I'm proud.

先日、自分と半分ほど年のかけ離れた友人と、二人で酒を飲み交わしていた時のこと。
「いつも不思議だけど、どうしてこんな酒のこと詳しいんですか?」
「君が一生かけて口にした水分よりももっと酒飲んできたからね」
「どうしてこんなに凄いバーばっかり知ってるんですか?」
「適当に飲み歩いてたらテリトリー広がってた」
「どうしたらそんなにカッコイイ生き方ができるんですか?」
「家建つぐらい酒に金つぎ込みまくってるから全然貯金できてないよ」

とまぁ、こんな会話があった。端折っているけど内容は本当だ。
実のところ、彼と会うと大体いつもこの話になる。

彼は知識とバイタリティーの塊のような人間である上に、その短い人生からは想像できないような波乱万丈の人生を過ごしてきていて、この世知辛い社会の荒波の中をその身一つで堂々と渡り歩いている。仮にこの国の政府が崩壊して明日から北斗の拳のようなスーパーバイオレンスな世界が始まったとしたら、僕みたいにスカスカの人間は名前も出ないうちに速攻で抹殺されるモブだし、きっと彼は逞しく生き抜いていくだろうと思う。
そんな彼が、人よりほんの少し酒が詳しいのと、ちょっと年が離れているという程度で、僕みたいなオッサンのことを「カッコイイ」「人生の先輩」と褒め称えてくれるのが嬉しいと同時に、本当に申し訳ないし自分が情けないなぁと思ってしまう。

だって、年上だというだけの理由で若い子を下に見ている大人はカッコ悪いじゃないか。礼儀だったり特定環境におけるマナーだったりで、年下に人生訓を垂れることは確かにあるけど(あとネット上だと相手との年齢とか関係なく、つい説教臭いことを言ってしまって、それは反省すること多々)、個人の能力や資質と、年齢は全く別の評価軸であるべきだ。
これも森博嗣さんの影響が大きいのだけど、僕は、「教育=人が人に何かを教えて育てられる」なんて考え方は断じて傲慢だと思っている。年上が年下(特に血縁もなく、大人になってから知り合った相手)に対して教えられることと言えば、「年取るって楽しいよ!」ということを全力で体現して見せることだけだ。
そういう意味では、彼が僕の様子を見て、人生楽しんでそうとかカッコイイとか言ってくれるのは、僕が見せたい姿を演じられているからだと思うので、そこは素直に嬉しい。実際の中身はスカスカなので、いつ化けの皮を剥がされるんじゃないかと内心怯えながら、彼の前でカクテルグラスに口を付けている。

そりゃ、彼は彼で、僕が感じているのと同じように、内面に劣等感を隠していたり、無いものねだりで自分が持たない知識や経験に憧れを抱いているのかも知れないけど。
けど。
正直、比べるスケールが違い過ぎるよね~、と思ってしまう。学歴も語学力も文章力も芸術への造詣もビジネススキルもコミュニケーション力も、彼の前で僕のそれはゴミ過ぎるのだ。謙遜でも何でもなく、本当に。

確かに彼よりは倍ほども長く生きているので、それなりに山も谷もあったとは思う。何かにつけて失敗したり後悔した経験なら、負けないかも知れない(それはそれで情けない)。それに、彼がどれほど凄い経験をしていたとしても、彼は彼の人生しか経験していない。人は自分以外の人生を経験できない。以前の投稿でもそんなことを書いた。
僕は、彼が歩んでこなかった僕の人生から得た経験を糧にして、年相応の立派な大人に見えるように、精一杯の見栄と強がりを纏って、これからも足りないものを埋めるべく生きていくしかない。なりたい自分に向かって進んでいるのだと信じながら。

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英丸
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