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ひだまり
額縁に柔らかな笑顔が浮かぶと
彼もまた綺麗な微笑みを浮かべた
程なくして
額縁の中の笑顔は消え
額縁だけがそこに残された
彼はそれを愛おし気に撫で
そばで揺れていたランタンを持ち上げると
その灯をフッと吹き消す
彼にとっての幸せな瞬間だったが
彼の周りの闇は一層暗さを増した
その人の心を少しだけ明るくするため
灯し続けられる明かり
それも彼からの贈り物だった
そしてもう
自ら光を取り戻し
その人にとって無用となった
その灯を彼は消す
また一人
苦しみから解放され
前を向く事ができた
それが彼にとっての幸せだった
彼の元に思いが届く
それは激しい怒りだったり
冷めきった諦めだったり
消え入りそうに弱弱しい涙声が聴こえてきそうな
悲しみだったり
老若男女
千差万別
けれどすべて
救いを求める思い
それを彼は受け止める
受け止め
彼は真っ白い紙に
鉛筆を走らせる
それは
応援や
アドバイスなどではなく
気付いて欲しい
小さな一つ
怒りの中にいても
絶望の中にいても
悲しみの中でも
気付けるはずの小さな一つ
それを
白い紙に綴り
小さな舟を折り
その舟を足元の水面に浮かべる
やがてそれは
彼からの贈り物としてではなく
1人1人の気付きとして
その人の心に届く
一つ一つ
気付きを積み重ねる事で
いつしかそれが
その人自身の救いとなり
その人が前を向く力になる
誰も彼の存在に気付かない
彼の思いに救われた事を
知る由もない
けれど
彼の周りを取り巻く
額縁の中の
怒りの顔
無表情な顔
うつむいたままの顔
その一つ一つの顔が
いつしか和らぎ
微かな笑みを取り戻す
それを見届ける事こそが
彼の幸せだった
その日もまた
彼の元に届いた思い
傷付いた心が
彼の心にも痛みを齎すほどで
一つの額縁に現れたその女性の顔は
悲しみに沈み切っていた
彼はランタンに火を灯す
少しでも光と温かさを届けたいと
彼はランタンに願いを託し
彼女の額縁にかざしてみる
はっきりと映し出された
うつむいたその横顔
彼の瞳に一瞬
動揺が走る
彼は彼女を知っていた
以前
同じように額縁に現れた泣き顔が
笑みを取り戻した時
彼の心を大きく揺らしたその笑顔を
彼は忘れる事は無かった
彼女は暗い部屋の中
膝を抱えて泣き続けている
彼は机にきちんと着く余裕もなく
白い紙を取り出し
鉛筆を走らせた
思いを込めた舟を手早く折り
水面に浮かべる
けれどその舟は
水面にただ佇んでいるだけだった
舟に込められた彼の思いが
相手に届き
受け取られた時
透明になり
消え去るはずの舟は
行き先を見失ったように
水面に浮かび続けている
何度も
何度も
何度も
彼は心を込め
舟を折り
水面に浮かべるけれど
舟が消える事は無かった
なす術なく
彼は額縁の中の彼女を
見つめ続ける
無力さに悲しくなり
額縁の中の彼女に手を伸ばすけれど
当然その手は
彼女を優しくなでる事も
抱きしめる事も叶わない
もどかしく
歯痒い時間が
果てしなく続いた
もういくつ目の舟になるだろう
彼はしゃがみ込み水面にそれをそっと浮かべる
瞬間ポツリと水面に波紋が浮かぶ
自分の涙が
水面を揺らした事に気付き
彼は水に映る自分の顔を覗き込む
とんでもなく情けない自分の顔
尚更に
涙が溢れそうになる
けれども彼はそれを押し殺して
微かな笑みを浮かべた
こんな顔してて
彼女に思いが届くはずはないと
彼は立ち上がる
そうして
空に描き出す
彼女に柔らかな木漏れ日を
もたらしてくれる
大きな木
甘い香りと
美しい色で
彼女の心を癒してくれそうな
花々
彼は根気強く
小さな気付きを
彼女に贈り続ける
こんな方法が
正しいのかどうかもわからないまま
ただじっとしていられずに
思いを込める
芽吹いた緑に水を与え
きらめく星の様に
たくさんの灯りを灯す
そして
途方もない時間が流れた頃
彼がいつものように優しい微笑みを浮かべ
水面に放った舟が
やがてその姿をおぼろげにし
昇華するように消えていった
何も見えなくなった
暗い水面を
見つめる彼
やがてその頬に
一筋の涙が伝う
ようやく
彼女の心が
取り戻した
微かな光
それを守りたくて
その後も
彼の献身は続いた
そうして
やがて
彼女は
消えない悲しみを抱えたまま
前を向き
立ち上がり
歩き始める
安堵と共に訪れる
一抹の淋しさ
けれど彼はただ
優しい微笑みを浮かべ
額縁の中の彼女の姿を
指でなぞる
映し出された笑顔は
あの頃よりも一層
彼の心を揺らす
愛おしいその笑顔
やがて彼女の
美しい唇が
微かに動く
「ありがとう」
彼女の唇が紡いだ
その言葉は
彼の綺麗な瞳に
確かに
届いたのだった
*ひだまり*
*チャン・グンソク*
作詞*Satomi
作曲*Choi chul ho・Seo hyun il
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前にもここで語ったこの曲
某番組でMVを見て
また心がふるえて・・・
妄想せずにいられませんでした
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