銭湯で働いている私から伝えたいこと
次々と公衆浴場が無くなっているという話
15年前まで、東京都に限って言えば1000軒ほどの銭湯がありました。
しかしながら、ここ15年で東京都の銭湯は1000軒から半分以下の480軒になっています。
銭湯は、お客さん1人当たりの収益がとても少ないビジネスモデルです。
公衆浴場規定の料金が基本で、アメニティや飲み物等でプラスアルファの利益を出しています。
だからこそ、訪れるお客さんの人数がとても大事なのです。
銭湯さんが無くなるのは、後継者不足もあろうかと思いますが、ランニングコストをまかない切れず、にっちもさっちもいかなくなってしまうパターンも往々にしてあるかと思われます。想像の範囲ではありますが。
そんな中、私が働いているのは、渋谷区の某銭湯です。
ここは区内でも有数の集客があり、働いていると「風呂屋が儲からない」という感覚がわからなくなります。
それでも、時折オーナーが「うちも何時無くなるかわからないからね」と危機感を募らせることがあります。
公衆浴場という、あくまで東京都の定める範囲内での営業を余儀なくされることもあるのでしょうが、社会に生きる人々の生活が変わると、それ相応に客の流れも変わるからかと思われます。
折しも昨今のサウナブームで、週末はお客さんが引っ切り無しです。
しかしながら、あくまでブームはブームです。
ブームが去ってサウナ目当てで訪れているお客さんが離れていくこと
引っ越しや転勤といった事情で常連さんが来なくなること
常連さんが地域内の他の銭湯さんに流れていってしまうこと
そうした要因が重なると、あっという間に収益は減少してしまうでしょう。
つまり、銭湯側の努力だけではどうにもならない業界ではないか、と言えるのです。
かなりお客さん頼みの運用になるのではないか、と思うのです。
もし、近所にあなたのお気に入りの銭湯さんがあるとしたら、その銭湯が無くならないようにするには、通い続けることが一番の延命措置なのです。
銭湯のスタッフは何をしているのか
あなたが銭湯に行くと、番台さん、若しくはフロントにいるスタッフが対応してくれると思います。
基本はフロントでお客さんを待つスタイルなので「なんか楽そうな仕事じゃないか」と思われるかもしれません。
が、裏では意外と色んなことをやっています。
来客の対応
入金の計算、帳簿
貸出タオルを折る作業
アメニティの補充
脱衣所、浴室の巡回、清掃
わかりやすく記述できるのはこの辺りですが、他にも細かな仕事があります。
概ね、銭湯に来られるお客さんが私たちを見るのは、ほぼ座っているタイミングなので、わかりにくいのですが、実はちょろちょろと細かく席を立ったりして仕事をしているのです。
古くからの銭湯さんは、だいたいフロントが1人で対応していることが多いかと思いますが、私が働いている銭湯は、時に2人、混雑時はスタッフが3人にもなります。意外と小忙しいです。
そんな銭湯で働いている人間が、気付いたこと、お伝えしたいことを書いていこうかと思います。
銭湯の中の人が伝えたい銭湯の良いところ
湯船が広い、というのが一番いいところです。
広い湯船、というと「温泉」が浮かぶかと思いますが、温泉はなかなか普段使いできる場所ではありません。
毎日通える大きな風呂でリラックス、という使い方が出来るのが良いですよね。
加えて、最近は各銭湯さんが日替わり湯などで飽きさせないような工夫を各々凝らしていますので、通うほどに良さがわかってくると思います。
あと、一般の住宅のガス設備では再現できない湯温というのでしょうか、あの高めの温度ですね。大きい湯船と合わさって、銭湯ならではの入浴体験ができるのが大きいかと思います。
現在は、あまり長時間の滞在は推奨されていませんが、熱い風呂にずっと入っていられるというのも魅力かと思います。
いつまでも熱い風呂に自分の思うまま、という入り方ができるのがいいですよね。
現在はワンルームでユニットバスなんて物件が多いでしょうから、「たまには広い風呂に入りたい」と訪れてくれる方もいらっしゃると思います。
熱めの風呂でじっくりと温まって、脱衣所でボーっとするのも、実に良い時間です。
家と職場との往復の中に、「銭湯」をひとつまみしてみてください。
きっと良い気分転換になると思います。
また、何かしらのイベントの帰りに、ちょっと風呂でも入って、という使い方もあるでしょう。
若しくは銭湯に寄って、さっぱりして、それから街へ繰り出す、という使い方もあるのかもしれません。
いずれにせよ、老若男女問わず、訪れていただければ大歓迎です。
これさえ守っておけば、あなたも銭湯通! なマナー
銭湯に行こうにも、何だか常連さんばかりで怖いところなのではないか、
と思われる方がいるかもしれません。
でも、大丈夫です。
私に任せてください(誇大妄想)
銭湯のカッコいい入り方を以下にご紹介しますから、これさえ押さえておけば問題無し!です。
今回は特別に無料(タダ)にしときますので、いつか何処かの銭湯で出会ったら、コーヒー牛乳をオゴってください。
・騒がないで静かに入浴する
特に、現在はコロナ禍での営業です。銭湯のスタッフさんもかなり気を遣って営業しています。
静かに入って、静かに出る。渋い入り方が銭湯さんには喜ばれます。
・身体を清めて、いざ入湯!
