💔ウマ娘を知らないで書く【サクラチトセオー】

〈スタンドにぶつけるつもりで回れ〉

　１９９５年１０月２９日の府中は期待と不安が入り混じっていた。天皇賞・秋は中距離王を決すると同時に『怪物・ナリタブライアン』の復帰戦でもあった。人気順に、ブライアン、チトセオー、アイリッシュダンス、（風が苦手な）ジェニュインと続く。道中は１７頭立ての１６番手を進む。◎チトセオーとし、相手は３点。ジェニュイン、マチカネ、ヤシマソブリンの位置をターフビジョンで確認しつつも注視していたのはもちろんチトセオー！そして４コーナー、小島太は驚愕のコーナリングを見せる。新装２年目のメモリアル６０に向かい真っ直ぐぶつけるように曲がったのだ！逃げるトーヨーリファールをジェニュインがかわし、（ブライアンは沈み）３歳馬の快挙かと思われた瞬間、太の右鞭に叱咤されたチトセオーが左にヨレながら差した瞬間がゴールだった。上がりは当時としては驚愕の３４秒３。翌日ブックを見て鳥肌が立ったのだ。

〈サクラなんちゃらオー〉

　ユタカ、チヨノ、スーパーにバクシン…etc。デビュー当時はサクラなんちゃらオーシリーズの１頭って感じですかね。新馬から２連勝（２勝目は繰り上がり）したけど、常に足元に不安があり、ダービーも「記念受験」的な感じ…「本格化か？」って思ったのはやはり４歳（新表記）の中山記念に勝ったあたりかな。本気で関東馬が弱かったから「あの、フジヤマケンザンに勝った」って大騒ぎしたような記憶もある。で、その年はＧ１に３度挑戦し全部６着。勝ったのはビワとネーハイとブライアンだから当然と言えば当然かな。で、５歳になって中山記念で『あのフジヤマケンザン』に敗れた。この辺りから我々若手の中でも「太って…」っていうのが確信に変わりつつあり、まぁ、当時のベテラン競馬オヤジ達は当然のように「太は１円も買わない」って言い放っていたし…そして安田記念で武豊にハナ差届かず２着。居酒屋では「チトセオーの鼻が太の鼻なら勝っていた」理論のオンパレードなったのだ。一方でチケット（ダービー）とベガ（オークス）の仮説「トニービン産駒府中走る」が真実味を帯びてきたのもこの時期かもしれない。

〈チトセオー追い込んだが３着止まり〉

　で、ライスの故障で不利があった宝塚は６着。夏休みを挟み復帰戦の毎日王冠は完全な足慣らしで重馬場。行った行ったの４着に敗れ、前記の天皇賞（秋）を迎えるわけです。当時の府中には秩序があって、石畳の下々民はＧ１前のレースが終わると敷物の新聞を捨て、立ち上がり前に詰める。大袈裟でなくそのおかげで前から１０人目くらいで見た。ゴールではしっかりとチトセオーの鼻はジェニュインの前に出ていた。で、府中の居酒屋では「チトセオーの野郎、太の鼻を手に入れた」とオヤジ達が騒いでいた。ラストランは有馬記念、ブライアンとアマゾンが人気したけどトップガンとタイキブリザードの行った行ったで決まった。家に帰ってビデオを見るとフジテレビのアナウンサーがゴールの瞬間「チトセオーは３着止まり」って叫んでて、なんだかほっこりしたのだ。

トニービン産駒だから種牡馬としても活躍するかと思ったけど…残念。

まとめると、「すんごい末脚が魅力だけど、それが発揮されるかどうかは知ったこっちゃない」「太だから勝つけど、太だから負ける」

最後に、「生産は日高なのになんで千歳なんだろ？」って思っていたら母のサクラクレアが社台産なのね。その辺もなんかほっこりする。

個人の感想なので怒らないでください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
次回はどの馬にしよーかな。

父　　トニービン
母　　サクラクレア
〈主な勝ち鞍〉
天皇賞（秋）