と思った。多くの語彙を獲得した今であれば、何がどう面白かったのか、もっと事細かに書けたことだろう。けど、当時の僕は自分の内面を表現し得るだけの言葉を持ち合わせていなかった。だから一言、「面白かった」とだけ書いて提出した。すると先生は「どこがどういう風に面白かったのか説明しなさい」と言った。どこが、って全部さ。どういう風にと言われたって、今自分の中にある感情をそれ以外に表現する方法を知らなかった僕は、全編のあらすじを書いて、最後に一言「面白かった」とだけ添えた。そこで返ってきた評価は
「こんなのは感想文ではない」
だった。精一杯の表現を否定された僕は、言葉を奪われたと感じた。自分を表現する方法を失くした僕は殻に閉じ籠って、感情を表に出すことが少なくなった。
そんな僕に転機が訪れた。15年ほど前だっただろうか。mixiという招待制のSNSが流行した。日記形式のページを作成して、これを公開するというものだ。飽きの来ないインターフェイスは勿論、他人の日記を覗き見る面白さや、ネットを通じて赤の他人と繋がることの新鮮さも相まって、僕はmixiにのめり込んだ。曲がりなりにも30年近く生きてきて、自分の中に積もり積もったものを吐き出す場所が欲しかったのかも知れない。口下手な僕は仲の良い友人が相手であっても、すぐに緊張して言いたいことが言えなくなってしまう。けど文章でなら、自分のペースで、何度も推敲を重ねて、頭の中に浮遊しているものを漏らさずにアウトプットすることができる。
日記って面白いよね。自分のためのメモだから、気楽に書ける。けど、本来は自分のためだけの記録であるはずなのに、体裁としては他人に見せることを前提としたものになる(なってしまう)。拙いながらも文章を書くことの楽しさを少しずつ覚え、気付いたら子供の頃の文章アレルギーが無くなっていた。
2度目の転機は、今から10年ほど前。この頃には結婚していたが、家庭内の状況は良くない、というか完全に崩壊していた。最良のパートナーであるはずの相手とも通じ合えない引け目から、僕は完全に心を閉ざした。全てのSNSアカウントを削除し、友人との付き合いも全て断り、日課だったバー巡りも止めた。会社に行く以外で家から出ることが一切なく、半年間一度も声を発さないという荒んだ生活をしていた(幸か不幸か、同僚とも会話する必要が無い仕事である)。
その間、友人から長いこと借りたまま放置していた森博嗣氏の推理小説を読み始めた。ロジカルなのに柔らかく、シャープで硬質なのに有機的で温かい、その文章に心を奪われた。森氏の本業は大学教授で、副収入の為に小説を書き始めたという。そんな彼の経歴もまた、僕の興味を惹いた。確か東野圭吾氏もサラリーマンからの転身だったように記憶している。そういう偉大な先輩方の姿を見て、自分にももっと文章が書けるんじゃないかと思った。パートナーとどのように向き合うべきなのか、今後自分はどのように生きていきたいのか、そんな鬱屈した心情を書き出して整理してみようと思ったのも、きっかけの一つだった気がする。そうして、メモ書きとも詩とも日記とも分類できない、ゴミのような文章を大量に吐き出していった(それらは今でもHDに眠っているのだが、最近ふと読み返してみたらあまりの暗さに死にたくなったので、これが日の目を見ることはおそらく無いだろう)。
それからもアウトプットを繰り返すうちに、自分の心情や考えに一番近い語彙を選び出すことに慣れてきた。もちろん完全とは言えない。技巧としてもまだまだ拙い。ただ、「文章を書くって楽しい」と思えるようになった。物書きになりたいわけではないが、作文の課題を提出するのが嫌で学校行きたくないと泣いて親にすがっていた子供の頃の自分からすれば、革命と言っても差し支えない変化だ。
僕が40数年の人生の中で触れてきた言葉や経験が、僕の血肉となって体を巡り、新たな僕の言葉として世界に還流していく。そしてその言葉が、また誰かの心に触れることがあったなら、僕の生きた証が多少なりとも残るかも知れない。
そんなわけで、冒頭の友人からお題が降ってくるのを不安と期待混じりの心境で待ち構えています。
最後にもう一つ。元々書いていたブログは乃木坂46のヲタ活をする上でTwitterの140文字制限では収まりきらない諸々をアウトプットするために書いていたものです。僕がどんな文章を書くのかという参考として、自分で一番気に入ってるエントリーを貼っておきます。