かためやわらかめ戦争
ラーメン屋店員「ご注文お伺いします」
僕「ちょっとお伺いしたいんですがここで『かため』を注文する方をどう思われますか?」
店員「?はい?」
僕「はぁ〜…」
僕「…なるほどたしかに表を見れば一目瞭然、実に60%の客が注文しています。初めて来る客なら迷わず選んでしまうでしょう。続いてバリカタ、ハリガネ、粉落としと、固い麺が人気なようですね。ところで店員さんはかためを頼んだ客が『やわらかめ』を注文する場面に遭遇したことがあるでしょうか?」
店員「」
僕「考えても見てくださいよ。一見2つの選択肢は平等に選ばれる機会が与えられています。注文率は半々かそれに近い数字になるのは必然。しかしながら大半はスープに浸かる麺をひたすら固くしようとする執念を持っています。それはなぜか?小学生でもわかる答えです。【麺は伸びると不味いから】です。」
僕「なるほどそれならたしかに合点がいきますね。よりコシがあり、熟成小麦の束の食感がより長く楽しめる。かためとは素晴らしいものですね…。
あくまで伸びた麺が不味いなら…の話ですがね。」
店員「!?」
僕「一種の社会通念による洗脳ですよ、店員さん。例えば赤ん坊がゴキブリを嬉嬉として口に運ぶように、我々は慣れ親しんだ慣習という名の洗脳があってこそゴキブリを恐れるのです。つまり、洗脳さえなければ本来無力な赤ん坊ですら全く意に介さない存在であるはずなのです。
話を戻しましょう。伸びた麺が本当に不味いのか?それを確かめたのは一体誰なのか…。もうお分かりですね?我々はやわらかめは不味いという洗脳を受けているんですっ…!!!
…自分で確かめもせずに流れに従いなんの積極性もなく『固い』ことに終始する、実に愚かじゃあないですか。」
僕「それに比べ、極小数ではありますが、確かに存在するやわらかめ派。彼らをご覧なさい。社会に『是』と認められるかため。そのため日常的に口に運んでいるはずのかたい麺に疑問を持ち、自らの食の感性に従い行動する。人生とは切っても切れない食の意義を問いただすひたむきな探究心、多勢と刃を交える死をも恐れぬ覚悟。これらを併せ持つ彼らこそ本物のラーメン通だと言えるのではないでしょうか?
…店員さん、オーダーおねがいします。」
店員「…ご注文お伺いします。」
僕「ハリガネで」