基本的なことかもしれませんが、身体をきっちり洗って、身を清めてから湯船に入るのが良いでしょう。
入って速攻で湯船に、ではあまり衛生的にもよくないですからね。
やはり、外から持ってきた浮世の垢を落として、きれいさっぱり、という入り方が良いと思うのです。
・きっちり身体を拭いて脱衣所へ上がる
風呂上り、早く上がってボーっとしたい!
でも少し落ち着いてください、良い時間は逃げません。
まずは身体を拭いて、それから上がりましょう。
タオルを最低1枚、持って入るのがいいと思います。
大事な場所も隠せますし、身体を洗うのにも使えます。便利!
しっかり身体を拭いて上がる、
脱衣所を濡らさないのがカッコいい入り方です。
「水も滴る良い男、良い女」は浴室の中だけ。
これがスタッフには一番ありがたいお客さんですね。
・風呂上りに脱衣所でスマホはいじらない!
今やスマホは手放せない生活の必需品ですな。それは確かです。
私も依存症に近い節があります・・・お恥ずかしい。
しかしながら。
銭湯って皆さん「裸」ですね。裸が行き交っていますね。
そこでスマホです。言うまでもなくカメラ機能が付いてますね。
そういうものは人が裸になる場所では出さないのが吉です。
変な疑いを、銭湯さんに持たれる可能性がありますからね。
最近、私も働いていて、一番お客さんに注意する回数が多いのが、このスマホについてです。
銭湯に居る時間、たまにはスマホから解放されてみるというのも一興かと思います。
ここまで、銭湯のスタッフが他の銭湯さんに行った時はこうしたマナーに気を配りますよ、というポイントを書いてまいりました。
私も銭湯好きとして、その銭湯さんへのリスペクトを込めて、訪れた先では他の常連さんの動きを見て勉強したりしています。
「なるほど。ベテランさん、そういうムーブなのね」
と独り言ちていたりします。
あなたの隣で静かに入っている常連さんが銭湯通の先輩かも、ですよ。
勉強させてもらおうじゃないですか。
マナーを押さえて、良い銭湯ライフを!
ここまで、つらつらと書いてまいりました。
働いている身として、細かいことも言ってきましたが、とどのつまり、銭湯の使い方を知ってもらって、まずは一度訪れてほしい、ということが一番なのです。
ちょっとした啓蒙活動のつもりで書いてまいりました。
いいところなんですわ、銭湯。ゆっくりできるし。
軽い気持ちで来ていただいても、手拭いやバスタオルは大体貸出があります。歯ブラシや垢すり、シャンプーやボディソープも販売があります。
例え手ぶらでも困ることはありません。
気楽に来てください。
働いている身としては、来られる皆さま全員に銭湯でスッキリして、気分よく帰っていただきたいと思っております。
これからも精進します。
そして、私も銭湯ラヴァーの一人ですので、近隣の銭湯にはガンガン行きたいと思いますし、皆さまにもガンガン銭湯へ足を運んでいただきたいと思っております。
どうか、ひとつよろしくお願い申し上げます。
ここからは余談ですが・・・
個人的にはね、風呂上りで火照った身体を冷ましつつ、帰り路に缶ビールでも買いますでしょう。
それで家に帰って、緩んだ身体で缶ビール飲むとね、これはもう堪らんのですよ。
後は寝るだけ!ってね。
下戸の方は、冷えたコカ・コーラでもいいと思います!
また明日も頑張りましょう、って気持ちになりますね。
では、皆さま、よい銭湯ライフを。
それでは。